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皆様と帝国へ。そして再会は不穏な空気と共に。・2

「お話を戻しますわね。それでレミーナ様もご存知の通り、オキュワ帝国は現在、フレーティア王国の第一王女様がお輿入れでいらっしゃいましたの。で、お母様曰く第一王女殿下の歓迎パーティーをやり直しされるそうなのですが」


「「「「やり直し⁉︎」」」」


 あ、やっぱり皆さまそこに引っかかりますわよね。私も思いましたので。それについては、私も詳しくは存じ上げませんが。


「そのパーティーまでに帝国入りをして欲しい、との事なのです。我が国以外にも婚約破棄がいくつかの国で行われておりますでしょ? 帝国は我が国で起きた婚約破棄に関する騒動は既に耳にしているようですわ」


「やはり帝国はもう情報が……」


 エリジア様が恥ずかしいですわね、とポツリと零されました。でもエリジア様には何の落ち度もございませんわ!


「皆さまに落ち度など無かったでは有りませんか!」


 私に言われたくはないかもしれませんが、つい熱意を込めてしまいました。私の場合は、エミリオ様が流行に乗って、の所業でしたが。エリジア様の場合はディバード殿下が何も考えずにほかに好きな人が出来た(しかも、流行のように下位貴族のご令嬢ですわよ、お相手が)とのことで。


 クリスティー様・レミーナ様・ソフィー様のご婚約者様(元ですが)の婚約破棄理由だって、別に何の落ち度もありませんもの。


「帝国は理由まで把握済み、と?」


 エリジア様に尋ねられ私は頷きます。


「では、此方に非がない事をご承知の上での招待という事は」


 クリスティー様が光明を見出したかのような表情を浮かべます。


「はい。間違いなく帝国の貴族家との縁組です。故に、皆さまご家族で、との希望でございました」


 私が肯定しますと、皆さまが騒めきます。そうですよね。只のパーティーじゃないんです。フレーティア王国の第一王女殿下歓迎パーティー(やり直しの事は聞かなかった事にしましょう)に間に合うように、という事はそれに参加せよ、との事です。つまり、それまでの間に婚約を締結しましょう、という事です。


 だって、学園内のちょっとした交流パーティーとは違って(当たり前ですけど)正式な上にかなり格の高いパーティーです。婚約者が居ない場合は身内しかエスコートを頼めない案件のパーティーです。それなのにそのパーティーに家族で参加をするならば、父親にエスコートは頼めません。(母親同伴ですからね)男兄弟が必ず居るならともかく、そうでない場合は参加出来ない類のやつです。(伯父・叔父・従兄弟までが身内と見做されるとは思いますけど、従兄弟になると結婚も可能ですから、従兄弟が婚約者に思われかねないので、やはり父親か男兄弟まででしょう)


 それを家族でもない方のエスコートを受けてパーティーに参加するよう、と言うならば、それまでに婚約者を、という事になり。つまり急いで婚約を締結しよう、という事に他なりません。


「オキュワ帝国では、そんなに簡単に婚約が出来る程、優良な方がいらっしゃる、と?」


 エリジア様はさすが、ご理解が早いです。でもまぁそういう事です。オキュワ帝国と我が国は我が国が属国ですから力関係は当然向こうが上。そんな格上の国の貴族に婚約者が居ないのか? という疑問になります。


「レミーナ様はお解りでしょうが……エリジア様の疑問にお答えしますと、彼の国は恋愛結婚が盛んなのが一つ。もう一つは、帝国は皇族に限り、一夫多妻もしくは一妻多夫が可能なのです。とくに皇太子もしくは皇太女と皇帝あるいは女帝は、間違いなく。子を作らねばなりませんから、一夫一妻で子が出来ない時の事を考えると、一夫多妻か一妻多夫が法で認められています。それ故に、その、皇族の妃狙いの令嬢が多いので婚約者が居ない令息が多いのです」


 私の説明に、エリジア様はそういえばそうでしたわ、と納得したように深く頷きました。


 恋愛結婚推奨だし、皇族は一夫一妻じゃなくて良いなら、婚約者の居ない男女が多い事も理解頂けたはずです。ですから、私達に見合うお相手も直ぐに見つかるのではないか、と私は思います。向こうの方も納得頂けると良いのですけれどね。


 エリジア様を始め皆さま方のご理解を得たところで、リオン様の話に戻りました。レミーナ様の淑女らしからぬ表情の動き具合に、エリジア様が気にかかったようです。まぁそうですよねー。


「ねぇ、レミーナ。あなたがそんなに嫌悪感を表すなんてとても驚いたわ。淑女は微笑みを絶やさず、けれども表情を悟らせず、が、基本で有るのに。その……信用出来ない相手、なのかしら?」


