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恋愛と書いて奴隷と読む

「質問ですね、ええ何なりと。」


 諸君、私は今何かと窮地に立たされているのかもしれない。


 何がと言うとこの目の前に佇む肥え太った自尊心を抱える枯れ木のようなアンバランスな男にどうやら根掘り葉掘り今までのことを聞かれてしまうのだ。


 下手な事は言えないが、人間がこの感じならばいけるか?


 そんな大学入試の面接より胃がひりついている私を知ってか知らずか容赦なく口を開く。


「ではあなたはまずどこの国からいらしたのですか?」


 この質問には正直に答えてしまおう、実際日本から飛ばされてる人もいるようだしな。


「日本です、別の読み方だとジャパンとか…」


「ニホン、それなら確か文献があります…ではどの時代の?」


「…ええと、どういうことですか?」


「…貴方のいた世界の時代はどのような感じでしたか?」



 しまった、こいつもしかして転移者に会うの初めてじゃないのか?

 見覚えがあるぞこの目…ある程度の確信を持って粗探しと指摘をして来る奴の眼だ。


 具体的に言うと面接官とか教授だ。


「ここよりははるかに発展しております、化石燃料と呼ばれる燃える液体などを使って電気を作ったり人を長い時間空に打ち上げ、そしてあの空の向こう側にすら行ける…それが私のいた世界でした。」


 残念だったなロバート君、私はもう知っているのだよ。


 この世界には明確ではないがある一定の繁栄を防ぐリミットがある。


 いや例えそれがただの迷信であろうともだ、そういった意識があるだけで研究など好きなだけ遅れさせられる。



「それは…素晴らしい、森近殿はその技術を知っておられるので!?」


 酷く興奮したように鼻息を荒くしてまくしたてる村長、寄るな鬱陶しい。


 うちの鳥の方がおっさん臭くないだけまだましだぞ、まあ鳥臭いけど。



「いえ残念ながら…私はしがない研究者でしたのでそこまでお力になれる技術は…」


「研究者!そ、それはいったい何を?」



「生物…生き物の進化論です。」


「…ああ。」


 私の発言を聞いたとたんあからさまにテンション下がりやがったよこいつ。


 傀儡にしたいならそういう露骨なのやめた方がいいと思うんだけど…


「…ご期待に添えず申し訳ありません。」


「いえいえそんな…」


「…生き物の生態についてだったら研究はできるかもしれません…例えばそのミノタウロス?とかもサイズから見るに体重も相当なものですから人間は落ちなくてもミノタウロスは落ちる落とし穴とか…」



「何と…そんな事が?」


 お、ちょっと目の色が変わった。


 ちなみにだがミノタウロス種は鼻が良いので多分そうそう落とし穴は引っかからない。



「ええ…他にはどんな生物がいるのか教えていただければそれに対する道具も…」



「素晴らしい!森近殿、是非この村に滞在してそのお力を貸していただきたい。」


「ええ、命を救われたご恩もありますから…喜んで。」




 よぉしナイス私!


 さあ、実際私に生物は研究できてもそれに対応する道具の案なんて出せないんだがどうしたものかな。



「うっ…失礼、まだ体が本調子じゃないようでして…」

 腕を押さえながら膝をついて苦悶の表情を見せる。


「おおそれは大変だ…ロクサリーヌ、部屋にお連れしなさい。」



 声を聞くなり部屋にさっきの使用人さんが入ってきた。


「森近様、どうぞ肩を。」


「ありがとうございます…」


「ああそうだロクサリーヌ、しばらくは私でなく森近殿の身の回りの御世話をするように。」 



「かしこまりました、村長。」 


 ん…何だ今の。



 何か底知れぬ違和感を感じたが取り敢えず黙殺する、ぼろが出ないようにしないと私はどっかでやらかすからね。



 と言うかまずったな…使用人を付けられると下手に動けないのだが…


「いえロバート殿…私に使用人など。」


「まあまあ、そのロクサリーヌはなかなかに利口で優秀ですよ…それに見た目も美しいでしょう?」



「ええそれは…」


「ならばお好きなように、心配しなくても逆らったりはしませんよ。」



 んーむ、ロクサリーヌさんこれはまあまあ可哀想な状況なんだろうか?


