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ドゥール侯爵家の慰謝料・1

 「それって……」


 エドの含みを持たせた言い方に、もう本当に冷や汗が止まらない。


 「奥様が……」


 あああああ! やっぱりぃいいい! お母様が、我がバントレー家のラスボスがぁあああ! やらかしたんですわねぇえええ! お母様! 何をされたんですのー! というか、お父様もお母様もお兄様も! エドのこの煤け具合を見て下さいましー!


 内心で叫びつつ、先を促しました。知らない、なんて言いたくない。知らなければならない。だけどっ。


 「奥様が、直接ドゥール侯爵家へ乗り込んで、剣を抜き、その曇りなき白刃で。容赦無くドゥール侯爵と子息のエミリオ殿の髪の毛を丸坊主にされ……ドゥール侯爵夫人の大切な御衣装を尽く、唯の布切れにして、宝石を根こそぎ売り飛ばし……更にはドゥール家の使用人を全て破格の給料差で一時的に我がバントレー家へ、と、雇い入れました」


 お母様……。血も涙も無い仕打ちってこういう事だと思いますわぁ……。意識が立ち去りかけましたが、それどころでは有りませんでした。

 あー、お父様もお母様もお兄様も、報復が苛烈でしてよ……。


 「お父様もお母様もお兄様も……エドがハゲたらどうしますの……」


 「お嬢様。私はハゲにはなりたくないです。いえ、どちらかと言えば、胃がやられそうでございます」


 エドの煤けた顔に、非常に申し訳なく思う。……そう、ですか。禿げじゃなくて胃ですか。そうですわね。胃を壊す事も有り得ますわね。


 「エド」


 「はい」


 「苦労をかけますわね……」


 「旦那様と奥様の過激さは前から解っておりますから。寧ろ、ドゥール侯爵家があれ程愚かだという事の方が、如何かと……」


 私のシミジミとした発言に、エドが辛辣な評をする。ああ、うん。さすが、我がバントレー伯爵家の執事ですわね。


 「エド。賢ければ、エミリオ様が私と婚約破棄などしませんわ。更にはおじさまとおばさまも我が家に乗り込んで来ておいて、ケンカを吹っかけるわけが無いでしょう?」


 私が指摘すれば「確かに」と、エドは視線を彷徨わせた。何しろ、3人の報復は血も涙も無い。少なくともエミリオ様と私が婚約していた期間くらいは、ドゥール侯爵家と我が家は良好な関係を築いていた。それなのに。


 まるで情のない仕打ち。だからこそ、我がバントレー伯爵家は侯爵家とはいえ、落ち目のドゥール家より富がある。


 本当に、爵位くらいですわね、あのドゥール家がウチよりも優位に立てるのは……。大体お金が無いから私の持参金目当てでしたはずなのに、それを忘れて婚約を破棄するエミリオ様。更にそれを忘れてウチを見下したおばさま。妻と息子を御せなかったおじさま。


 ……あら、こう考えますと、当然の報復かもしれませんわね?


 「お父様達の報復がやり過ぎですわ、と思っておりましたけど。お金が無いのにアレコレ買うおばさまの品物を売ってしまうのは当たり前ですわね」


 「まぁ左様でございますね」


 「屋敷ごと買い取ったとエドは言いますけど、そのお金はお兄様、どこから出したのかしら?」


 「以前、カルディス様が発明された魔力を利用した持ち運び出来るランプを覚えていらっしゃいますか?」


 「ええ。従来の蝋燭ではあまり明るくなかったのに、お兄様が魔道具を発明してかなりの明るさになったアレですわね? なんでも夜道を急に駆ける事になった馬車に大好評だとか」


 「その売り上げ金と、隣国の帝国からの報奨金で」


 ……お兄様、そんな大切なお金を私のために、お遣い下さったのですね。お兄様の妹愛を実感致しますわ。お兄様が帰っていらしたら、お兄様を甘やかしてあげても良いかもしれませんわね。

お久しぶりです。前回の更新が12月……。相変わらずの不定期更新です。


お読み頂きまして、ありがとうございました。

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