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夜会が中止になりまして・2

10日に更新するのを忘れてました。もう1話投稿します。

 「カルディス様。何をバカな事を仰っているんですか」


 「まぁ! イーシュ様!」


 お兄様の背後から、女性にしてはやや背の高い方が現れた。その中性的な顔立ちも含めて、イーシュ様ファンクラブなるものが淑女の間に出来ている。私はクラブの会員というより、特別顧問という立場です。何しろ、将来、義理の姉妹になりますから、その暁にはイーシュ様の日常を皆様にお話するよう、会員の皆様からお願いされているんですもの!


 「ルイーザ。此度の事は耳にしているわ。災難だったわね」


 「イーシュ様っ」


 ヨシヨシと頭を撫でられました。ご褒美ですわ! 婚約破棄をされてご褒美が貰えるなんて! ビバ! 婚約破棄! いけないいけない。浮かれてしまいましたわ。どさくさに紛れてイーシュ様に抱きついてみましたわ! いい匂いがしました!


 「ルイーザ。ドゥール侯爵子息と何が有ったの?」


 イーシュ様に尋ねられた私は、婚約破棄に至った経緯を話した。途端に、お兄様もディールもイーシュ様も眉間に皺を寄せる。その後、ドゥール侯爵夫妻が乗り込んで来た事まで話して、3人は溜め息をついた。


 「俺とディールは、ドゥール侯爵夫妻が乗り込んで来た事は聞いたけれど、父上と母上に出て来なくていい、と止められてな。そんな事を言われていたなら、出て行けば良かった」


 お兄様に頭を撫でられ、私はお兄様のその手にスリスリと頬に当てる。「ルイーザっ!」と叫ばれてギュッと抱きしめられた。うん、お兄様、苦しいですわ。


 「兄上、姉上が苦しがってるよ」


 ディールが冷静にお兄様を引き剥がしてくれた。そして代わりというように、今度はディールに抱きしめられて頭を撫でられた。更にイーシュ様に頭を撫でられる。


 「全く、こんな可愛いルイーザに婚約破棄が流行しているから、なんてバカげた理由で婚約破棄を告げるなんて、ドゥール侯爵子息も大概バカだな」


 イーシュ様っ! ありがとうございます! その言葉だけで生きていけます!


 「それで、本当に婚約破棄が流行していますの?」


 生憎、今年デビューしたばかりの私は夜会にあまり出ていない。お茶会は10歳の時から出ているから、それなりに社交は出来ていると思うけど。ドレスの流行や現在行われている観劇は知っていますわ。それでも婚約破棄が流行している、とは、さすがに。


 「うーん……」


 私の至極当然な質問に、イーシュ様が煮え切らない唸り声を上げる。サッパリしたご気性のイーシュ様が口籠る、なんて、初めて見ました!


 「まぁ、あまり外聞の良い話題では無いけれど、私の耳に入っているのは、こう言っては悪いがルイーザで3件目、だね」


 「まぁっ……」


 流行かどうかはともかく。婚約破棄をされた方が、他にもいらっしゃるのは確かなのね! イーシュ様のお耳に入っていると言うし。


 「流行しているかどうかは分からないけれど」


 イーシュ様が無意識なのか、チラリとお兄様を見る。お兄様は、ニコッとイーシュ様に笑いかけた。


 「でも、イーシュ様、ご安心下さいませ。お兄様とイーシュ様は、絶対に有りませんわ!」


 真っ赤になっているイーシュ様と、それを嬉しそうに見るお兄様を見れば、この2人が婚約破棄は有り得ない。お兄様はシスコンですけど、イーシュ様を大切にして愛している事は私も承知の上ですわ!


