帝国・オキュワ・1
オキュワ帝国という国は、エブリスタにて公開中の拙作【王命結婚からの条件付き生活と周囲の思惑】という作品に出てくる国です。今話・次話・その次の話に出てくる帝国の皇帝の子ども達の名前はそちらの作品に出てくるキャラです。
オキュワ帝国皇帝には、皇妃との間に3人の子がいる。男女問わず、第一子が皇帝に即位するため、次代は女帝という事になる。
彼女の名前はパルジェニア皇太女。直ぐ下に第一皇子・ペリュペ。その下に第二皇子・ポルグウィウスが居る。更に現皇帝には側妃が3人いて、それぞれに子どもも居るので、現在、皇太女を含む皇女が5人。第一・第二皇子を含む皇子が4人の計9人の父親だ。
その現皇帝の皇妃は、ノーディー王国とは別の属国では無い隣国である王国の王女だ。政略結婚ながら、穏やかな関係である。側妃の3人は帝国の貴族出身で、皇妃を慕って支えているので、足の引っ張り合いは無い。
これは、偶々というわけではなく、それなりに続く帝国の後宮で育まれた女達の知恵だ。その3人の側妃のうちの1人が侯爵家の出身で、皇妃以外で皇子を2人産んだ女性でもある。
帝国では、正妻を「皇妃」と呼び、側妃を其々「第一夫人」「第二夫人」「第三夫人」と呼ぶ。侯爵家出身のその女性は3番目に側妃になった事から「第三夫人」と呼ばれていた。その第三夫人は、まだ側妃に迎えられていなかった少女の頃、隣国で属国のノーディー王国へ留学していた事があった。
その際に仲良くなった学友が、バントレー伯爵夫人その人である。
ルイーザが言っていた「あの方」とは、この第三夫人の実家の当主である方の息子である。第三夫人の兄が現在当主を務めていて、ルイーザが頼るあの方は、その跡取り。名をリオン。同じ侯爵家でも当然属国のノーディー王国の地位とは差があるので、エミリオのドゥール侯爵家とは格が違う。
言うなれば、ノーディー王国ではドゥール家は侯爵だが、オキュワだと家格からすると、ドゥール家は伯爵位程度だ。それもソフィーのブレング伯爵家より、もしかしたら家格が落ちてしまうかもしれない。没落しつつある侯爵家なので。
「ルイーザ」
「あら、お父様。お帰りなさいませ」
ルイーザがリオンに連絡を取りたい、と言った所為なのか、それとも偶然か。お父様はお母様とのデートから早く帰られた。……お母様は満足されているし、偶然なのね。
「ただいま。エドから聞いたが、エミリオ君が来たって?」
「ええ。それでねお父様。ちょっと色々疑問に思う事があって。リオン様とご連絡が取りたいの」
お父様は途端に眉間に皺を寄せました。何故かしら。お父様ってば、リオン様のお父様と仲良しでいらっしゃるのに、リオン様の事を口にすると、最近、こんな表情ばかりだわ。
「その疑問、というのは、彼に訊ねないと分からない事なのか?」
「いいえ。お父様に訊ねても、ちょっと難しいとは思いますけれど」
「私で難しい事なら、彼だって難しいだろう⁉︎」
私がお父様より、リオン様を頼っている事が嫌なのかしら。でも、リラの何気ない一言によるこの疑問って、やっぱりお父様じゃ分からない事だと思うのよね。
「では、お父様にお尋ねしますわ」
私がお父様を見れば、デレッとした表情で私を見る。
「なんでも聞いてごらん」
「では。お父様、近頃、婚約破棄が流行をしているとご存知?」
「ああ、そうらしいな。ウチだけじゃないとか」
「そうですの。では、何故、流行をしているのでしょう?」
「何故?」
お父様は、私が婚約破棄をされた事を思い出して、忌々しげに舌打ちをしていたけれど、私の疑問に首を傾げた。
「私、ソフィー様のお茶会でオソロシイ事を耳にしましたわ」
「オソロシイ事?」
「ディバード殿下とエリジア様が婚約破棄をされた、と。殿下がそのような愚行を犯した事で、今回、婚約破棄があちこちで行われているそうですわ。ご存知でした?」
私の話に、お父様の顔色が悪くなっていく。やはりお父様は、ディバード殿下とエリジア様の事をご存知無かった。だから、お父様に尋ねても分からない、と思ったのに。これでどうして、あの方よりご自分の方が詳しいと思ったのかしらね。
「ルイーザ。お父様は物知らずだったよ……」
「お分かり頂けて良かったですわ」
落ち込むお父様に、悪いけど慰めなんてしませんわよ。そういった情報も持つのが貴族なのですから。知らないお父様が悪いのでしてよ。
お読み頂きまして、ありがとうございました。
随分と久しぶりの更新となりました。




