表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/9

第3話

「素晴らしい!!! ペイルくん!! 貴方魔法が使えるのですね!!!!!!」



 はぁ? どういうこと?



 困惑するおれを他所に教師は大興奮した様子で素晴らしい、素晴らしいと繰り返す。



「どうして最初に言ってくれなかったんですか! こうしちゃいられない、すぐに特別クラスの手続きをするので待っててください!」


「え、ちょ、待ってください、話を──」



 えぇ……。


 何がどうなっているのか聞こうとしたが、そんなことはお構いなしに走っていってしまう教師。



 いや、意味が分からない。



 本当に1番簡単な魔法を使っただけだぞ?


 何を興奮する理由があるんだ?


 というか魔術と魔法は違うのか?


 じゃあ魔術ってなんだ?



 ダメだ、疑問しか浮かばない。



 あ、後ろの生徒たちグループのザワザワも大きくなってきた。


「おい、あれ魔法らしいぞ」


「えー凄い! 私初めて見ちゃった!」


「私もー、友達に自慢しちゃおー」


「ってかよく見たらカッコよくない?」


「確かに! 私タイプかもー……」


「おい、だれか話しかけてこいよ」


「えー俺やだよ、お前が行ってこいよ」


 ワイワイガヤガヤ…



 ……居心地悪っ。


 なんでも良いからとりあえず移動させてくれないかな。後ろからの視線が痛い。



 そうして散々好奇の目に当てられること3分、先程の教師が戻ってきた。


 あー、やっとこれで解放される……。



「すぐ担当の者がくるので、すみませんがペイルくんはもう少しだけ待っててください。他の方は試験を続けますよ。次はバニさん、バニ・レイナさんお願いします」



 おいおい、まだ待たされるのかよ。


 ゲンナリしている俺はほっといて試験は進む。


 バニ、と呼ばれた女の子が前に出てきた。



 あ、俺のことチラチラ見てる。



 しかし、流石に試験の方が大事なのかすぐに意識を的の方に集中させる。


 両手を前に突き出したかと思うと、小さな声で呟いた。



「ライトニング、ボルト」



 瞬間、手の平から電気の矢が放たれて石の的に命中、霧散する。


 それを確認するとバニは安堵した表情を浮かべ、教師も感心した顔をする。



「ほう、中々良いですね。ちゃんと予習してあります」


「えへへ……」



 照れたようにバニが笑って、生徒の集団の中に戻っていく。



 その様子を見た俺の頭の中では、さらに深い困惑と驚愕が広がっていた。


 え、何アレやば。


 今の何? え、魔術? 嘘だろ?


 ()()()()()()()()()()()()()



 ◇



 この驚きを皆さんに分かってもらうためには、まず魔法の発動プロセスを説明しなければならない。


 魔法発動には5つのプロセスが必要になるのだ。



 ①標的に狙いを定める。

 これが出来ていないとあらぬ方向へ魔法が飛んでいく。最も基本かつ最も重要だ。



 ②魔力を集める。

 体内の魔力を集める。これは結構感覚的なもので、魔法適性のある者は大体意識せずに出来る。



 ③魔法陣を生成する。

 集めた魔力で魔法陣を作る。ここでどんな魔法をどんなふうに発動させるかを決める。



 ④詠唱する。

 これは魔法陣がしっかり出来ていれば省略できる。が、詠唱があれば魔法陣の精度が低くても発動できるようになる。



 ⑤発動。

 魔法陣を起動し、魔法を発動する。



 この5つのプロセスを経て、さっきの火の玉は発現したわけだ。



 しかし、バニの使った魔術は違う。



 体内の魔力を使っていない。


 熟練した魔法師は他人の魔力の流れや総量が分かる。


 まぁ勿論俺も分かるわけだが、今の魔術ではバニは一切体内の魔力を消費していない。


 それどころか、動かした気配すらなかった。



 しかも、魔法陣を使っていない。


 今のバニの動きをしっかり見ていたが、確かに魔法陣は影も形もなかった。



 予め魔法陣を書いてどこかに隠し持っていたとか?


 200年前には予め魔法陣を生成して何処かに写しておき、それを起動する魔法師がいたし。



 いや、それでも魔法陣は発光するし起動時に魔力を使うから、バニが持っていれば気付くはずだ。



 つまり、魔術は世界最強の魔法師である『極魔法皇(スペリオルウィザード)エルギスト・ハルメロード』にとって、未知のものであるということだ。



 ◇



 えぇー、すご!


 ヤバイぞあれ、思わず語彙力がなくなるくらいヤバイ!


 魔力を使わないってことは、無限に撃てるってことか!?


 アレが!?


 しかも魔法陣も要らない!


 めっちゃ早く撃てるじゃん!


 うぉぉぉぉぉぉぉぉ魔術すげーー!!!


 200年後に転生して良かったーー!



 内心大興奮していると、グラマラスな金髪の女性が走り寄ってくる。


 ほわほわした雰囲気がなんとなく母さんに似てる気がした。



「黒目黒髪……、君がペイルくん? 遅れてごめんねー」


「あ、はい、ペイルは俺ですけど……。あなたは?」


「あ、ごめんごめん。私はサラ。この学校で教師をしてるのー。魔法特別クラス、Sクラスの担任予定でもあるよー」



 自慢げに胸をはるサラ先生。


 かなりの巨乳なのでなんとなく目のやり場に困る。



「えっと、じゃあ俺はどうすれば良いんですかね」


「とりあえずこれから一回校長先生のとこかなー? 正直イレギュラー過ぎて私たちじゃちょっとどうすれば分からないのー」



 サラ先生はついて来て、と言うと校舎に向かって歩き出す。


 色々と聞きたいことはいっぱいあるけど、しょうがない。


 俺はサラ先生についていくことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