 何しろ、月に1度は何かしら贈り物をしているお兄様は、イーシュ様の誕生日には、必ず紅の薔薇を100本、持参して逢いに行かれますのよ! そして私は知っていますわ。甘々モードのお兄様は、私やディールの前でさえ、イーシュ様の手を優しく握って抱き寄せるんです。私達が居ないところで、やって欲しいのですわ……。更に、口付けも私達が居る前でされた日には、居た堪れない顔のイーシュ様と、こちらも居た堪れない顔になった私達がおりましたわ……。


 思わず遠い目をして、つい1ヶ月前のお兄様の誕生日を思い出してしまいましたわ。……いけない、いけない。話を戻さなくては。


 「とにかく、流行はともかく。婚約破棄を告げられた方が私以外にもいた事は分かりました。ですが。疑問がありますわ」


 私が咳払いをすれば、お兄様がハッと私を見る。そのお兄様は一瞬でシスコンモードに入ったらしい。


 「そうだ! あの愚か者に鉄槌を下さなければ!」


 ええとー。そういって下さるのは有り難いのですけど。お兄様。家格は向こうが上ですわぁ。そして私の疑問はシスコンの割に聞いて下さいませんのねー。それにしても、ドゥール家は本当にどうなさるのかしら。普通、公爵家と侯爵家は借金なんて有り得ませんのに。それだけあのおばさまの着道楽がとんでもなかった、としか言えませんけれども。借金する程の道楽って、ある意味芯が通っていて素晴らしいですわ。


 なんて、既に他人事なのは、私とエミリオ様の婚約がどちらも恋愛感情が無かったせいでしょうか。私、エミリオ様のような細身タイプ苦手なのですわ! やはり男性はお兄様みたいに胸板厚い筋肉質でないと! ブラコンを舐めないで頂きたいですわ!


 「お兄様。鉄槌なんて結構ですわ。ドゥール家はこれから我が家からの持参金という名の臨時収入を断たれる事が決まりましてよ? 後は借金をどう返すのか思案されますわ。其方でかなり苦しまれましてよ?」


 借りている相手は、国内でも有名な商会だけど。高利貸しとしても有名なので、取り立ては相当厳しいと、お父様が黒い笑みを浮かべて話していらっしゃいましたもの。構いませんわぁ。


 「それだけで終わらせる程、甘い処分では覚えないと思うよ、ルイーザ」


 何を覚えないのか、私は聞かない事にしました。だってお兄様の笑顔が満面でしたもの。絶対お父様と同じくらい黒い考えですわ! きっと、ドゥール家にどうやって私に恥をかかせた事を後悔させてやろうか、絶対考えていらっしゃるわねぇ。まぁ私は知らないですから、止めようがありませんわぁ。


 「お兄様にお任せしますわ。それよりお兄様聞いて下さいな」


 「なんだい? 可愛いルイーザ」


 「ブレング伯爵家の夜会が中止になりましたの。ですからエスコートは不要になりましたわ」


 「な、なんだって⁉︎ 可愛いルイーザを自慢する機会が失われたというのか? そんな……。俺はルイーザをエスコートするのが楽しみだったのに」


 ソフィー様から手紙が来た事を話してしょぼくれたお兄様。お慰めするのは、イーシュ様にお任せしましょう。イーシュ様は、お兄様のシスコンも私のブラコンも笑顔で受け入れて下さる、素敵な女性なのですわ。私、イーシュ様がお義姉様になりましたら絶対にシスコンにもなりましてよ!


 そんなわけで、イーシュ様にお任せした私は、ディールにも部屋に戻るよう促して、自室でのんびりとする事にしました。だって一応婚約破棄をされて傷ついたご令嬢ですもの私。あまり元気ではいけませんわ。


 例え、エミリオ様との逢瀬で話題になりますのが、ミミズの成長記録か虫の幼虫の成長記録だけしか無くて、話に退屈していたから婚約破棄が嬉しくて仕方なくても。表向きは傷ついた態で居なくてはなりませんのよ。


 私、別にミミズや幼虫の話が気持ち悪いとは申しません。好きでは有りませんけど、エミリオ様の趣味をとやかく言う気は無かったので、話を聞く分には構いませんでしたわ。ただ、話題がそれだけという事がつまらなかったのですわ!


 私がエミリオ様のお好きな食べ物を尋ねれば、いつの間にかミミズの好きな食べ物に話題は変わり、エミリオ様と天気が良くてどこかに行きたいですわね、と話しているといつの間にか土の中にいる幼虫の話に話題は変わっていましたの。


 それが婚約してから今までずっとですわ! いくら私が嫌悪せずとも、つまらないと思っても仕方ないと思いますの。だから、内心は大喜びですけど、体裁は必要ってヤツですわ!

今回はエブリスタで公開している4ページ分を1話にしています。少し長めですみません。

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