そんなわけで合同挙式・1
青空です。快晴です。雲一つありません。
うふふふふ。
今・日・は・合・同・結・婚・式!
イェーイ!
………………。
ええ、自分で自分にツッコミますわ。テンションがオカシイって。テンションがオカシイのは仕方ないですよね。合同結婚式なので!
……ってそんなわけないでしょ!
急にそんな時間が飛ぶかぁあああ!
ふふふ……。単に私は現実逃避したいだけですわ……
「まぁルイーザ様どうなさいましたの?」
私の視線が泳いでいることに気づかれたのでしょう。エリジア様がニコニコとした笑顔で仰ってきました。えへへへへ……。エリジア様のご実家と私の大好きなイーシュお義姉様とが義家族になるために現在顔合わせ兼アブスール公爵家の家門である親族皆様へのお披露目会中なんですよね。
そこに私を含めたバントレー伯爵家も呼ばれてます。いや、ウチは伯爵家から侯爵家へ爵位が上がってしまいましたね、そういえば。なんででしょうね……。
「いえ、我が家が侯爵家なのが未だに馴染んでおりませんで」
現実逃避していた理由をソレにした私に、エリジア様が「まぁ!」 と驚いた後に「その程度の瑣末ごとは気にせずとも良くてよ」 と朗らかに仰いましたが、気にします! 気にするやつですよ⁉︎ エリジア様にとっては瑣末な事かもしれませんけども、我が家からすれば重大事項ですけど⁉︎
「エリジア」
「はい、お父様」
「何を話しているんだい?」
ああ、アブスール公爵様に騒がしいけどどうした? と遠回しに言われているんでしょうかぁ……。すみません、すみません。騒がしくして申し訳ないです。死んでお詫び……は出来ませんけれども頭を百回下げろ、と仰るならばそうしますからぁ! どうぞお許しを!
「ふふ。ルイーザ様が爵位が上がったことに慣れていないそうですのよ」
「ああ、なんだそんな瑣末なことか」
さすが親子ぉおおおおおお!
爵位が上がったことを瑣末なことって言い切ってきたぁ! 瑣末? 瑣末なことなんですかね⁉︎ 爵位が上がるって結構有り得ない事でしょう⁉︎ 降爵なら分かりますけど。爵位を維持するのだって大変なのに更に上がるんですよ? どう考えても瑣末なことじゃないですよね。余程の功績が無い限りは普通、簡単には爵位が上がりませんが。私の感覚がオカシイのでしょうか。
我が家、そんな余程の功績を上げた記憶が有りませんけども⁉︎ 一体、どんな功績を上げた褒美に爵位を上げて頂いたのでしょうかね⁉︎
スー……ハー。スウゥゥゥゥゥ……ハアァァァァァァァァァァ。
いけないいけない。落ち着かなくては。これでも私はバントレー伯爵家……じゃなかった侯爵家の一員。貴族は足を引っ張られないように感情を見せずに事の対処に当らなくては。
取り敢えず、公爵様ご一家がいらっしゃいますし、この顔合わせ兼親族お披露目会が無事に終わることを私は考えておきましょうか。
結果から言わせてもらいましょう。
無事に終わりました! 晴れてイーシュお義姉様はアブスール公爵家の養女と認められました! てっきりお義姉様のご実家が引っ掻き回すと思っていたのですが。大丈夫でしたね。
「お義姉様のご実家が引っ掻き回すか、と思っていました」
ポツリとウッカリ溢した本音をエリジア様が聞いていらして。
「ああ、ウフフ。其方は大丈夫ですわ。戸籍を抜いて我が家に移動する際に色々と揉めましたのでちょっと匂わせましたのよ」
聞いてはいけないことを聞いてしまいました。色々と揉めたって、絶対反発が強かったんじゃないですかね⁉︎ かなり強気にアレコレ言ったんじゃないですか⁉︎
そして匂わせたって何を⁉︎ ちょっとって、絶対ちょっとじゃないヤツですよね⁉︎
いや、忘れましょう。
私は何も聞かなかった。知らない。聞いてない。知らない。聞いてない。知らない。聞いてない。
何も想像していませんよ! 絶対匂わせた発言って公爵家の権力とか王家の後ろ盾どころかオキュワ帝国の皇族の存在のことでしょ、なんて指の爪程も考えてないですから!
