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(やり直し)パーティーは、波乱の展開⁉︎・1

 既にリオン様の家であるバルセア家が侯爵から子爵に降爵されたことは、帝国貴族の皆さまはご存知のようで。リオン様の名前と私の名前が呼ばれて会場に入った時から視線は痛い。まぁ仕方ないんだろうな、と思う。アルアーニャ様がやらかしたんだもん。何か言われるのも視線が刺々しいのも分かってたこと。リオン様が気遣うように私を見るので、ニコリと笑いかける。いくら帝国の属国であるノーディー国とはいえ、貴族という括りは何処も変わらない。これでも一応伯爵令嬢。社交界の渡り方くらい心得ている。だから、リオン様が気に病むことは有りませんよ、という笑みだ。


 リオン様も理解して下さったのか微笑んでくれた。


 良かった。

 さて。

 社交界は殿方には殿方の戦いや駆け引きがあるように、女には女の、淑女らしい戦いや駆け引きがある。先ずは機先を制するとばかりに、リオン様のエスコートして下さる腕に親密さを増すようグッと更に絡ませてから、あちらこちらの視線へ笑顔を振り撒いておく。特に令嬢方には。

 元とはいえ侯爵子息だったリオン様は、洗練された仕草や知識や教養の深さを物語る会話も然る事ながら、やはり麗しい見た目で令嬢方はアプローチをしていたと思われる。優しいけれど時に強引に時に腹黒く社交界を渡り歩ける人ですし、ね。


 嫉妬溢れる視線の多いこと多いこと。

 ちなみに、リオン様はパートナーが必要な夜会は、それまではご親戚の中で夫を亡くされた方々(三人いらっしゃるそうです)を順番にエスコートされていたそうです。

 つまり、未婚令嬢のエスコートは、私が初めてということで。リオン様の夫人の座を狙っていたご令嬢方から嫉妬されるのはまぁ予想通りというもの。ですので、此方からその視線を向けて来るご令嬢方にニッコリと笑いかけて機先を制しているわけです。


 リオン様の婚約者は私ですよ、というアピールです。正式発表はまだですが、このような大々的なパーティーで、しかも大国の第一王女殿下を歓迎する(やり直し)パーティーでエスコートされている私ですから、正式発表が無くとも皆さまお気付きになられていることでしょう。

 さて、どれだけのご令嬢が直接喧嘩を売りに来て下さいますかねぇ。


 だってこの場は貴族の戦場なのですから。


 まぁでも、私から敢えて仕掛けないですけどね。牽制はしますけどそれだけです。クインティー様のためのパーティーを貶めたいわけでは有りませんので。売られたケンカは買いますが自らケンカを売る気はないのです。


 私と共にノーディーから帝国へいらした皆さまはご家族と入場されますが、帝国貴族ではないため名を呼ばれません。私の場合はリオン様の婚約者なのでお名前を呼ばれたのです。下手にお連れ様、なんて言われ方をしたら私がリオン様の愛人か何かに間違われると厄介ですので、きちんとノーディー王国の伯爵令嬢として名を呼ばれたわけですが。エリジア様達は、婚約者は居られないので帝国が招待した貴人扱いです。属国だから貴人扱いされずとも文句は言えないのですが、皇帝陛下はきちんと招待客として招いて下さっていたようなので、ノーディー王国来賓として紹介されています。


 ああ、開始が待ち遠しいですね……。尚、皇族方の入場の際にクインティー様はエスコートを受けていましたが、そのエスコート相手がおそらくポルグウィウス第二皇子殿下なのでしょう。遠目からでもポルグウィウス殿下だろうお方のクインティー様を見る目が柔らかいものでしかも片時も離れないくらい、見つめておられます。クインティー様は気付いておられるはずなのに涼しい顔。


 ……あー、確かにポルグウィウス殿下だろうお方はクインティー様に惚れてるって分かりますね、あの、し、せ……ヒイィッ。怖っ。怖いですわ!


