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帝国・オキュワ・3

 「お嬢様」


 「なぁに?」


 マナーの先生からお褒めの言葉を頂いて、ホッと息をついていた私に、エドが呼ぶ。


 「その。非常に言い難い事ですし、お耳に入れたくない事なのですが」


 何ですの、その前振りは。聞きたくないですわよ?


 「何かあって?」


 「カルディス様が暴走しました」


 ……。…………。………………。き、聞きたくなかったですわぁ……


 「お、お兄様は、な、何を致しましたの……?」


 私がエドに恐る恐る尋ねれば、エドは目線を泳がせて無闇に咳払いをしています。そんなエドの動揺っぷりで、何となく相当な事をやらかした気がします。


 「カルディス様は……」


 エドの囁く声に、私も唾を飲み込みます。令嬢として、はしたなくても仕方ないですわ。見逃して下さいまし。


 「お兄様は?」


 「ドゥール侯爵夫妻とご子息に」


 お兄様ぁ! エミリオ様だけじゃなく、おじさまとおばさまにも、何か仕出かしたのですかぁ? 私はその先を聞きたくない、と耳を塞ぎたくなります。


 「可愛い妹を傷付けてくれた礼だ、と仰って。ドゥール侯爵家の王都の邸ごと買収されましたっ!」


 エドが一気に、ヤケクソのように叫びましたが。あああああ!


 お兄様ぁ! なんていう暴挙に出られましたのーっ!!! 私、そんな事は望んでいませんわぁ!!!


 「エド」


 「はい」


 「それをやったの、お兄様なのね?」


 「残念ながら」


 私が確認すると、エドはバントレー伯爵家の冷静沈着な執事という評をどこかに置き忘れたかのように、お兄様のやらかした事だ、と、遠い目で頷いてます。


 お兄様、邸の買収って、そんなお金、どこから出したんですの?


 「お父様じゃ……」


 普通に考えて、お父様ならそんなお金も有りそうですが。


 「旦那様、で、ございますか……」


 エドは、更に遠い目をしています。えっ、お父様も何かやらかしたんですの⁉︎


 「お嬢様。旦那様の事をお話しても、宜しいでしょうか?」


 その改まり具合に、深呼吸をする。嫌な予感パート2ですわ……。


 「お父様のやらかし具合は、お兄様と同じくらい、かしら?」


 話を聞く前に、私は予防対策を講じてみました。私の予防対策は、エドの憐みの目に拠って、脆くも崩れ去った事を知りました……。


 「旦那様は……ドゥール侯爵家一族を全てキリキリと締め上げていらっしゃいましたよ……」


 あああああっ! お父様も随分とやらかしていますわぁ! エドのこの煤け具合、バントレー伯爵家の令嬢としても、お父様の娘としても、お兄様の妹としても、謝罪致しますわぁー!!!


 「エド……」


 「何か」


 「私、エドに申し訳ないですわ……」


 「良いのですよ、お嬢様。旦那様とカルディス様の暴走くらい、大したことでは有りません。それに、お嬢様を傷つけたドゥール侯爵子息には、私共使用人一同腹が立っておりますし」


 私が申し訳なさでいっぱいの顔でエドに謝れば、エドはそんな事を言ってくれる。……そう。皆、私の為に怒ってくれたのね。


 皆の優しさが嬉しい。


 ……なんて思っていて、私はウッカリ聞き流しかけた。アレ? 今、エドが恐ろしいことをサラリと言わなかったかしら?


 「ね、ねぇエド」


 「はい」


 「今、エドはなんて言いましたの?」


 「お嬢様を傷つけたドゥール侯爵子息には私共使用人一同腹が立っておりますし」


 「それは嬉しいのよ。でも、その前」


 私がその前、と言った瞬間のエドの表情は、最早哀愁を帯びて黄昏ています。嫌〜な予感、再び。


 「旦那様とカルディス様の暴走くらい大したことでは有りません」


 その、言葉。

 それって、お父様とお兄様以上にやらかした方がいらっしゃる、という事では無いでしょうか……。


 私の背中に冷や汗が伝った。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

前回更新からそんなに月日は経ってないと思っていましたが……3ヶ月経ってましたね。のんびり更新続きます。

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