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第2話

 どうも、俺は『極魔法皇(スペリオルウィザード)エルギスト・ハルメロード』改め『ペイル・サルバラージ』。10歳だ。



 あの後、無事に俺は転生する事ができたらしい。


 サルバラージ家の長男として生まれ、スクスクとこの歳まで成長する事ができた。



 今住んでいるのは人里離れた山の中。


 父さんであるメイソン・サルバラージ、母さんのメリー・サルバラージ、妹のマユ・サルバラージと俺を合わせた4人家族で一軒家に暮らしている。



 ◇



「ペイル、ペイルー。起きなさい」



 母さんの声が聞こえる。


 窓からは日差しが入ってきて未だ寝ぼけ眼の俺に起きろと言ってくる。



「今日は魔術学院に行く日でしょ? お母さん朝ご飯とお弁当、作ったから。準備出来たら食べにいらっしゃい」


「わかったよ、母さん」



 そう、今日は待ちに待った魔術学院に行く日である。



 魔術学院。


 この家に魔法関連の本が無いと分かったとき、真っ先に行こうと決めた場所。


 というか転生前から必ず通おうと思っていたのだが。


 転生後の両親は魔法の適性があるとは限らないし、そうでなくともやっぱり叡智は学園に集められるだろう。



 200年前、俺が設立した時は魔法学園という名前だったはずだが、母さんに


「魔法学園に行きたい!」


 とねだると


「あらあら、ペイルは魔術学院に通いたいのね」


 と言われた。


 まぁ200年も経てば名前の一つや二つくらい変わってもおかしくは無いだろう。



 俺は布団から這い出ると、魔術学院指定の制服に着替えて鏡を覗き込む。


 清潔感のある、真っ白で少しブカブカな制服を着た黒目黒髪の少年が目に入った。



 前世では金髪碧眼だったので10年経ったとはいえ未だに少し違和感がある。


 まぁ前世では今の3倍以上の時間過ごしていたので当たり前と言えば当たり前か。



 身支度を整え、ボタンがしっかり掛かっているかを確認するとそのまま食卓に向かう。


 父さんと妹は既に席に座っていた。



「お、いいね。男前じゃないか!」

「え、お兄ちゃん結構似合うじゃん」



 笑顔の父さんと妹が声をかけてくる。


 端正な目鼻立ちと優しそうな垂れ目に引き締まった身体。


 狩人をしている父さんはかなりのイケメンで、今の俺もその血を引き継いで自分で言うのもなんだが中々にいいビジュアルをしている。


 ちなみに黒目黒髪は父さんからの遺伝だ。



 妹のマユは母親似で金髪緑眼。


 美人の母さんとイケメンの父さんから生まれただけあり、身内贔屓を差し引いてもかなりの美少女である。



「いーなーお兄ちゃん。私も早く学院行きたいなー」

「マユは来年よ。2人ともいっぺんに居なくなっちゃったらお母さん寂しいわ」



 母さんが料理を運んできてくれ、家族4人で食卓を囲む。


 そういう機会もこれからは少なくなる。


 魔術学院は完全寮制である為だ。


 やはり家族として10年も一緒に暮らすと寂しさを感じてしまうな。



「身体には気をつけるのよ?」


「そうだよ、寂しくなったら帰ってきていいんだからね」


「もう、それはお父さんが寂しいだけでしょ!」


「バレたか。そうだよ、お父さんは寂しいんだ!」


「みんなわかったって。大丈夫、休みの日なんかには帰ってくるから」

 


 他愛無い話で盛り上がるのもこれが最後かもしれない。全員にそういう想いがあったのだろう。


 食卓は、いつも以上に騒がしかった。


 ◇


 俺の家から連絡馬車乗り場まで1時間。そこから魔術学院までは連絡馬車で2時間の道のり。


 ぶっちゃけ魔法を使えばもっと速く向かうことも出来たが、これから魔法を学ぶんだしわざわざそんなぶっ飛んだ事をする必要もない。


 というかそれをして基本は出来ているから、と教えてもらえない事があると困る。


 あくまで俺は現代魔法を教えてもらいに行くのだ。


 変な優等生アピールは必要ない。



 そうしてようやく魔術学院に到着した。


 馬車から降りた俺の目の前にあるのは白と青で彩られた巨大な校舎。


 転生前に作った魔法学園そのままだった。


 200年も経てばもっと古ぼけていても良い気がするのだが、まぁ修繕などをすればこんなものだろう。



 正門前では教師とおぼしい女性が



「最初に入学試験を行いまーす。新入生の皆さんは指定の場所に向かってくださーい」



 と案内をしていた。



「へぇ、入学試験は今やるのか」



 独り言が出た。


 ずっと疑問だったんだ、魔法適性を見ずに入学させて良いのかと。


 今やるってことはもし魔法適性がなかったらそのまま追い返されるってことか。


 容赦ないな、200年後。



 ◇



 指定されていた運動場に向かうとそこにはざっと40人前後の生徒と、教師の男がいた。


 教師の男は眼鏡をかけていてなんだか神経質そうな雰囲気を醸し出している。



「では、今から皆さんには魔術を使ってみてもらいます。順番は無作為としますので、いつでもいいよう心の準備をしておいてください」



 そう言ってリストを捲る教師。メガネが太陽光を受けてキラリと光った。



「まず初めは……ふん、ペイルくんにしましょうか。ペイル・サルバラージくん。前へ」


「はい」



 うお、いきなりか。まぁ別に良いけど。



 俺が前に出ると、教師は少し遠くにある石の的を指差した。


 石なのは燃えたりしないようにという配慮だろう。



「アレに向かって、何か魔術を使ってみてください。使えるものなら、何を使っても構いません」


「分かりました」



 うーん……、何を使おうか。



 ここ10年魔法研究をほぼしていなかったとはいえ、未だにほぼ全ての魔法を使える自信がある。


 保有魔力だって前世からそのまま引き継いでるし。



 だが、余りに強力な魔法を使うのは良くない。


 さっきも言ったが、ここには学びにきているのだ。

 力を見せびらかす必要はないだろう。



 考えた結果、1番簡単な火の玉を出す魔法を詠唱付きで使うことにした。


 これなら最低限魔法適性があることくらい分かってもらえるだろう。



 的に向かって手を突き出し、身体の魔力に意識を移す。魔法陣、生成。



「火よ、我の前に現れよ」



 手の平に現れた魔法陣から小さな火の玉が飛び出してくる。


 そのまままっすぐ飛んで的に当たり、消えた。



 うん、まぁこんなもんかな。



 そう思って教師の方を向くと、教師は黙ったままガクガクと震えていた。


 後ろの生徒たちからも数名がざわついている声が聞こえている。



 え、何、なんだなんだ。

 俺が困惑していると、教師が驚愕の表情で言った。



「素晴らしい!!! ペイルくん!! 貴方魔法が使えるのですね!!!!!!」



 はぁ? どういうこと?

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