……まぁイーシュお義姉様のご実家は、善人ではないけれど悪人でもなくて。まぁちょっと欲は強い上昇思考な所はありますが、貴族らしいといえば貴族らしいというか。イーシュお義姉様の家族なのに珍しい、というよりは、お義姉様の方がご家族からちょっと浮いた感じなんですよね。
お兄様との婚約も家格は釣り合うし、互いの家に利益がある事による政略的な関係という事で結ばれた婚約ですし。あちらの家も旨みがあるからお兄様との婚約に乗り気だったわけで、そういった意味ではきちんと貴族らしい考え方の家でしたね。……まぁ表向きなんですけど。
実際には、お兄様の一目惚れらしいです。正確にはイーシュお義姉様がご家族から疎外されていた……わけではなくて、きちんと家族として曲がりなりにも一員ではあったものの、子どもの頃から親や兄弟との価値観というか考え方が合わないことは薄々と気づいていたお義姉様の苦悩を、お兄様が気付かれたそうで。
まぁ伯爵位でも勢いのある我が家でしたし、お兄様は伯爵子息としての品位が妹の欲目を差し引いても有りますし。見た目もかなり良い方ですし。悪い噂は無いですし。そんなお兄様を令嬢方は放っておかなかったわけで。当然、お兄様は令嬢方にチヤホヤされて浮かれるような気質ではないので……というか、結果的に見る目が養われたというか。
まぁそんなお兄様だったから、なのでしょうね。イーシュお義姉様がご家族とご自分の違和感を覚えて悩んでいたことに気づいたようで、お兄様との婚約と言う形でお義姉様をご家族から離されることに成功したわけです。……というか、そういう綺麗な感じじゃなくて本当にお義姉様の一人だけど凛とした立ち姿に見惚れただけですけど。本当に一目惚れしただけで、悩みを解決すべく婚約……云々はただの後付けですけど。でも、お兄様と婚約して我が家に来ることになったお義姉様は、ようやく息がしやすくなったと仰ってましたし。
まぁ、エリジア様と義理の姉妹になれたことは、お義姉様にとって良かったことですから、色々揉めたこととかちょっとした匂わせは、見ないフリ、聞かないフリをしておきましょう。
お兄様とお義姉様が幸せならそれでいいんです。
そういえば、無事に終わった後でエリジア様が、我が家の陞爵(爵位が上がること)理由を教えて下さいました。エミリオ様のご実家が無くなってしまったことが一つ。……その原因、我が家ですけど。もう一つは帝国との強い縁組を設けたこと。あれですか、私達婚約破棄された者達が帝国の方達に見染められて嫁入りすることですか。
「あともう一つ、ルイーザ様が帝国の第二皇子殿下の婚約者である、あの、大国フレーティアの第一王女殿下に気に入られているから、というのも大きいわね」
「あー……なるほど」
クインティー様の持つ権力の大きさを改めて知ったというか、国王陛下、もしやウチが反乱を起こすとでも思っていらっしゃるのでしょうか。しませんよ、そんなこと。家族に何も無い限り。……多分。
「ですから、バントレー家を伯爵家から侯爵家に陞爵することにしたそうですわ。我が家も国王陛下から意見を求められたので賛成致しましたのよ」
まさかの賛成派が此処にっ!
そうですか。アブスール公爵家が後押ししてくれたんですか。そりゃあ他の貴族も追従しますよね。つまり反対派が居なかった、と。アブスール公爵家は、今回の元第三王子の一件で王家からかなり融通が効くようになったでしょうからね。
そういえば……
「婚約破棄を引き起こした皆様って……確か全員まとめて帝国に引き渡されたのでしたっけ」
「そうですわ」
もちろん、その中にはエミリオ様も居るし、ディバード元第三王子殿下も居る。
「何をしているのでしょうね」
私の疑問にエリジア様が満面の笑みで教えてくれた。
「あら。オキュワ帝国側から聞いてません? わたくし、ノーディー国王陛下より書状を賜りまして、存じておりますわ。なんでも、帝国が各地で起きる婚約破棄騒動に業を煮やして、属国である我が国の王族がやらかしたものですから、見せしめとして引き渡しを要求したそうなんですの」
帝国、というか皇帝陛下か皇太女殿下辺りが怒ってるということ、ですよね、ソレ。というか見せしめですか。
「見せしめ」
「ええ。ポルグウィウス第二皇子殿下が率いる帝国の騎士団の中には、大きく五つの団に別れるそうですの。帝国皇都内を守る第一騎士団やら帝国各地の領地を回る第二・第三騎士団などがあって、第四と第五騎士団は国境を守る騎士団らしいのですが、その中でも第五騎士団は大大陸の端の警備を担当していて、中大陸や小大陸を警戒しているようですの。で、今回の一件で見せしめとして帝国に行ったわたくし達の元婚約者様達は、その第五騎士団に組み込まれて大大陸の端の警備へと赴いたそうですわ」
サラリと話して下さるエリジア様ですが。
「それってあれですか。武術取り分け剣術の腕が無いと危険なやつですよね?」
「そうね。それに頭も賢くないと危険ね」
それは勉強が出来て成績良好、とかの賢さではなくて、敵味方が見分けられるか、とか、嘘を見分けられるか、とか、そういった形の賢さ、ですよね? 少なくとも直ぐに人を信じてしまうようなエミリオ様みたいな危機感の無いポヤッとした人だと、直ぐにカモにされる案件ですよね?
私がチラッとエリジア様を見ると、満面の笑みが全く崩れていませんでした。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




