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皆様と帝国へ。そして再会は不穏な空気と共に。・4

 カラカラという音と共に馬車が走る。正直なところ、お尻が痛い。長期に馬車に乗るために、古いシーツやらタオルやらを何層にも積み重ねてお尻の下に敷いているのにも関わらず、お尻が痛い。とはいえ、これは私がお嬢様だからの待遇であって、御者にはこんな待遇など無い。私だけじゃ心苦しいから、と言ったので多少はお尻の下に敷いているらしいけれど。お父様もお母様もお兄様もディールも口には出さないけれど、私と似たり寄ったりの状況。モゾモゾモゾモゾしている所を見れば、痛いのだと思う。


 そんな思いもかけない辛さの先に、国境を抜けてからおよそ1週間をかけて、オキュワ帝国の皇宮に到着しました。その壮大さは、我が国の王城が平民の家にも思える程、と言えばいいのか。あまりにも大きく広く絢爛で。私の語彙って死んでいたかしら? と思う程に何も言葉が出てこないものでした。その皇宮を守る門の一つに馬車は向かい、門兵と御者がやり取りをした後、馬車止めに到着させた所で、御者が合図を送って来てからドアを開けてくれました。


 お父様・お母様・お兄様・ディールの後で私もお兄様の手を借りて降ります。御者が国境を越えた時に聞いていた皇宮の門の一つは、他国からの貴人向けの門だそうで。御者と門兵もその辺のやり取りをして、あの門を潜ってこの場に降り立ちました。エントランスホールには、皇宮の12番目の執事様がいて、エントランスホール横のウェルカムドリンクバーで休憩を取るように告げられました。この後、エリジア様・クリスティー様・レミーナ様・ソフィー様がいらっしゃるようで、連絡が届いているそうです。


 良かった……。無事に帝国に来られたことも良かった、ですが。爵位が低いバントレー家が皆さまより後の到着では無礼にあたります。ソフィー様辺りは、同じ伯爵家じゃないの! 気にしない! とか仰有りそうですが、そういうわけにはいかないものなので。色んな意味で安堵しました。


 ウェルカムドリンクバーで、お父様とお兄様にはコーヒーという帝国で流行りの飲み物が。お母様と私とディールにはフレッシュジュースが配られました。フレッシュジュースはブドウの味がして、甘さと少しの酸味が疲れを癒やしてくれます。尚、お父様とお兄様のコーヒーとやらは、真っ黒な飲み物で、そのままで一口飲んでかなり苦かったようなので、砂糖やミルクを足す事を勧められていました。


 コーヒー、噂には聞いておりましたが、本当に苦いのですね。甘さを足したコーヒーは、今度は2人の口に合ったみたい。淹れてくれたのは侍女でしたが、初めて飲む方は皆、苦い、と戸惑われるそうです。慣れるとその苦味が良いそうで、何も入れずに飲む人も居るのだとか。眠気覚ましにも良いそうです。後は甘いケーキと共に何も入れないコーヒーは合うとか。


 成る程、甘いものが苦手な人でもコーヒーが有ると食べられるのかもしれませんね。


 そんな事を考えていると、ソフィー様とレミーナ様がご到着され、それから少し間を置いてクリスティー様、さらに間を置いてエリジア様がいらっしゃいました。皆さま、無事に帝国に到着されて何よりです。


 何やら扉の向こうが騒がしい気配がします。不穏です。不穏な空気がします。何だってオキュワ帝国の皇宮内がやたらと騒がしいのですか。不穏じゃないですか。チラリと皆さまを見れば、エリジア様が青褪めた顔色ながら気丈に立っておられますが、ソフィー様・クリスティー様・レミーナ様は3人で肩を寄せ合い扉を、いえ、その向こうの不穏な気配を見つめています。ちょっと、皆さまが怯えていますけど!


 帝国の護衛達は何をしていらっしゃいます⁉︎


「ーーを! ーー待ち、くだーー」


 何やら叫ぶ声が聞こえて来ます。此方に近付いて来ているようです。というか、結構厚みの有る扉なのに叫び声が聞こえて来ている時点で、相当の大声じゃないでしょうか。一体なんだと言うのでしょう。私の家族や皆さまの家族、特に男性は娘や姉・妹・母や妻を守っています。私もお母様と共にお父様とお兄様とディールに守られています。


「ーー待ち、下さいっ!」


 随分と声が届いて参りました。やっぱり此方に近付いているようです。しかし、大声は女性のもの。侍女かメイドか判りかねますが、皇宮の使用人があのように大声を出すのは、オキュワ帝国の名折れになってしまわないでしょうか。

 そんな事を思っていた私の目と耳で、扉がガチャリと開くのが見えました。


「お待ち下さい!」


 同時に聞こえて来た凛とした女性の声。先程から聞こえて来たものと同じようです。


「何故?」


「何故では有りません! 先触れも出しておらず、扉越しに入室の許可も得ずに開けては、相手方に無礼ですし、相手方が怯えるでしょう!」


「それは、そうだけど。でも、早く会ってみたかったのだもの。それにもう開けちゃったから良いじゃない」


「良く有りません。……あっ」


 扉の向こうで女性同士の押し問答が聞こえた後、私と同じ年齢くらいの美少女が顔をヒョコリと出して、あどけない顔……と思っていた所で、エリジア様がハッとされました。


「ご無礼を致しました」


 と、まさかのエリジア様の謝罪。

 えっ?

 何故ですか?

 無礼なのは彼方では?


「あら、バレてしまったようね」


 エリジア様が頭を下げたのと同時に、美少女があどけない雰囲気から他者を寄せ付けない高潔な雰囲気へと変わりました。……えっ、な、何事ですか⁉︎

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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