 私をチラリと見たエリジア様。多分、私に遠慮してリオン様のバルセア侯爵家が信用出来ないのかはっきりとは尋ねられないのだろう。


「あ、いえ。ルイーザ様の方がバルセア侯爵家と縁が深いのだと思いますから、エリジア様が思い煩うようなことは、何も」


 慌てるレミーナ様。でも、こういうお姿を見てしまえば、益々エリジア様は気になさいますよね。どうしましょうか。私が他家のことをアレコレ話すのもいかがかと思いますが……。うーん。でも、多分、帝国に行ってしまえば、耳に入るだろう事はお話しておいても良いかもしれません。本来なら、リオン様のバルセア侯爵家にお伺いを立てるべきなのは理解しておりますが、否が応でも入って来る話、は、お耳に入れておくべきでしょう。


 バルセア侯爵家も我がバントレー伯爵家も含めて、不利益になるような話は口に出来ませんが、あの話は不利益も何も、帝国の高位貴族では有名ですし、ね。


「あの、エリジア様。レミーナ様。クリスティー様。ソフィー様。バルセア侯爵家についてですが話せる範囲……というか、おそらく帝国へ向かえば耳に入るだろう事を話す、という事で宜しいでしょうか」


 レミーナ様が私を気遣って下さるのを見て、私は切り出す。


「それはもちろん構いませんが」


 エリジア様が戸惑うように頷かれます。


「もちろん、私が話せる範囲です。リオン様に許可を得ていないわけですが、帝国へ行けば直ぐにでも耳に入るような話ですから。おそらくレミーナ様はご存知でしょうし、エリジア様も詳しくは聞いたことが無くともお耳にしたことが有るとは思いますが。アルアーニャ様は、バルセア侯爵家の令嬢という地位を得ては居ますが……物凄く複雑なのです。先ずはその事を念頭にお願い致します」


 エリジア様・レミーナ様・クリスティー様・ソフィー様がそれぞれ頷かれて私は一呼吸置いてから、話せる範囲内でアルアーニャ様について話を始めました。


「アルアーニャ様はバルセア侯爵家の令嬢ですわ。未婚ですので。どういう風に複雑な立場なのかという事は、そうですね……。きちんと知られているというか、公表されている事は、バルセア侯爵家の養女なのです。現当主様と養子縁組をされていますが。バルセア侯爵家とは血縁者で現当主様の嫡男・リオン様の《《姉》》という届けが出されています」


 バルセア侯爵家の血縁者だけど現当主様と養子縁組をしている。つまりまぁアルアーニャ様は不義の子なのです。皆さまもその事にお気づきになられたでしょう。


「但し、現当主様は奥方一筋です。それと第三夫人様の前ではアルアーニャ様の事は口にしてはならない、と彼方では言われてます。第三夫人様がご出席されるような夜会にアルアーニャ様が赴いても、アルアーニャ様は第三夫人様に挨拶すらさせてもらえない。という事のようです。ですから、レミーナ様がご存知の一件は、アルアーニャ様が何か《《やらかした》》のだと思われます」


 以上です、と私は口を閉じました。これ以上は許可なく話せません。でも、頭の良い皆さまです。現当主様が奥方一筋ですのに、アルアーニャ様は不義の子で有るならば、自ずと答えは導かれます。即ちアルアーニャ様は現当主様以外の方の不義の子、と。間違いなくバルセア侯爵家の血縁者ならば、当然、現当主様の奥方様の不義の子にも成り得ません。


 ここまで話せばエリジア様は第三とはいえ王子妃になられる方の予定でしたし、レミーナ様は帝国出身のお母上をお持ちの方です。情報は入っていらっしゃるはず。クリスティー様とソフィー様はご存知無いでしょうが……。

 第三夫人様が気に入らない、とご理解頂ければそれで。


「確かに複雑な生まれの方のようですね」


 クリスティー様がそっと呟かれました。元々の気質が穏和で物静かな方ですが、婚約破棄を宣言された元婚約者様に対し。

 おっとりと柔らかな雰囲気を消し去り、氷のような目を向けて毒舌を振るった、とソフィー様が仰っていました。尚、穏和で物静かなクリスティー様しかご存知なかった元婚約者様は、クリスティー様の毒舌に太刀打ち出来ない上に撃沈されたそうで、暫く立ち直れていないとかナントカ。


 普段大人しい人ほど怒ると怖い、とは良く聞きますが、イーシュ様といい、クリスティー様といい、そのようですね。

 まぁ私にとってはどうでもいい事ですけど。だって私、イーシュお義姉様もクリスティー様も怒らせるような愚を犯さないですもの!

お読み頂きまして、ありがとうございました。


もう少し更新スピードを上げられるよう頑張ります。

次話は4月の予定。

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