 まあ私の知ったことではないがね。



 だが、ミノタウロス種には恩があるし情もある。


 少なくとも村長の顔面にその内は一撃入れてやる予定だ!


 あ、私はやらん。



 手が痛くなるからね。




「ではありがたく…ロクサリーヌさん、よろしくお願いします。」


「ふふ、此方こそよろしくお願いします…森近様。」


 肩を借りて立ち上がり部屋に戻る。


 つまりそれだけ密着したわけで彼女の髪からはシャンプーなんて存在しないこの世界ながら異性を引きつける芳香を感じた気がした。



 不愉快だ。



 ああ、言ったかもしれないが私は根本的に異性が苦手だ。


 いや語弊があるな、同性愛者でもないぞ?


 所謂私は人間嫌いなのだ。



 憎んでるとか過去に何かあったじゃなくて普通に恋愛とかしたい気持ちが一切無い、種の保存をする気が起きないので生物としては紛い物もいいところだが私は私を誇りに思っている。


 何せ恋だの愛だのと言った何の根拠もない思い込みに浮かされて失敗する事が無いのだから。


 その点獣はいい、繁栄が本質故に堅苦しいことはなしだ。


 ただ増える。


 とは言え私も過去には恋愛というものをしたことはある、性交の経験もだ。


 だが私の中で一番親しかったであろうその女性も私の中の何かを変えるには一切いたらなかった。


 何故か、それはきっと私は根本的に人類に興味が無い。


 だって研究しつくされているだもの、そんなものをなぞって研究したってつまらない。


 そんなものに現を抜かしている余裕があるならば私は出来るだけまだ答えがわかっていないものを追い求めたかったのだ。


 と言うわけで色々とこじらせていたらそもそも人間の匂いが嫌いになってしまった、普通に自分は大丈夫だが人の車とか嫌だ、その程度のものだ。




「では何かございましたら何なりとお申し付けくださいませ、森近様。」


 村長の意向で言うならば私を籠絡するなりして自分のために使いたいとかその程度のところだろう、愛想よく出来るだけ魅力的に振る舞っているのを感じる。



「私にそう気を使わずとも良いですよ…そもそもそこまで対した人間ではありませんから。」


「ふむ…森近様、私は使用人です…敬語はおやめになっては?」


「ええと…?」


「御自身の価値を理解するべきです、と言っているのです…転移者というだけでもてはやされるのですから自信を持ってくださいませ。」


 あ、これ自信なくて卑屈に見えた奴だ。


 うん、たまにこういう人はいる、自信をつけさせようとしてくれる優しい人…と見せかけて自分がそうすることで弱者を救った気になっているだけだ。


 高校とかで覚えがある。


 だが私は自信に満ち溢れているぞ?


 そうでもなきゃこんな危ない真似してない。


 正直癪だが彼女自身は優しさでやっているつもりなのだ、ならば私にできることは人間関係を壊さぬよう立ち回ることだろう。


「ありがとう、そう言って貰えると少しは自信も持てるよ。」


「ええ、良かった。」


 はつらつと笑う笑顔、うん…私美人は嫌いじゃ無いんだよ、見てる分には美しいだけだし笑顔は素敵だ。


 本来笑顔とは獣が獲物を襲うときに見せる警戒色のようなものだが人間はその笑顔でコミュニケーションを円滑化させるために本能が進化しているからな。


 でもやっぱりときめきはしない。


 以前イザベラ氏を見たときにも思ったが根本的に私は人の肉体以外ならば割とそそられるのかもしれないがそれでもやはり恋愛は厳しいだろう。







 これやっぱり私が番を見つけるの無理じゃないですかブルゴ殿…


この所プレステのコントローラーの調子が悪いので投稿します

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