表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/45

そんなわけで合同挙式・2

「ええと了承しました」


 私はそれ以上は言いません。不敬で罪に問われるなら良い方でうっかり罪にも問われずあの世行きは嫌ですし。でも。

 エミリオ様のことは死んで欲しいとか思ってはないので。どうか騙されないように、願うくらいはいいでしょうか。婚約者としては、ちょっと……いや、かなりどうなの? というレベルで有り得ない人でしたけど。一応幼馴染の情はある、というか。不幸になれ、とは思ってないくらいには情はあります、かねぇ。

 私と関わらないでくれれば生きて幸せになっても別にいいかな、くらいには思います。関わって来るようなら……まぁ私の家族が再び色々とやらかすでしょうけど。


「わたくしも別にディバード殿下に不幸になって欲しいとまでは思ってませんから、まぁお元気で、くらいは願っておきますわ」


 エリジア様、私の内心を読み取られたような事を仰いましたが。きっとそれはエリジア様の本心なのでしょうね。


「まぁ、でも。わたくしが幸せだからこそ言えるのかもしれませんわねぇ。これでお相手が決まらずにおりましたら、あの元王子の所為で、とか恨んでいたかもしれませんわ!」


 エリジア様も殿下のことを婚約していた方だから不幸は願わないのですね! ……なんて感動していた矢先に、続けられたエリジア様のお言葉に、私の顔は引き攣っていないか、心配です。そうですか。自分が幸せなら心に余裕が出来るということですね。あー、でも、私も幸せだからエミリオ様に対してこんな穏やかな気持ちになれるんですかねぇ。

 家族の報復には驚きましたけど、それだけ私を大事に思ってくれていることを再確認出来ました。

 だからこそ、私はエミリオ様を恨む気持ちになれなかったのかもしれません。

 だって、確かに怒りの気持ちは抱きましたからね。でも、今の私は穏やかですし、何だったら遠くで幸せに、くらいの気持ちにはなってます。それもこれも、私の心に余裕があるからなのかもしれませんね。


「では、そんな気持ちを持たずに済むよう、私達は幸せ一杯になりましょうか!」


「まぁ! そうですわね! 婚約破棄なんて醜聞とか傷とか考えておりましたけど。そのおかげで皆さまと仲良くなったとも思いますし、新たな良き縁組が舞い込んだとも思いますもの。きっとあのまま結婚していたら、こんな風にルイーザ様とお話をしていなかったかもしれませんわね。幸せになりましょう!」


 確かに、流行しているからという訳の分からない理由で婚約破棄を突き付けられましたけど、そこからは怒涛の日々ではありましたけど、こんな風に仲良くなれる人が出来るとは思っていませんでした。

 波乱な日々でしたけど、そしてまさかリオン様と結婚することが出来るようになるなんて思いもしませんでしたけど。

 幸せになってみせましょう!

 先ずはお兄様達との合同結婚式で幸せ一杯の花嫁になってみせます!


 結婚式用に着るドレス。

 お母様が張り切っております。それはいいのです。イーシュ様も張り切っております。イーシュ様は、ご自分のドレス選びをして下さい。えっ? 私のドレス選びがしたい? 嬉しいですが、私もイーシュ様のドレス選びをしたいです。


「それが。私のドレスは義家族が張り切ってしまわれてな」


 ……どうやらエリジア様が義姉妹となったイーシュ様のために!

 と張り切っておられるようです。

 イーシュ様は、私だけでなく同年代の令嬢達の憧れの女性で有名ですが。エリジア様も実は憧れていたんですね。初耳です。

 エリジア様は淑女中の淑女として憧れる存在で、イーシュ様は男装が似合いそうな夢見る乙女が憧れる男性のような女性として憧れる存在で有名です。

 尚、イーシュ様自身は、淑女としてもエリジア様に負けないくらい素敵な方です。

 とはいえ、婚約者が居る人も居ない人も多くの男性と親しくするのは、はしたないと思われる風潮にあったノーディー王国でしたから、イーシュ様をキャッキャウフフと憧れの男性のように見ることで擬似体験のように思っていたのかもしれません。

 今は、例の婚約破棄の影響から私達が帝国貴族の子息方と婚約を結んだことにより、帝国の恋愛結婚観が浸透してきまして。……というかあっという間に浸透した所を見るに、おそらく皆さまが政略結婚より恋愛結婚に憧れていたのでしょう。だからあっという間に浸透したのだと思います。

 だからイーシュ様に対して恋愛の擬似体験のような言動は無くなりましたが、そのような体験が無くなってもイーシュ様が素敵な女性であることは間違いないので、人気の高さは変わりません。そんなイーシュ様が到頭お兄様と結婚する、ということで。

