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そんなわけで合同挙式・3

 結論から言いましょう。あれ、このセリフ何回目かな……。いえ、忘れましょう。気にしたらきっと負け、いえ、精神的な部分が削り取られるだけです。

 結論から言いますと、イーシュ様も流されました。エリジア様とお母様と私のお母様とイーシュ様が揃いも揃って私を着せ替え人形にしました……。着倒すってこういうことを言うのね、なんて言葉の意味を身を持って実感しましたけど何か⁉︎

 殆ど自棄になってイーシュお義姉様のドレス選びなんて積極的に関わりましたけど、何か⁉︎

 丸一日かけても室内の半分も終わらないからエリジア様の家でお泊まり会、ヤッタネ! とか言いながら翌日もドレス選びに一日を費やしましたけど何か⁉︎ それでも終わらずに再び公爵家にお泊まりしましたよ、それがどうかしましたか⁉︎

 そんな逆ギレの気分で三日目を迎えてますドレス選び。


「私はコレが良いです」


 全てのドレスに目を通し、アレコレと意見を言い合っていた皆さまの話を聞きながら、私は自分がいいな、と思ったドレスを手に取りました。あまり背が高くない私にマーメイドラインのドレスなんて大人過ぎて似合わないので、一日目で全て除外しました。もちろんスレンダーとエンパイアも除外です。似合わないんです!

 とはいえプリンセスラインも実は似合わないのですが。……裾を引き摺り過ぎて着られてる感が出ちゃうので。

 ということでAラインかベルラインを考えたのですが……


「裾を踏ん付けて転ばないといいですけど」


 という二日目に放った何気ない一言が、エリジア様のお母様にインスピレーションとやらを与えたそうで。


「だったら裾を短くしましょう!」


 というお言葉によりAラインのドレスの裾をザックリと切りました。メイドさん達が。

 ……えっ、いやいや、えっ⁉︎

 一着いくらなさるドレスですか⁉︎ どう見てもシルクだし、レースも高級品なのは私の目でも分かるのですが⁉︎


「このくらいならどうかしら」


 唖然とした私を他所にエリジア様のお母様がニコニコと仰って……私は頷くしかなかったのです。で。

 三日目の本日は、足首と膝の間くらいの丈に切られたドレスをお針子さん達総出で何着も作って下さり……その中で気に入ったドレスが、両肩が見えるものでした。……これも今回のドレス選びで、エリジア様のお母様が更に何かを思いついたように斬新なデザインよ! と仰って昨日までは確かにあった長い袖が両方消えてました……。

 確かに斬新です。

 今まで両腕は元より肩さえ出すドレスなど見たことが有りません。

 恥ずかしいことこの上ないのは確かですが、可愛いのも確かでした……。

 ということで、それを選びました。だって可愛いんですもの! エリジア様のお母様が大喜びしてました。良かったです。私のお母様も可愛いわ、と喜んでいますし、エリジア様もイーシュお義姉様も喜んでくれたからよしとしましょう。

 尚、イーシュお義姉様は、背が高いのでスレンダードレスで私と同じく両肩を出すデザインになりました。

 ……これだけで疲れてしまいましたが、その他に小物やブーケなど決めることがまだまだあることが信じられません……。

 あー、早く終わらないかしら、この準備期間。


「イーシュとルイーザが帰って来ないから私は死んでしまうかと思ったよ!」


 ドレス選びが終わりましたが、小物選びやブーケ選びも引き続きエリジア様達と決めていた私達……というか、帰してもらえなかった私達が我が家に帰ったら、お兄様が珍しく半泣きになって出迎えて下さいました。

 ……ああ、そういえばエリジア様の家でドレス選びしますのでって言い置いて家を出てから今日で十日でしたっけ……。

 ブーケ用の花の種類で一日があっという間に過ぎて行き、ドレスに似合うネックレスやイヤリングにブレスレットとティアラに靴と肩を出すことからグローブを長くするということまで……気付いたら十日も帰宅出来ていませんでしたわ……。

 そして何が恐ろしいってこれがまだ決定しておらず、話し合いの半ばだということでしょうか。


「お兄様、ごめんなさい、寂しい思いをさせてしまって」


 こういう時のお兄様には先に謝るのが必勝です。うっかり、経緯を話すことが先になると、相手の家に乗り込みかねません。……お相手がエリジア様の家、つまり公爵家だろうとお兄様は関係ない方ですからね……。

 さすがにアブスール公爵様が我が家を潰して来るとは思いませんが、イーシュお義姉様のご実家にあたる家になるわけですし。つまり親戚になるわけですからね、余計な争いごとは生まない方が良いのです。


「カルディス様。長きの間お会い出来なくて寂しかったのですが、私もカルディス様の隣に立つのに相応しい姿になりたくて、寂しさを押し込めて色々と準備をしています。それもこれもカルディス様に綺麗だ、と喜んでもらいたくて。誰もがあなたの隣には私が立つのが相応しいと認められたくて、という私の気持ちなのです」


 さすが、イーシュお義姉様! お兄様の扱いが上手いですわ! 寂しかったけれど、お兄様のためなんですよ、と言われてしまえばイーシュお義姉様に一筋なお兄様が文句など言えるはずもなく。


