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仮初めの羽根など役には立たない

 やあ諸君、私森近一葉はただいま未知の世界の未知なる村に来ています。

 先ずは第一村人に話を聞いてみましょう。


「この!この!」


「くたばれ鳥野郎!」


 おやおや、皆さん巨大鶏に農具を満身の力を込めて振り下ろすのに夢中で全く話を聞いていないようですね。


 これはこれは……ああ、駄目だ。



「少年、あんまり潰さないでくれないか?このあと調べたいんだ。」


「何いってんの!徹底的に潰さないと生き返るんだよ!」


 んなわきゃない。


 いや、あるのか?


 有り得ないと言い切れない所が怖い。



「まあまあ、ラッセル…そこまでにしておきなさい、コカトリスにフレッシュワームはつきませんよ。」


 うおっと気付けば真後ろに人面枯れ木…ではなく村長だ。


 意識の外から現れるのはやめてほしい、私がスナイパーだったら頭を撃ち抜いているところだ。


「フレッシュワーム?」


「死体に取り付く虫です、人間がやられると戦意を向けられず危険なので子供たちは特に怖がっているんです。」


 ふむ?名称的に多毛類…所謂ミミズか何かか?


「死体につくというのは…?」


「ああ、動くんですよ…生前のように、とはなりませんが…殴られると吹き飛ばされるくらいには。」


 脊椎に取り付くのか?いやでも…うーん?


 研究者の意見としてはとてもお目にかかりたいものだが個人的には見たくない。


 だってきっとグロいもの!



「それは…恐ろしいですね、とても会いたくない。」


 まあミミズならやりようはいくらでもある。


 塩とかな。



「しかしどうしていきなり火を?」


「獣ならば火を恐れるか固まるかと思いましてね。」


「ああなるほど…しかしコカトリスが火を恐れるのは知りませんでしたな。」


「試した事はあるので?」


「ええ、ですが効果があったのは初めてです。」


 あるぇ?


「獣が火を恐れるのは当然では?」



「いいえ?地域によるものはあるかもしれませんが…ここいらの獣は自分に火がついたならまだしも火を見て恐れることはありませんな。」


 ふむふむ、マジで?


 まあヒグマとか一般的にあまり火を恐れない哺乳類もいるが鳥類だぞ?


 いや待て、確かオーストラリアだかに火を使って狩りをする鳥がいたか?旅費が払えなくて確認には行けてないがネットで見た。


 鳥類はなー、複雑なんだよな…ダチョウとペンギンとイヌワシがまず見た目が違いすぎる、同じ生物の仲間な筈なのに。


 しかも先祖は恐竜ときた、もう考えたくなくなるね。



 だから楽しいと言うのはあるがな。




「村長、コカトリスの死体を1つ頂いても?」


「ええとそれは…」


「ああ、肉は全てお返しします…生態や体の構造を調べたいので。」


「それでしたら、どうぞ役立ててくださいませ。」


 流石に本気でこの先飢饉の可能性がある村からなけなしの食糧を奪ったりしない。


 まあ実際私も飢え死にはするからいくらかはもらうがね。




「…ご婦人、刃物か何かはございますか?」


「ええ…鉈でよければ。」

 そう言うと腰につけた皮の鞘からそっと大きな鉈を取り出し此方に渡すマダム…当たり前っちゃ当たり前だけど村人皆戦闘民族かってくらい武装してるな…



「ありがとうございます、後でお返し致しますので少々お待ちを。」




 さあお待ちかねの解剖タイムだ。



 先ずは羽毛に覆われた手羽先の部分と手羽元の部分を切り落としてみよう。


 手羽…先?


