僕とは住む世界の違うヒト-3
「まあ、中学じゃ同じクラスになったことも無かったし、喋ったことも無かったから仕方ないか」
じゃあなんでいきなり病室に現れたんだよ。普通、喋ったこともないただの同級生の病室に来るか?
「あ――じゃあなんでいきなり病室に来たんだ、みたいな顔してる」
「は?」
俺は心の声を読まれたことに驚いて、うわずった声を上げてしまった。その反応に「図星なんだ」とニヤニヤ笑っている長門を睨みつける。
「で? 高階生徒会長がなんだって?」
俺はわざとらしく「生徒会長」と肩書きを付けて、その女子生徒の名を呼んだ。あくまで、「生徒会長だから名前を覚えただけだ」と主張するように。
「あ、ごめん。本題に全然触れてなかったね」
ここで相槌を打ったりヘタに言葉を返したりすると、また本題からそれてしまう。その程度のことなら、長門の性格や癖を理解できるようになっていた。そのため、僕は大人しく長門の次の言葉を待つことにした。
「高階さんがね、今日、休憩中に話しかけてくれてね。日下部くんのことを聞かれたの」
「へ?」
考えもしなかった言葉に、口内が一気に渇く。僕は紙パックの野菜ジュースのストローを口に含んだ。
「ねえねえ、病み上がりなのにパンと野菜ジュースって……大丈夫なの?」
「いや、別に風邪引いて休んでたわけじゃないし……。パンと野菜ジュースの生活だから病気が悪化するわけでもないし」
偏った食生活が急性骨髄性白血病の原因なら喜んで規則正しい生活と栄養のある食事を摂るだろう。まあ、栄養バランスに気を付けることに越したことはないが――というか、そういう話ではない。
「……高階生徒会長が何で僕のことを聞くわけ? それも何で長門に?」