 エリジア様がどうやら皆さまにご満足頂けるような非の打ち所がない花嫁に、と意気込んでおられるそうです。

 流石、エリジア様……。


「でも、私もイーシュお義姉様のドレスを選びたいです……」


 だから私のドレス選びをしたい、と言って下さるイーシュ様の優しさは嬉しく思いますが、私もイーシュ様のドレス選びに参加したいなぁとしょんぼりしてしまいました。


「じゃあ、エリジアに頼んでみるよ」


 義姉妹だから、と呼び捨てを願ったエリジア様の願いを聞き入れて呼び捨てをしているイーシュ様。お二人が仲の良い義姉妹になられたことは嬉しいですが、イーシュ様とお兄様が結婚されると私もその中に入ることに。

 その中に入れるのか、という不安もありますし、イーシュ様をお義姉様と呼んでたのは私だけなのになぁっていうちょっとした妬みもあるし。なんだか素直な気持ちになれなくて。

 大好きなイーシュ様のドレス選びを大好きなエリジア様と出来るかもしれないのに、なんでテンションが上がらないのでしょうね。


「ふふ」


 私が自分の気持ちにちょっとモヤモヤしていると、イーシュ様が笑います。


「イーシュお義姉様?」


「いや。ルイーザとようやく姉妹になれると思ったら嬉しくて」


 そんな可愛らしいことを言って下さるイーシュ様にモヤモヤした気持ちは吹っ飛びました。


「はい、私もです! エリジア様と一緒にドレス選び頑張りますね!」


 そんな宣言をした翌日。

 イーシュ様から私の気持ちを聞いたエリジア様が、それなら……と私のドレスも一緒に選ぶ、と宣言をして私のお母様とエリジア様とエリジア様のお母様とが張り切ることになるとは予想もしておりませんでした。


 現在の状況を確認しましょう。

 私ことルイーザ。お母様。イーシュ様。エリジア様。エリジア様のお母様。

 ……総勢五人。結婚式用のドレス選びの真っ最中です。対象は私ことルイーザと、イーシュお義姉様の二人。

 それなのにエリジア様のご実家の公爵家の一室がドレスばかり。トルソーに掛けられたドレスは十着や二十着なんて可愛い数字では有りません。一室丸ごとドレスです。

 ……なんでこうなった⁉︎

 いや、オートクチュール(高級仕立品)は無理なのは分かってますよ? 時間が無いですからね。つまりプレタポルテ(高級既製品)です。でもですよ? うちは陞爵して侯爵家とはいえ、元は伯爵家。それもほんのちょっと前まで。だから、公爵家御用達のお店のプレタポルテなんて逆立ちしても購入なんて出来ないのですけれど⁉︎

 しかも、普段に着られるアフターヌーンティードレスでもちょっと豪華なイブニングドレスでもなく、(多分)生涯に一度のみ着るだけのドレスですよ⁉︎

 元が取れないと思うんですけどぉ!


「此方がドレスのお部屋ね」


 と、満面の笑みのエリジア様を拝見した時、なんか嫌な予感がしたんですよね。ドアを開けたらトルソーに掛けられたドレスドレスドレスで、やっぱりか! と思わず叫んでしまいましたよ……。


「無理、無理ですっ。エリジア様っ! 公爵家御用達のお店のプレタポルテのドレスなんて逆立ちしたってお金は出てきませんっ!」


 悲鳴混じりにエリジア様に抗議っぽい発言を不敬にもしたというのに、私が錯乱していたのが分かったのか、笑顔で不敬を不問にして下さった上に


「大丈夫よ! 我が家からの結婚祝いだから!」


 と仰いました。……結婚、祝い。そう、ですか。そうなんですか……。

 そういえば私、エリジア様にも公爵ご夫妻にも気に入られていましたね。私というより我が家が、でしたけど。我が家と縁付きたいからという理由でイーシュお義姉様を養女としてお迎えされましたものね。

 ドレスが結婚祝いになりますよね。そうですよね。……って、うっかり流されそうになりますけども!

 このドレス、全部、結婚式用のドレス! 普段使いにはならない逸品ですよ⁉︎ それをこの一室に入るだけ入れてあるってどういう事なんですか! 十着なんて多いけど、選ぶのだから仕方ないよね……なんて、ちょっと前まで会話していた私とお母様とイーシュ様の会話が吹っ飛びましたけど⁉︎

 そして、これを当然のように受け入れているお母様! ちょっとは遠慮というものをしましょうよ! エリジア様と公爵夫人とご一緒に自然にドレス選びを始めないで下さいっ!

 そして、それに便乗しないで、イーシュお義姉様っ! イーシュ様は、暴走しがちな我が家の皆を止めて下さる良心だと信じているので、流されないでお母様を止めて下さいませ〜!

お読みいただきまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