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ハニーサックル

作者: John

ジュディ コープランド。その名は僕の少年期において甘く魅惑的な響きだった。学校の帰り道。家が同じ方向だった僕と彼女は帰り道に白色から黄色に偏食していく花びらを見事なまでに咲き誇らせていたハニーサックルの茂みを通って帰っていた。春のそよ風が甘い香りを運んでいた。花筒をちぎって蜜をいつも二人で吸っていた。その蜜はとても甘美で彼女の秘部から滴る蜜もこんな味がするんだろうなと僕の妄想は膨らんでいた。「ジュディ、君はハニーサックルの花言葉を知っているかい?」僕は興奮を抑えきれずに彼女に尋ねた。多分、僕の鼻孔はかなり広がっていたと思う。「いいえ、知らないわ。何て言うの?ガブリエル」僕は如何にも物知りみたいに答えた。「ジュディ、愛の絆って言うんだよ。僕は君に愛の絆を捧げるよ。未来永劫に」「まあ、嬉しいわ、ガブリエル。あたしもあなたに未来永劫に愛の絆を捧げるわ」しかし、僕とジュディはそれぞれ進路が異なり自然と疎遠になっていった。僕は大学で他州に移り就職もその地でした。それから16年後。僕らの同窓会があった。僕はまだ、あの少年期の甘美な思い出に浸っていた。ジュディに会える。そう意気込んで同窓会に出席した。だが、彼女は来ていなかった。酒が入り皆が思い思いの事を口にしだした。「ジュディ コープランドがどうなったか知っている奴いるか。あの女、今じゃジャンキーになって街角で男を拾っているらしいぜ」クラスメイトだった男がおもしろ半分に声を大にして言った。僕はいたたまれない気持ちになってその場を抜け出した。僕は街角の売春婦が屯している場所に向かった。複数の売春婦が声を掛けて来たがそれを無視して僕は彼女を探した。いた。僕と昔に愛の絆を交わしたジュディ コープランドが。僕は無言で彼女の手を取って連れ出そうとした。「ガブリエル」と彼女は言った。「いいから、付いて来てくれ」彼女の手を引いてバーに入った。僕はバーテンダーにハニーサックルを2杯注文して店の一番奥のテーブルに座った。店には4、5人くらい客がいたが人の目なんか気にしなかった。多分、僕が売春婦を買ってホテルに入る前に一杯ひっかけているくらいに映っているんだろうなと想像した。彼女の身なりは胸元が大きくはだけたブラウスに素足を露出したミニスカートだったから。僕は彼女の手の甲に手を添えてやさしく語りかけた。「ジュディ、昔の君は何処へ行ってしまったんだい」照明の下で見た彼女の顔は目の下にくまが出来ていて窶れていた。彼女は目に涙を浮かべて何も言わなかった。二人でハニーサックルを無言で飲み干し別れ際に僕は言った。「昔誓った愛の絆を覚えているかい?僕はもっと君が君自身を大切にしてくれたらと願っているよ。それじゃ、ジュディ、元気で」無言でこくりと頷いた彼女の頬に涙が伝った。その日から彼女は街角から姿を消し一切音信不通になったと風の便りで聞いた。僕は願う。彼女が新天地で昔のジュディ コープランドに戻っていてくれたらと。

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