婚約を破棄するそうで・2
とりあえず、他サイトで公開しているページだけ公開します。今回も、他サイトで公開している3ページ分に当たります。他サイトで、週2日更新の予定ですので、こちらへの更新はもっと遅くなります。大体3ページ分ずつの更新をする予定です。他サイト優先ですので、しばらくお待ち下さいませ。
自室で、ソファーに座りボンヤリと机を見る。そして、ハッと思い出した。
「そうよ! キリルからの手紙だわ」
キリル。フレーティア王国・バードランド子爵の子息で、私とは又従兄弟にあたる。私の母とキリルの母が従姉妹で、幼い頃は2年に1度は会っていた。フレーティア王国とノーディー王国の距離が遠いので、2年に1度という回数は多い方なのよね。そのキリルからの手紙に、女好きの公爵様と、大切な仕事仲間が結婚した、と書いてなかったかしら。
私は急ぎ手紙を探すと、キリルからの手紙に、きちんと書いてあった。
女好きのテーランス公爵。その妻となったアルシュナー侯爵令嬢について。結婚式についても書いてあったわね。えーと確か、アルシュナー侯爵令嬢は、別にテーランス公爵を好きでもなんでもないから、他の女性が結婚式に乗り込んで来ても何とも思ってなかった、ね。
まぁそうよね。好きでもないなら、なんとも思わないわよね。寧ろ、感心してしまうわね。それだけモテるのね、と。解るわぁ。私、このアルシュナー侯爵令嬢様とお友達になれそうな気がするわ!
あ、そうだ。キリルに、私、婚約破棄されたって書いておきましょ。……ん? そういえば、あのおバカさん……エミリオ様が、婚約破棄が流行中って仰っていたわよね? もしかして、私以外にも婚約破棄をされたご令嬢方が居るって事?
「……そういえば、夜会の招待状が来ていたわね。えーと、どなたの夜会に出れば、現状を把握出来るかしら?」
エミリオ様の話が本当なのか、早速調査したくなって来た私は、届いている夜会の招待状を吟味し始めた。
先頃無事に社交界デビューを果たした私は、昨年、社交界デビューを果たされた同じ伯爵位のご令嬢のソフィー・ブレング様の邸で行われる夜会に決めた。……さすがにねぇ。公爵位の方達が、私と同じ目に遭われている、なんて思わないし、エミリオ様の話が本当だったら、侯爵位の方達なら有り得るかもしれないけど、爵位が上のご令嬢方に、婚約破棄されました? なんて聞けるわけが無いし。
それなら、先輩令嬢にあたるけど、昔から何でも話し合って来たソフィー様には、直接聞けるし、ね。ヨシ! この夜会をお受けしましょう!
ということで。参加の旨を記した手紙に、婚約破棄をされたので、エスコートはエミリオ様では無く、私のお兄様がする旨も記しておく。……エスコート無しに夜会に行くのは、マナー違反というより、恥ずかしいものね。婚約していない令嬢は、父親か男兄弟にエスコートを頼むのが通例なんだし。
「リラ。お兄様に、ソフィー様の邸で行われる夜会に参加するから、エスコートをお願いします。って伝えてくれる」
「畏まりました」
「婚約破棄の件も話しておいてね」
私付の優秀な侍女は、頭を下げて部屋を出て行った。もちろん、私が認めた夜会参加の旨を記した手紙を持って。きっと従僕に託してくれるだろう。
「さて。私は、キリルへの手紙を書かないと。ついでに我が国では婚約破棄が流行しているらしいわ、とも書いておきましょ」
婚約破棄をされて、傷心。……なんて可愛げが無い私は、話のつまらないエミリオ様のお守りをしなくて良い事に機嫌が良くて、この後の嵐を予想する思考を持っていなかった。
そう。婚約破棄をしてきたエミリオ様のご両親が、先触れも出さずに我が邸にやって来るなんて嵐を……。
その日の夜。帰宅されたお父様に、日中の一件を事細かく話した。エミリオ様が仰っていた事も含めて。
「爵位こそ上だが、ドゥール侯爵家は、侯爵家としては斜陽だというのに、随分我がバントレー伯爵家を馬鹿にしてくれたな」
あ。お父様、お怒りね。お父様は私の事をそれなりに愛してくれている。けれど、こういう時に出る言葉で分かる。私を娘として愛している、というより、自分の都合の良い駒として愛している存在だ、という事を。
まぁそれも仕方ないと思う。
我が国……その他の国もおそらく、だけど。基本的に長男が跡を継ぐ。跡取りに何かあったら、という事で次男も邸に残る事が通例。大概、無事に長男が跡を継いで、次男はそのサポートに回る。三男以降は何処かの家に婿入りだ。
それに対して娘は、男が生まれなかった家では、娘が婿を取って跡を継ぐけれど、我が家みたいに兄も弟も居る娘は、嫁ぐのみ。その嫁ぎ先は、家に利を運ぶ相手である。
我が家の場合、伯爵領がそれなりに潤っているから、私の持参金はそれなりに多くなる。だから、ソレ目当てで縁談を申し込んできた家は多いはず。その中で、お父様が我が家に利を運ぶ家を選んで決めたのが、エミリオ様のご実家であるドゥール侯爵家なのだ。
つまり。お父様が言いたいことは。
我が可愛い娘との結婚が気に入らないだと⁉︎
という気持ちではなく。
我が家の持参金が目当ての家計が火の車である侯爵家が、良くも我が家を侮辱してくれたな⁉︎ あと、我が娘の事も馬鹿にするとは、許せん!
という気持ちであるということ。まぁ、典型的な貴族の父と言ってしまえば、それまでね。
元々本作品は、他サイトで執筆中の【王命結婚からの条件付生活と周囲の思惑】という作品からの派生作品です。主役は、エミリオが言っていた「テーランス公爵」と「その妻」です。ご興味ある方はご連絡頂ければ、他サイトの方をご案内致します。お問い合わせが多い場合は「なろう」で公開する事も可能です。