お茶会は決起集会になるようですわ
前話は12月10日分の更新で、今話が今日の更新分です。もし、お待ち頂いていた方がいらっしゃいましたらすみませんでした。お待たせしました。
さて。そんなこんなで。お茶会当日。イン・ソフィー様のお家。ですわ。お兄様に結局聞いてもらえなかった疑問について、この際だからソフィー様に聞いてもらおうと思いますのよ。
「ごきげんよう、ソフィー様」
「ごきげんよう、ルイーザ様」
ソフィー様は、グレーの髪に同色の目をしておりますが、髪の方が白に近いので薄幸の、という表現がお似合いな外見です。中身? 嫌ですわ。そのような事をお聞きにならないで下さいまし。
「ソフィー様、恥を忍んでお手紙に書かせて頂きましたが……」
「ええ。大丈夫。その件で話し合いたい事が有りますわ! そして、前もって話しておきましょう。私もこの度婚約を破棄されました」
マジかっ! まさかとは思っていたけど、当たってたー! はっ。うっかり言葉が砕けてしまいましたわ。巷で流行っている物語本の影響を受けてしまっておりまして、お恥ずかしいですわ。平民の方々は、このような砕けた言葉遣いをされるそうで、羨ましい……いえ、話しやすそう……いえ、親しみやすいですわ。
「まぁ! ソフィー様程の淑女が、そんな憂き目に遭われるとは……。ソフィー様のお相手は確か、バーキー侯爵家三男・リザット様でしたか?」
「ええ。リザット様よ。なんでも巷で婚約破棄が流行しているから、自分も流行に乗りたい、と仰せでしたわね!」
「まぁ! 私もエミリオ様からそうお伺い致しました。本当の事でしたのね。てっきり嘘かと思ってましたわ」
本当に流行している、らしいですわ。というか、だからこそ疑問でしてよ? 婚約は、貴族にとって家同士の約束。自分達の都合で簡単に成立するものでも、破棄出来るものでも無い。それなのに、破棄されているって、どういう事なのでしょう?
「まぁルイーザ様も仰られたの?」
「はい。流行している、と」
「全く男は女を馬鹿にしていますわ。女を馬鹿にして許されると思ったら、大間違いでしてよ!」
ふんっ。
わぁ、鼻息荒くてソフィー様が怒っていらっしゃるわー。これはソフィー様、徹底的に相手を潰しますわねぇ。泣いて謝っても許してもらえるかどうか……。まぁ仕方ないですわね。リザット様に同情する気は有りませんもの。
「私、ルイーザ様にお手紙をもらったその日に婚約破棄を申し渡されましたのよ」
「まぁ! では、私、ソフィー様に縁起でも無い手紙を差し出してしまいましたのね」
かなりショボくれるわ、私。
「偶々でございますわ。実は、他にもお呼びしておりますの。婚約破棄をされたご令嬢方を」
ソフィー様が偶々、と言い切ってくれて胸を撫で下ろした直後に、ソフィー様は燃料を投下されましてよ!
「ほ、他のご令嬢方、で、ございますの?」
恐る恐るソフィー様に尋ねる私。
「ルイーザ様に伝えておらず、申し訳なく思いますが。前々から2人の方から内密に、とご相談を受けておりました。それで気分転換に夜会を開こうかと思いましたけれど、私も婚約破棄をされ、ルイーザ様も婚約破棄をされた。それならばお茶会の方が、スッキリ致しますでしょう? というより、私もさすがに自分がこのような状況に陥りますと、夜会などと辛い事はやっていられません。お茶会の方がまだ準備も楽ですもの」
確かに夜会の準備は、お茶会よりもずっと大変ですわね。お茶会は普通令嬢達だけですし、私的な感じですが、夜会となれば、招待客にも気を遣いますし、ドレス1つとっても、皆様に合わせた色やデザインを考えますし、食事や飾り付け等の采配。何より基本的にはパートナー同伴であるもの。
婚約破棄をされた方が気軽に参加出来るとは思えません。
ソフィー様の事だから、おそらく、先に来ていたお2人のために、良いお相手をご紹介しよう、というための夜会だったはず。とすれば、適齢期若しくは適齢期に近い婚約者も居ない男性をご招待する予定でしたはず。
でもご自身が婚約破棄の憂き目に遭われた。さすがにそれどころじゃない。という事で急遽夜会中止でお茶会になったわけですか。
「それでね? 色々と話し合いましょう、という事になりまして」
ソフィー様がそんな事を言う。話し合い、とは?
「ええと、話し合い、で、ございますか?」
なんだかソフィー様の背後に黒いオーラが見えます。とても怖いのですが、どういう事でしょう? ソフィー様と言えば、淑女として見習うべきところが沢山ある方ですが、だからといって、ただ黙って殿方の言う事を粛々と聞く方では無いですが……。
「ええ。色々と話し合いですわ」
にっこりと笑ったのに、目が笑ってないのですが……。淑女教育のため、招かれた先生から、淑女として、他人に感情が読まれないよう表情を作らない、と教わりました。
ですが、社交界デビューを果たしてソフィー様とお会いした時に、ソフィー様から無表情ではなく、常に微笑みを浮かべる事にすると良くてよ、と教わりました。微笑みで感情を隠すそうです。今のソフィー様の笑みは、まさに感情を隠すためのものに見えました。
「その話し合いの場に、私を呼んで下さり、ありがとうございます」
話し合いの内容は分かりませんが、きっと私のためになるのでしょう。ソフィー様に可愛がられている自覚がありますわ! ですからここは、お礼を述べておくのが正解だと思いますわ!
「いいえ。きっと思い知らせてやりましょうね!」
内容も把握していないのに、お礼を言わない方が良かったでしょうか……? なんだか今、ソフィー様の口から思い知らせてやる、と恐ろしい言葉が聞こえて来た気がします。……気のせいね。気のせい。気のせいだ、と思いますわ! ええ、気のせいです! ソフィー様の背後の黒いオーラが更に濃くなった気がしても!
私はそう思いながら、ソフィー様の案内で他のお2人にお会いする事になりました。
次は12月30日に更新予定です。また年明け……いつ頃とは言えませんが……に、新作を公開予定です。エブリスタからの転載では無く、小説家になろうでの新作です。
また、逆ハー世界に転生して〜ですが、年明けにエブリスタへ逆転載する予定です。