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美少女の正体は・2

「さて、続けます。一応、一応! 第二皇子殿下は、クインティー様に側妃探しの件を謝って下さいました! が」


 うわぁ……めちゃくちゃ、力強いお言葉が。ビアンシェ様、相当恨んでますよね⁉︎

 いえ、恨みますよね。確かフレーティア王国って一夫一妻のお国柄……。あれ? 一夫一妻の国、だよね? その国の王女だよね? 大切に大切に育てられた尊いお方で、しかもまだ十五歳なのに、自分の役目をきちんと理解して遥々オキュワ帝国まで輿入れされて……


 み、見知らぬ者しかおらず、フレーティア王国から連れて来た者以外、誰が敵か味方か分からない帝国で、夫となるべきポルグウィウス殿下が、クインティー様を守るのが当然、なのに。そのポルグウィウス殿下が率先して、クインティー様の信頼を損なうような真似をしているって……


 コレってあれじゃないですか?

 私達の婚約破棄よりも深刻な問題、じゃないですかね⁉︎

 ビアンシェ様のお怒りは尤も、というより、ポルグウィウス殿下どころか皇帝陛下の首に剣を突き付けても咎められるような状況じゃないって言うか。ほんと、よく、オキュワ帝国が無事でしたね?


「一応謝罪は受け入れるしかないですが。クインティー様の覚悟も理解せずに、自分勝手な思考で側妃を選別しようとしていた第二皇子殿下のご意向に沿って、クインティー様の口利きで、側妃を迎えよう、というのがクインティー様のお考えです。それで、失礼ながら、ノーディー王国の皆さまにも側妃候補という可能性がある事をご理解頂けましたら、と」


 あー……。つまり、クインティー様は、お許しじゃないから、そんなに側妃を召し上げたいなら、せめて、クインティー様が納得出来る令嬢にして欲しい、という事ですか。


 うん、いや、話が重いな⁉︎


 オキュワ帝国で新しい婚約者探しをしましょう! キャッ!


 とか、そんな可愛い話じゃなくなっちゃいましたね⁉︎ 特にエリジア様とレミーナ様辺りが……。


「あ、でもね、これは強制じゃないから! いくらなんでもあなた達の気持ちを蔑ろにしてまで側妃候補にはしないわ。お家の事情云々とか関係なく。だから今、この場でお断りしても不敬とかなんとか、無いから!」


 ビアンシェ様の説明にクインティー様が補足する。つまり、側妃でもいいならポルグウィウス殿下を夫にするのはどうかしら? ということらしい。……私、伯爵家の子で良かったぁ! 家格が釣り合わないもんね!


「あ、ちなみに、別に爵位は気にならないから誰でも構わないわ。側妃候補だし。側妃に選ばれたとしたなら、妃としての勉強もすることにはなるだろうけど」


 伯爵家だからって安堵していたら、クインティー様に誰でもいい、とか言われちゃいました……。いや、私は断固拒否しますけども⁉︎ 取り敢えず、クインティー様が私達を訪ねて来られた理由は理解しました。そして、私達はエリジア様を中心に話し合いまして、側妃のお話は全員お断り、という形にしてもらいました。いや、エリジア様もレミーナ様もクリスティー様もソフィー様も、そんな気は無い、とやんわり言ってましたね。もちろん、私もです。


「あらぁ……残念だわ……。でも仕方ないわね。強制はしないって、言ったもの」


 心底残念そうにクインティー様が呟かれるので、私達は不敬で罪に問われる⁉︎ と焦りました。多分、お父様やお母様を含め、全員が冷や汗を流したのでは? 断ってイイとか言っておいて、やっぱりダメとかってやつですか⁉︎


「クインティー様、あまり皆さまをお揶揄いになってはいけません」


 クインティー様に苦言を呈して窘めたのは、クインティー様付きの侍女さんらしい。


「ナーシュ」


 プクリと頬を膨らませるクインティー様は、年相応に見える。


「ビアンシェも止めなさいな」


「ごめんね、ナーシュ」


 大人しそうな侍女さんに窘められるビアンシェ様。どうやら二人とも彼女に頭が上がらないみたい。


「皆さま、すみません。王女殿下は、その、イタズラ心のある方で、たんに皆さまを揶揄っただけです。悪気は無いのですが、偶にこうして人を揶揄って、相手の本質を見ようとするのが悪い癖で」


「ちょっと、ナーシュ! あなた、私が悪い子みたいだけど⁉︎」


 ナーシュ様の身も蓋も無い言い方に、クインティー様が益々膨れっ面を晒して、大国の第一王女の威厳とか凛々しさとかが……


「クインティー様、謝って下さいな?」


「わ、悪かったわ! その、残念なのは本当よ? ちょっと味方が欲しかっただけなの。私は一夫一妻の国から来たから。夫を他の女性と共有するなんて、理解は出来ても共感出来ないし。相手の方によっては、争いになるかもしれないでしょう? せめて仲良く出来る相手が良いかなって思って」


