プロローグ-1
僕は運がついていない男だと思う。
成績は悪くない。中の上もしくは上の下あたり。
運動神経も悪くはない。特別、足が速いわけではないけど、ルールさえ覚えればある程度、どのスポーツもこなせると思う。
顔も――悪くない方だと思う。イケメンでもないが、不細工というほどもない。
性格だってそうだ。クラスメイトをいじめから助けるヒーローでもないけど、進んでいじめに加担するような人間でもない。リーダーシップがとれたりムードメーカーだったりするわけではないけれど、教室の端っこにいるような根暗や陰キャラというわけでもない。
俗にいうどこにでもいる人間。可もなく不可もなく。
そんなところ。
だけど僕は、壊滅的に運がついていないのだ。
人生初めての受験。オープンキャンパスや学校説明会にもたくさん参加して、ネットで積極的に情報を調べて……自分が進みたい公立の進学校を真剣に選んだ。
なのに――受験の1週間前、僕は高熱を出してしまった。
なかなか熱が下がらず、勉強どころか食事もまともに摂れない日々が続いた。
近所の病院でインフルエンザ検査をして、陰性だったときは本当にほっとした。
「受験のストレスで免疫が下がって、風邪を引いたんだろうね。しっかり休みなよ」
試験本番間近の受験生に何を言っているんだ……。インフルエンザではなかったことに安心したけれど、医者の言葉にはムッとした。
公立高校の受験当日はマスクを二重にして、解熱剤を服用して臨んだ。
受験会場には自力で向かえたものの、僕の体調は万全ではなかった。
でも、それを言い訳にしたくはなかった。この日までにきちんと準備はしておいた。たとえ、この一週間まともに勉強できていなくても、合格できる可能性はあるはずだ。
そう思い、必死に試験問題を解いた。回らない頭を必死に叩きながら……。
なんとかその日一日は耐え抜くことができたものの、見事に第一希望の公立高校は不合格。僕は滑り止めとして受けていた私立の高校に入学することになった。
しかし、僕の運のなさはそこだけで終わらなかった。