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婚約を破棄するそうで・3

このページも他サイトの3ページ分です。

 とりあえず、お父様は体面を考えて、ドゥール侯爵家に抗議するでしょうけれど、そこまでは私の預かり知らぬ事。後はお父様にお任せしましょう、と、エミリオ様の事は忘れる事にした。


 そう思っていた私の心構えを、ガッツリ裏切ってくれたのは、朝食後ののんびりした時間に、先触れも無く突然やって来たドゥール侯爵夫妻によって、いとも容易く破られた。


 「お嬢様!」


 「どうしたの、リラ?」


 私付の侍女が慌てて私を呼ぶ。珍しく慌てる侍女に首を傾げてしまう。えー、何が起きたのよ。


 「ドゥール侯爵夫妻がいらっしゃいました!」


 「は?」


 えっ? おじさまとおばさまが?


 「先触れも出さずに、いきなり」


 私の心を見通したように、リラが続ける。


 「お父様は?」


 「エド様がお呼びになられています。私はお嬢様を、と」


 「お母様とお兄様とディールは?」


 「奥様もエド様が。カルディス様とディール坊っちゃまにもお話はしてありますが、何とも言えません」


 「分かりました。とにかく、お待たせするわけにもいかないから参ります」


 リラに言って、ワンピースの皺を伸ばしてみたり、首飾りをチェックしてみたり。それからリラに髪をもう一度整えてもらって、サロンへ向かった。お父様とお母様もちょうどいらっしゃったらしいので3人でサロンに入る。


 「ああ! バントレー伯。朝からすまない。ウチの馬鹿息子の仕出かした事を謝りに来ました」


 「ドゥール侯爵。随分お早いですな」


 お父様、先触れも無しにやって来た事にイラついていらっしゃるわね……。お母様は、とりあえず静観する気かしら。


 「本当に申し訳ない。エミリオから話を聞いて、慌ててやって来ました。ルイーザ嬢、馬鹿息子の事を許してやって欲しい。別に君が嫌いとかでは無いのだ」


 爵位は確かにおじさまの方が上ですけど、微妙に上から目線で謝って来ますわね。それに、私達は政略結婚で、恋愛感情なんて有りませんけど?


 「おじさま、おはようございます。おばさまも。おじさま、お言葉ですが、好きだの嫌いだの、私もそんな感情は持ち合わせておりませんわ。エミリオ様が婚約を破棄したい、と仰ったので承知致しましただけの事」


 丁寧に説明してやるが、まぁ簡単に言えば、アンタの所の馬鹿息子に恋しい気持ちなんか無いし、婚約破棄を願い出たのはアンタの息子で、私じゃないの。ってわけだ。


 「それは解っている。エミリオにはきつく言い聞かせておいた。謝罪もさせるが、ルイーザ嬢も寛大な心を持って、だなぁ。エミリオを受け入れて欲しい」


 要するに、謝らせるから許せ、と。


 「エミリオ様が反省されていらっしゃるのかどうか、私には判断出来かねますし、エミリオ様は恐れ多くも陛下直々にお声がかり頂いた結婚をお望みとのことですわ。私とエミリオ様は、そのような関係ではございませんもの」


 アンタの馬鹿息子に謝罪の気持ちが有るなら、今、此処にいるでしょうよ! という気持ちを込めて言ってやる。ついでに、王命結婚を望んでるらしいですよ、とも言っておいた。


 私の発言に、おじさまとおばさまが顔を真っ青にする。まさか、王命による結婚なんて、斜陽貴族に話が来るわけが無い。とでも言いたそうだ。


 「ね、ねぇルイーザちゃん」


 「なんでしょう、おばさま」


 それこそ小さい頃からの付き合いだ。おばさまから“ちゃん”付されても文句は無い。


 「あなたとは、小さな頃からの付き合いよ。どれだけ可愛がって来たか知っているでしょう?」


 つまり、可愛がってやったんだから、私に折れろ、と?


 「もちろん、おばさまには良くして頂きましたわ。ありがとうございました。覚えておきます」


 だから、私に折れろ、と言う前に、エミリオ様を連れて来て謝罪させてよ。言い出したのは、アンタの息子!


 「先程から黙って聞いていれば、ドゥール侯。我がバントレー家を馬鹿になさっておいでか? 件のご子息はいらしていない。エミリオが進んで謝罪すべき所を、ルイーザが悪い、と言っているように聞こえますが」


 おじさまとおばさまの謝罪なんだか、有耶無耶にしたいだけなんだかの発言に、お父様が怒ってるわぁ。しかも、婚約中は“エミリオ君”だったのが呼び捨てだし。


 「い、いやいや。ルイーザ嬢が悪いなどと。ただ、エミリオが謝るにしても、ルイーザ嬢が受け入れてくれなければ、謝るのも辛かろう、と」


 おじさまが慌てるけど、絶対に謝罪を受け入れろ。って言ってるわけでしょ? 受け入れないなら、謝らせないってこと? 随分失礼ね。


 「それは、謝って頂いてから、娘が判断することですわ。私共も昔から知っているエミリオ君の事ですから、よしなに計らいたいですが、全ては謝罪からじゃないのでしょうか。それも無しに、許せ、とは傲慢ですわね」


 あ。お母様、今回の件、実はお父様以上に怒ってらっしゃるのね。笑顔で釘を刺すお母様を久々に見ました。


 「いえ、そんな。謝らせますけれど、許してくれないなら、ねぇ」


 おばさま、本音が出まくってますよ。


 「そうですか。謝罪もせず、ましてやエミリオ君本人も連れて来ず、謝るから許せ、と。爵位が上だからと言って、随分酷い言い分でございますね」


 あー、お母様。本当に怒ってるわぁ。


 「まぁあああ。いくら領地が隣同士でお付き合いが長いからって、伯爵家が侯爵家に対して失礼ですわよ!」


 おばさま。爵位が上だからって、それ言う? 言っちゃう?


 「成る程。其方の考えは、よく分かりました。エミリオが婚約破棄をして来たわけだし、縁を切っても何の問題も無いという事で宜しいな?」


 お父様が、最終通告をした。これで、ドゥール侯爵家は、我が家からの持参金という名の臨時収入を絶たれたなぁ。しかもお父様、質問をしているようで、その実、二度と関わらないから、お前達も関わるなよ! ってやつだ……。


 「構いませんことよ! これよりドゥール家はバントレー家と一切の関わりを断ちますわ!」


 あー。おばさま、売り言葉に買い言葉で発言しちゃって。冷静さを失ったらお終いよ? おじさまの顔色を見た方が宜しいと思いますよ?


 「では、直ぐにお帰りを」


 お父様、言質を取ったとばかりに、即追い出しましたわ……。あーあ。ドゥール侯爵家、借金をどう返すんだろう? 私が嫁いで、その持参金で借金を返すつもりだったんでしょ? その借金も、おばさまの着道楽のせい、ですよね? どこからかお金をまた借りるのかしら。まぁ、もう関係ないけど。後日の支払いとやらで、借用書ばかりみたいだ、と聞いてるし……。頑張って返済して下さいねぇー。

小説家になろうの使い方を覚えるため、別サイトからの作品をまた投稿しようと思ってます。

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