(やり直し)パーティーは、波乱の展開⁉︎・4
「……ということが何度かあったので。大したことではないと思いますが、何となく最後まで居た方がいいのかな、と」
勘の話は気のせいとか、偶然とか、そんな言葉で片付けられてしまえばそれまでだし、大した事ない、と言われてしまえばやっぱりそれまでのことなのだけど。リオン様を信じて打ち明けてみました。
「そんなことがあったんだね。ルイーザとはそれなりに付き合いが長いけど、ずっと一緒だったわけじゃなかったからなぁ……。知らないことが他にもたくさんあるのかもね。今回のことも含めて、これからたくさん知って行けるって楽しみだな」
リオン様はまず受け入れてくれました。信じる信じない以前に、受け入れられる話だと思ってくれたのは、嬉しい。
「私もリオン様のこと、もっと知りたいです」
「うん、それと、この話。偶然で終わらせることも出来るけど、ルイーザの家族は偶然じゃなくて意味があるって思っているんだね。私は実際に体験していないから分からない。だから。今日何かある、と思って最後まで此処に居るよ。何があるのかな。偶然とか気のせいとか、そういうことじゃなくて。何か意味が有るんじゃないかなって私も思うんだけど、折角なら今日何があるのか見届けてみたいね」
さらに肯定してくださいました。凄く、嬉しい。気のせいや偶然で片付けられる話だけど。意味がある事なんじゃないかなって言ってもらえるのは、私を認めてもらえている気がして。
最後まで残っても本当に大したことないと思うけれど。
それでも残った方がいい、という私の勘を信用してくれるその気持ちが、嬉しい。
「取り敢えず、落ち着いたらクインティー様にご挨拶したいです」
「分かった。皇族の休憩場所へ行くのは畏れ多いからね。こちらに戻って来たらそうしようか」
そんな会話をしていた直後でした。
「失礼致します。リオン・バルセア殿のお隣にいらっしゃるのは、ルイーザ・バントレー様でお間違いないでしょうか」
夜会の会場をあちこち歩き回っている侍従さんのお一人がお声をかけて来ました。私が「そうですわ」 と返答しますと「どうぞこちらに」 と案内されます。一体なんでしょう?
リオン様と共に侍従さんの後を着いて行きますと、皇族方の休憩場所へ向かってます。
いやいやいや! な、なんでですか!
「あ、あの……」
ちょっと怯えつつ侍従さんに声を掛けると侍従さんが振り向いて笑顔で仰います。
「ポルグウィウス殿下の婚約者であらせられますクインティー殿下がぜひ、と」
ヒィッ。
クインティー様のお呼び出しでしたかっ。
いやでも、クインティー様! 帝国の貴族方の視線を集めて其方に行く勇気は、私には無いんですけど⁉︎
そうは思いつつも、クインティー様にお声掛け頂いているのにお断りも出来ません。
勇気を出して行くしかないですね……。
案内された先ではポルグウィウス殿下とクインティー様。それと皇帝陛下はいらっしゃらないもののパルジェニア皇太女殿下にペリュペ第一皇子殿下がいらっしゃいました。
「いらっしゃい、ルイーザ」
挨拶する前に親しげにクインティー様に声をかけられる。えええ、それ、有りなんですか? というか、私はどう反応すれば……?
「気楽にして構わぬ。パルジェニアじゃ」
ヒィッ。皇太女殿下に声をかけられてしまいましたっ!
「リオン、君の婚約者で合っている?」
ペリュペ殿下に尋ねられているリオン様が気安く頷いてます。そういえば元々侯爵子息ですものね。皇族方と顔見知りでもおかしくないですよね! 年齢は結構違いますけど。
「ええ。ペリュペ様。婚約者のルイーザ・バントレー嬢です」
「お、お初にお目にかかりますっ」
あ、なんか言葉を間違えた気がする……。ま、まぁいいか。
「そのように堅苦しくしなくて良い。我が義妹がそなたと友人になった、と言ったのでな。顔が見たかっただけ」
その“だけ”で注目を物凄くされましたけど⁉︎
「ルイーザ、パーティーは楽しんでる?」
内心でグルグルしている私に気づいたようにクインティー様がお声がけ下さる。ああ、優しい! ありがとうございます、クインティー様。
「はい、何とか!」
「ルイーザのご家族は先程帰られたみたいだけど、ルイーザは最後までいるの?」
「あ、はい」
さすがに最後まで居た方がいい、と何となく思ったことを言うのは憚られるから肯定だけしようと頷いたら、リオン様がバラしてしまいました! ソレ、言っちゃいます⁉︎
「ああ、じゃあルイーザの家系……バントレーだっけ? 魔術師の血を持っているのかもしれないわね」
リオン様の説明というか、私の「何となく」をリオン様が嬉々として話してるのを汗びっしょりかいて恥ずかしさでいっぱいになりながら、止めようがなくて泣きたい気持ちになっている私に、クインティー様がアッサリとそんなことを仰いました。
「ほへ?」
今、なんと?
驚いて変な声が漏れましたけど。
「ルイーザの血に魔術師の血があるんじゃない? って言ったの。そういう予感めいたものって偶に魔術師の中に居るのよね。自分の魔力と自然の魔力を使って、使う魔術って大地と風と火と水なんだけど。風の魔術を使う魔術師って、風という見えない力を利用するからなのか、人の表情を読むのに長けていたり空気を読むのに長けていたりするの。ホラ、険悪な雰囲気とか楽しそうな雰囲気とかあるでしょう?」
クインティー様の説明に、曖昧に頷く。険悪な雰囲気とか楽しそうな雰囲気は分かりますが魔術師の血とか、ナニ⁉︎
「ルイーザの家系にも、凄く昔に魔術師の血が入ったんじゃないかしら。だから表情を読んだり空気の違いを感じたりして、何となく何かがあるって感覚を無意識に覚えたのだと思うわ」
……ごめんなさい、クインティー様。私、あまり賢くないみたいで言っている意味が理解出来ませんっ!
「ルイーザ、理解してないみたいだけど、要するに、あなたのその感覚は、些細な事で、気のせいで片付けられる程度かもしれないけれど、気のせいじゃなくて大事なこと、と覚えておいて欲しいのよ」
クインティー様って……本当に私より年下なんでしょうか。発言が年上からの助言にしか聞こえないですけども。
そんなどうでもいいことを思いながらも、私の「なんとなく」は、大切にした方がいいことを理解しましたので、コクリと子どもみたいに頷きました。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




