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第二十四話

「坊や‼︎ 戻ってこい‼︎」


 なん……だ?


 誰かが俺の体を支えていることしかわからない。


「ど……うしましたか」


 痛さに喘ぐが、心配してくれている誰かに聞く。


「坊や‼︎ ゆっくり、ゆっくりと深呼吸をするんだ‼︎」


 少しずつ視界が戻ると、アンネが泣きそうな顔で俺を見ていた。


「だい……ゴホッ、ゴホッ!」


 大丈夫ですと言おうとしたが咳き込む。それを見てアンネが俺の頭を何度も優しい手つきで撫でる。


『あい……ぼう。すまなかった……ワシのせいで……』


 何度も口をパクパクさせて浅い呼吸を繰り返していると、同じように辛そうなグラムの声が聞こえてきた。


 ――気にするな……これで前の分の借りは……帳消しだ

「ぐぅぅ……」


 ゆっくり深呼吸するが痛さにまた喘ぐ。恐る恐る右手で痛みの原因を触ると土手っ腹に穴が開いていた。


 まじか……よ


 俺が腹を抑えていると顔に熱い滴がポタポタとかかる。上に視線を向けるとアンネが口を食いしばって涙を零していた。


「はなれて……ください」

「もう戦うな、坊や。逃げておくれ……」


 俺は猛烈にアンネを泣かせた自分を殴りたくなった。


 女性を泣かせるなんて、ださいな。俺……


 足に力を入れて立ち上がる。


「大丈夫です……アンネさん」


 アンネを安心させるようにしてアンネの頭に手を置くと再度首から光が走った。それはさっきのような赤い光じゃなく、今度は包まれるような暖かい光だった。


 う……ん?

 あれ? 痛みがなくなっている?


 アンネが目を開いて俺を見ていた。


『ふ、ふぅ……さすが、秘宝と呼ばれただけ……あるな。ワシまでも回復するとは』


 そうか……これのおかげか


 俺は感謝するように首飾りを撫でるとまるで喜ぶように光が強まる。一段と強くなった光りによって腹の穴はいつのまにか塞がっていた。

 その上、先ほどまで怪物のようだった歪な腕の翼が綺麗で柔らかそうな黄金の翼になっていた。


 その羽の一枚一枚が美しい花びらのように咲き誇り周囲をひらひらと舞う。


 え、な、なにこれ。

 ハッ! もしかして俺は天使だった⁉︎


 いつも通りの俺に戻った俺は素っ頓狂なことを考えていると、翼からひらひらと羽が何枚も舞うようにして落ちていく。

 それらが淵人と戦っている人たちに触れたことによって全員驚愕する。


「回復したっての? この一瞬で?」

「なんだ、これは。聖騎士――いや、教皇よりも……」

「覗かれていた我を……完全に……引き戻しただと?」


 アンネは目を開かせて驚いて、騎士の人はぶつぶつ呟き、ガビリは呆然としていた。気絶していたチンピラーズも何が何やらわからず意識を取り戻し立ち上がる。

 ただ一人、淵人だけは必死に羽を避け続けていた。


 俺は淵人が攻撃に転じる前に魔法を唱える。


「《大地よ、心を奮い立たせ》」


 焼け野原になっていた大地から大量の草木が生え俺たち全員を守るように覆う。


 外では爆音が響くのと同時に淵人の狂ったような叫けび声が聞こえてくる。全員が荒い息遣いをどうにか整えようとしているとガビリが近づいてきた。


 目を向けるとガビリの腕までは再生できなかったようで顔色が悪い。


「我が殿として……戦う。お前らは……逃げろ」


 ガビリは一団の中でも特に肩を上下に揺らしながら、呼吸をしていた。


「私も戦います。ここでやらなければ」


 このまま森の中へ逃げ帰えったら森を壊されるからな!


『さっすが相棒だ‼︎ 今度こそはワシも飲まれないよう気張るぞ!』


 回復したグラムは普段通りふざけたことを抜かす。


 お前は最初から気張ってろ!


「ここでいつまでも睨み合ってもどうにもならないよ。豚鬼族の将軍様もわかっているだろ?」


 無言の見つめ合いが沈黙が続いた中、アンネが割ってきて冷静な口調で放つ。


「奴らはどこまでもしつこく追いかけてくる。ここでアタイ達が死ぬか殺すしかないんだよ」


 ガビリは俺から視線を外しアンネを睨む。


「なら、どうするというのだ? 堕ちたダークエルフよ」

「一か八かになるけど話を聞いておくれ。作戦はこうだ」

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