「う、うむ。そうだね。イーシュが私の隣に立つのに相応しいのは誰もが認めるだろうし反対なんてさせないけれど、綺麗な姿で隣に立ちたいって気持ちはとても嬉しいから、我慢しなくてはならないよね。だがっ。ルイーザは違うっ。ルイーザは帝国に行ってしまうではないか! 私の可愛いルイーザが帝国なんて遠い所に行ってしまうなんて! もっと私との時間を取ってくれてもいいんだよ?」


 イーシュお義姉様のお気持ちで何とか落ち着いてくれたかと思いましたが……お兄様、私のことは目溢しして下さる気はないのですね。


「兄上、姉上を困らせてはダメじゃないですか! 姉上は皆から綺麗だと認められて帝国一の花嫁だと言われなくてはならないんですよっ」


 泣いているお兄様の背後からディールが背中を撫でながら自身も涙を堪えてお兄様を諭してますわ……。これではどちらが兄か分かりませんわね……。


「あ、ああそうだな、ディール。そうだ。私達のルイーザは帝国一の花嫁だと言われなくてはならないのだよな」


 ……いえ、帝国一は無理ですわ。

 でもそれを否定したら折角泣き止みそうなお兄様が悪化しそうですものね。黙っておきましょう。


「そうですよ! そして、兄上と私でリオン様に姉上を泣かせたら即刻姉上と離縁してもらいますから、と約束させなくてはならないのです」


 ……あら? ディール? なんだか話が不穏な方へ向かっていませんこと?


「そう。そうだった。リオン殿には、私達のルイーザを泣かせたら離縁をしてもらう、と契約書にサインをしてもらわなくてはならなかったね。いや、帝国に行ったルイーザが泣いたことすら分からないのは、兄失格にならないだろうか。……私も帝国に行くべきか?」


 ええと……お兄様? 私が泣くこと前提になっていますけど?


「兄上。そこは私にお任せ下さい」


 ディールが可愛らしく胸を張っていますけれど、お任せ下さいとは?


「ディールに?」


 お兄様も目を瞬かせていますわ。私も目を瞬かせてしまいます。どういうこと?


「私も姉上と共に帝国に参ります!」


「「「は?」」」


 この場にいた私やお兄様だけでなくお母様にイーシュお義姉様に執事達使用人全員の目が点になりました……。

 ですが、ディールは周りの反応など気にせずに自分の考えを口にします。


「私はバントレー家の次男です。どこかの家に婿入りするか、平民となって身を立てるか、どちらかしか道は有りません」


 それは、そうですわね。

 お兄様も、う、うん、と頷いていますし、お母様も頷いていますわ。


「兄上が当主となった時、私はその手伝いをするくらいしか将来を考えていませんでした。でも今回、姉上の身に起きたことを私なりに考えた結果。もしかしたらバントレー家が無くなることもあるかもしれない、と思いました。もちろん、兄上のことだからそれは無いと思います。でも姉上はずっと結婚すると思っていた相手に裏切られました。だから絶対にバントレー家があるとは言えません。無くなってしまった時、私が帝国で身を立てていたら、父上と母上と兄上と義姉上が困ることはないのです!」


 ……なんて、なんて頼もしい発言でしょうか。こんな幼いディールがこんなにも立派なことを考えていたなんて、姉として誇りに思いますわ!

 ……でも、それもこれもエミリオ様のやらかしの所為でディールがこんなにも大人びた思考になってしまったかというと、心境は複雑ですわね。

 いえ、でもディールの成長と考えれば良いことですか? いえ、でもディールにこんな風に心配をかけたことはやっぱり良くないことですわよね。……それもこれもエミリオ様が悪いと思うのです。エミリオ様のことなんてどうでもいいですが、ディールの子どもらしさを失わせるなんてちょっとお恨み致しますわ!


「ディール。あなたの考えはとても立派だと思うわ。でも、あなたはまだまだ幼い。もう少しお父様とお母様の側にいて、お二人を安心させてくれないかしら。そうして……そうね、十五歳になった頃に、まだその考えが変わらないようなら帝国に来て勉強するとかやりたいことを探すとか、してみるといいのではないかしら」


 私はディールの決意を否定せず、でも時期が早いと諭します。


「ですが、それでは大好きな姉上がリオン様に泣かされたとしても分からないじゃないですか!」


 頬を膨らませて抗議するディールは、やっぱりまだまだ可愛い弟で安心します。そして泣かされることが前提になっているのはどうしてなのかしら。


「ディール、その、なぜ、私がリオン様に泣かされることが決まっているように話すのかしら」


 何か不安なことでもあるのかしら。


「決まってます! そうじゃないと、姉上がバントレー家に帰って来られないでしょう? 姉上は我が家にずっと居ればいいんです! 兄上とイーシュ義姉上と私の三人で姉上を幸せにしますから!」


 あ、ディールも結局のところシスコンでしたわね……。そうですか。つまり結婚しなくていいよ、ということですか。相手がリオン様なので一旦結婚して、直ぐに離縁してもらう気満々なんですのね……。

 ディールの本音にクスッと笑った私は、お兄様といい、ディールといい、いつの間にか一人称が“私”と大人びた形になっているくせに、シスコンが変わらないことにとっても安心しています。なんだかんだで私もまだまだブラコンなんですわ。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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