 ちょっと申し訳なさそうに肩を竦めるクインティー様は、愛らしい。そして、言っている事は良く解る。ノーディー王国は、一夫一妻でも一夫多妻でも構わないけれど、どちらかと言えば一夫一妻の方が多い。だから、夫を共有する感覚が解らない、というクインティー様の言い分も、相手によっては争いになるかもしれないと懸念する気持ちも、理解出来る。

 とはいえ、私を含め、皆、ポルグウィウス殿下の側妃は辞退したい気持ちは変わらない。


「側妃は辞退しますが、私達はおそらくオキュワ帝国に骨を埋める事になりましょう。ですから、クインティー様がお許し下さいますなら、友人として、生涯お支えしますわ。いかがでしょうか」


 エリジア様が、クインティー様の率直なお気持ちに共感してそう発言する。クインティー様は目を輝かせて。


「本当に? 本当に友人になって下さるの? それならば、お願いしますわ!」


 本当に嬉しそうに、そう仰った。私達もあまりにも高貴なお方の友人なんて、本音では畏れ多いけれど、これだけ喜んでもらえるなら、生涯の友になるつもりで、エリジア様の言葉に同意するように、そしてクインティー様のお言葉に寄り添うように、大きく頷きました。


「良かったですね、クインティー様」


 ナーシュ様に微笑まれて、クインティー様が頷かれる。うん、年相応の感じが可愛い方ですわ!


「そうだわ! ええと、皆さんが皇帝陛下に謁見を終えましたら、おそらく迎賓館に滞在すると思いますの」


 迎賓館⁉︎ そ、そそそそそれは、あれですわよ? 各国のトップ、つまり国王陛下とか、王族とか、或いは外交のトップとかが泊まる場所じゃないですか⁉︎ そんな所に私たちが泊まるって畏れ多いのですが⁉︎


「あ、あの、クインティー様、恐れながら」


 あ、エリジア様も戸惑っていらっしゃいますわ。そうですわよね。というか、アブスール公爵様ご夫妻並びにアブスール公爵家令嬢のエリジア様ならば分かりますが、我がバントレー家はしがない伯爵家ですけど⁉︎


「あ、申し訳ないけれど、今回のあなた方の婚約破棄騒動がわたくしの耳に入った時点で、わたくしが皇太女殿下に直接申し上げておりますの。あなた方をお助けしたい、と。ですから、あなた方が此処、オキュワに来ることが決まった時点で、あなた方の住まいが決まるまでは迎賓館で気兼ねなく滞在してもらうように取り計らった、と皇太女殿下から伺ったので、断る事は出来ませんわ」


 エリジア様が何を仰りたいのか解っている、とばかりにクインティー様がバッサリと退路を絶って下さいました。……って、えええ! 私達にクインティー様並びに皇太女殿下自らが、お心を砕いて下さったんですか⁉︎

 とても有難いですし、嬉しいですが、雲の上の方が二名も、ただの伯爵令嬢にまでお心を砕いて下さったなんて、畏れ多いというより、もう、倒れたいです……。


 でも、倒れたいと思っていたのは、どうやら私だけではなかったようで、私の家族全員は元より、ソフィー様とソフィー様のご家族であられるブレング伯爵家も、倒れたいと思っていらっしゃったようです。エリジア様とご家族のアブスール公爵家の皆さまと、クリスティー様とご家族のヴィルルク侯爵家の皆さま、そしてレミーナ様とご家族のドワイ侯爵家の皆さまは、さすがに倒れたいとは思わなかったようですが、でも、迎賓館なんて、そんな……というお気持ちにはなっていたようです。


 さすが、ノーディー国の公爵家・侯爵家の皆さまですわ。アブスール公爵家は、抑々ノルーディー国の財政の半分を担う、物凄いお金持ちですし、ヴィルルク侯爵家は派閥的にはアブスール公爵家の派閥で、ドワイ侯爵家はオキュワ帝国と密接な関係を保ってますからね。倒れるなんてことは無いですよね。レミーナ様のお母様、ドワイ侯爵夫人はオキュワ帝国の貴族の出身ですからね。寧ろそれを考えれば、迎賓館での歓待は当然なのかもしれませんね。


 なんて、遠い目になりつつ、クインティー様達が「じゃあ、またね」 と、軽やかに去って行くのを見送ってから更に数時間後。

 私達は皇帝陛下との謁見が叶うことを聞いて、謁見の間に向かいました。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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