 私は鉈を振り下ろすために翼腕を掴んで伸ばそうとしたところで固まってしまった。




 これ、翼腕じゃなくて羽が生えてそれっぽく見えるだけの腕だ。



 と言うか爪があるしこれ普通に小さな手だな、活用することは殆ど無いんだろうが翼腕を広げてある程度の高さからの落下なら体制を維持したまま落ちれるから楽ってだけの話なんだろう。



 これ羽根から毟った方がいいな。



「…堅ぇ」

 力いっぱい羽根を引っ張ってみたが思いの外堅い、全然抜けない。


「兄ちゃん、コカトリスの羽根は毟らないで皮ごと剥がすんだよ?硬いから。」


 少年…生物の知識で勝てなくなってきたらいよいよ私の存在意義が無くなるじゃないか。


 まあいいや、言われるとおりに捌いて見るとどうやらと鳥と言うよりは肉食獣のような筋肉をしているようだ。


 …肉食だし獣だもんな、そりゃそうだ。


 つまりは恐竜の時代にいた生物がどこかの過程で空を飛ぶために鳥になろうとしたのではなく欺くために鳥になろうとしたとか…まあ何かしらの要因でこの体系が理にかなってると思ったんだろう。




 そんなことあるかぁ?


 ぶっちゃけアンバランスだ、そもそもトカゲならなぜ鶏に化けるように進化した?




 いやな、諸君。


 と言うのも正直この世界の生物はおかしいのだよ。


 うん…今更感たっぷりだがまあ聞いてくれ。


 ()()()()()んだ。


 今まで見てきた生物は少ない、だがその全てが普通に進化した上での分岐ではなく。


 一度この世界がどうなるか考えた上で進化しているような気がする



 成長するにつれて外見が人類種に近くなっていく亜人。


 何に備えたのか生態を大きく変化させた生物。


 気候のせいか?


 私がいるこの場は少なくとも元の世界と大差ない。


 偶々だ?


 そんなものは無い、全ての物事には意味がある。




 ではどうして。




 この世界は何者かに監視されていて、生物は皆遺伝子操作を受けたような進化を遂げている。



 仮説にしても馬鹿馬鹿しい、高次元存在とでも言うつもりか?



 ああ、高次元存在の介入があったと言えなくは無い、今はそうとすら感じるのだ。



 そもそも元々が鯨偶蹄目、ウシ科の生物が人の言葉を話すように進化した?


 言語が統一されているわけが無いだろう。


 元の世界で言語がいくつあると思う?


 6900はあると言われているんだぞ?

 たかが霊長類ヒト科の進化系ごときがこの量だ。


 別の種から進化した生物がいるならそれだけ言語なんぞ星の数ほど増えると言うもの。



 共通言語が存在するにしてもだ、敵対してる存在と仲良く同じ言葉で話そうねってか?


 そもそも最初からおかしくはあったんだ、イザベラ氏は80でミノタウロス種は高齢者になると300近くまで生きるらしい、そんな哺乳類がいるかよ。


 比較的長生きな人間ですら130年は生きないし牛に至っては20年前後だ。



 もう一度言おう諸君。


 この世界の生物は()()()()




 とは言え私は名探偵でも勇者でも無ければチートも持ち合わせてない。


 故に、そう言うものだと割り切るしか無いのだ。



 長生きしたいならそうしろと私の中のセンサーが言っている(気がする)。


 研究者としては解き明かしてやりたいものだが、多くは望まないのだ。



 世界の心理なんざそれこそ勇者に任せておけ。



 まずは目先の鶏もどきトカゲの解体だ。



「…こいつはオスか…鶏は総排泄孔だったはずだが性器がある、本格的にトカゲなのか?」


「そう…なに?」


「総排泄孔、鳥は交尾の際に尻を擦り付けるようにして遺伝子を交換する。」


「難しいね…兄ちゃん別の世界からきたんでしょ?」


「ああうん、転移してきた旅人の森近だよ。」


「僕はラッセルってよんで。」


「そうかいラッセル、こいつらの巣はわかるか?」


「こいつらって…コカトリスの?見付けてどうするのさそんなの。」


「根絶やす、村は安全だし肉は手に入るから効率がいいぞ。」


「そんな…コカトリスが沢山いてどうにかなるの?」


 ふ、知れたことを…行ってみてから考えるに決まっているだろう。



 まあ穴蔵に住んでるなら大松でも投げ込んで蓋をしてやれば勝手に酸欠で死ぬだろう。



 トカゲならな。



 普通に鳥の巣に住んでたらやってられるか!って叫んでやる。






原神たのちい。

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