 私がクインティー様付きの侍従となったキリルの話を思い浮かべながらお二人を見ていたら、クインティー様の後ろで無表情のビアンシェ様を見てしまいました。怖いです、アレ。背筋が凍り付くって表現はまさにあの顔をしたビアンシェ様を見た、今の私の心境ですわ!

 しかもポルグウィウス殿下だろうお方は、時々後ろを気にしていらっしゃる所から見て、絶対ビアンシェ様を恐れていますよねっ! ビアンシェ様はそんなポルグウィウス殿下だろうお方の態度に気づいていらっしゃるはずなのに無表情を貫いていらっしゃる……。オキュワ帝国の皇族相手に、視線一つで怯えさせるビアンシェ様……凄いお方……って思っていたのですが。


 上を行く方がいらっしゃいましたわ……。


 ええ。

 クインティー様です。


 クインティー様ってば、ポルグウィウス殿下だろうお方のちょっとした動揺っぷりとその動揺を誘っているだろうビアンシェ様のことに気付いておられるようで、チラリと二人の顔を見ただけで後は気にせずに澄ましていらっしゃるんです……。

 十五歳にしてあの堂に行った姿は、さすが大国の王女殿下ですわ……。

 あの、私達の前で見せて下さった可愛らしい振る舞いはおそらく素の姿なのでしょうが、遠目から見るクインティー様は王女という公の姿を皆に示しておられるのが凄いですわ。


 そして何より、ビアンシェ様とポルグウィウス殿下だろうお方のやり取りを無視してしまえる度胸というか強者ぶりというか……。


 クインティー様とは生涯の友人でいたい、と心から思います。クインティー様に着いていきますわ!


 皇帝陛下を初めて拝見致しましたが、さすが帝国の主とも言うべきでしょうか。威圧感と言いますか恐ろしさと言いますか。目に力が宿るというのは、かの方の目を言うのでしょう。あの目で見据えられたら犯してもない罪すら口にして何もしていないのに、罪を認めてしまいそうですわ。

 しかも表情が動いてないのでさらに怖い。本当に口を動かしているだけで無表情。口が動いているのが見えるからまだいいですが、見えてなかったらどこから声が聞こえてくるのだろうか、と首を捻りたくなるほど無表情で怖すぎです。

 でも。開会の挨拶を述べる低く力強い声は、この場にいる者達を魅了するかのよう。聞き惚れるような声ですが、一語一語が重い。重いというのは耳に入りやすいという以上に頭に残りやすいということ。或いは心に突き刺さると言うべきか。こういう所すら皇帝陛下の凄さを感じた次第です。


「ルイーザ、大丈夫?」


「大丈夫ですわ、リオン様」


 どうやら私が震えたことにリオン様はお気付きになられた様ですわ。でも寒さでは有りません。こういう方が国の主であることの素晴らしさに身が震えただけです。

 陛下の開会挨拶が終わった後は、皇族方へこちらが挨拶をします。公爵家から順に挨拶へ伺いますのでリオン様と私は後の方。エリジア様を筆頭にノーディーの皆さまは、また別で挨拶を交わすことに。全てが終わってから改めて皇帝陛下のお言葉として、ポルグウィウス第二皇子殿下とクインティー様との婚約が発表されました。やはりクインティー様をエスコートしていた方がポルグウィウス殿下でした。


 なんて言うか、クインティー様は皇帝陛下に声をかけられてもさすが大国の王女、でしたし、ポルグウィウス殿下と仲睦まじい姿を見せることでこの婚約は成功だと思わせる所が、会って間もないけれど凄く良く分かるので、クインティー様は母国でも素晴らしい王女様だったのだろう、と想像がつくのですが……。

 こう言ってはなんですが、一方でポルグウィウス殿下って、クインティー様の十二歳年上と伺ってますがデレデレしていて締まりがないと申しますか……。


「いいんですか、アレで? オキュワ帝国の第二皇子殿下ですよね? デレデレした顔をお見せして、威厳とか諸々大丈夫ですか?」 と誰かに確認をしたくなるくらいなんですが。


 そこでふと、キリルの話していたことをまた思い出しました。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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