第1話
「出来た、出来たぞ!! やっと出来た!! これでやっと転生出来る!!」
そう叫ぶ俺の前では魔法陣がビカビカ光っている。
あとはこの中で呪文を唱えて魔方陣に魔力を流せば、晴れて俺は転生ができる。
何故俺が転生したいのか?
それは俺がこの世界最強の魔法使い、『極魔法皇エルギスト・ハルメロード』である事が関係する。
◇
この世界において俺は数々の偉業を成し遂げてきた。
新魔法を1000個は開発したし、既存魔法だって俺の手が加わっていないものはない。人間に宿る魔法を使う為の力、魔力の存在を発見して証明もした。
世界を滅ぼす力、終焉の使徒を全滅させてその支配者である邪神ゲドガルズも倒した。
しかもその残滓を利用して世界を支配しようとした親友ノエリカを打倒して、宙から来て大地を砕こうとした死滅星ハーリーを粉砕した。
腐りきっていた魔法総会をぶち壊し、新生魔法総会アルトメティアを創設したしその本部である天にそびえる塔も1人で建てた。
歴代最年少で魔法使いトップである証明、『極魔法皇』の称号も手に入れた。
その結果、どうなったか。
俺が最強になりすぎて、退屈になったのである。
いや、魔法は好きだし魔法研究をするのも大好きだ。愛してると言ってもいい。
これまでの人生35年間はほぼ全て魔法に捧げた。
食事、洗濯、風呂、起きてるとき、寝てるときですら考えていることはいつだって魔法のことだった。
が、それだって競ってくれる奴や目標があったからやってこられたのだ。
今じゃもう競う相手どころか目標にしてくれる奴すらいない。
人生はまだまだ半分以上残っている。
だがこんな状態じゃ楽しむなんて出来る訳がない。
果てしなく虚無。
どうすればこの退屈を凌げるだろうか?
魔法学園?
そんなものとうの昔に作った。
弟子を取る?
もう既に何人もいる。
じゃあどうしようか。
……そうだ、未来に行けばいいんだ!
未来なら俺が立ち止まっている間に魔法研究が進むだろうから、世界が俺のレベルについてこられるようになるはずだ。
だが今の体のまま未来に行くのは少なくとも現時点の俺では無理だ。やるなら精神だけを飛ばして転生という形を取るしかない。
そうと決まれば転生魔法を今すぐ開発しなければ!
こうして俺は転生魔法開発に乗り出したのだった。
◇
「いやぁ、思ったより時間かかったなぁ……。もうちょっと早く作れると思ったんだけど」
広い自室で一人ゴチる。
転生魔法が完成に近くなったので、もう既に転生する為の準備は整っている。
『超魔法使』の4人には居なくなることは伝達済み。転生した後は彼らがなんとかしてくれるだろう。
……スピカにはギャン泣きされながら引き止められたけど。
他の3人も悲しそうだったし、俺もなんだかんだで名残惜しいのだがもう決めたことだ。
変更はない。
「ま、いいや。あんまりボヤボヤしてるとスピカが突入してくるかもしれないし、さっさと転生しよう」
呪文を詠唱しようとして、ふと気付く。
「何年後くらいがいいかな」
転生にあまりにテンションが上がり過ぎて肝心なことを忘れていた。
そう、転生する年代はとても大事だ。
あんまり早いと転生した意味がなくなってしまうし、遅すぎると下手したら何かの要因で人類が居なくなっている可能性もある。
実際4回くらい世界の危機があったし。
とりあえず2、3世代くらい代替わりした後でいいだろうか? それくらいなら魔法もだいぶ進んでるだろう。多分。
「じゃあ……まぁ、200年後にしようか」
魔法陣に入り、呪文を詠唱する。
身体から魔力が抜ける時特有の心地よい脱力感とともに、魔法陣の光が更に強くなり辺りを照らす。
ここから。
そう、ここから俺の新しい魔法ライフが幕を開けるのだ。
そしてその期待感を胸に、俺は息絶えた──。