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婚約を破棄するそうで

ここに久々に投稿しますが、直ぐ放置かもしれません。「なろう」の投稿方法が未だきちんと理解出来ていないためです……。


他サイトで公開中の作品です。向こうがメインなので、こちらは思い出した時に投稿する感じになります。


それでも宜しければ、よろしくお願いします。

 「ルイーザ・バントレー。君との婚約は破棄させてもらう」


 久しぶりに会う婚約者に、挨拶もそこそこにこんな事を言われるなんて、思ってもみなかった。


 「どういう事、でしょう?」


 私は首を捻る。バントレー伯爵家長女である私と、お相手のドゥール侯爵家次男であるエミリオ様との婚約は、私が8歳。エミリオ様が10歳の時に、親同士が決めたものである。


 貴族の結婚なんて、家同士の結婚なのだから、破棄する方も、される方も、家の恥になるのだが。


 「そのままの意味だ」


 「そうなのかもしれませんが、理由をお伺いしておりますの」


 ドヤ顔のエミリオ様に、扇で顔を隠しつつ、溜息をつく。エミリオ様の家は騎士を多く輩出しているのだが、エミリオ様も例に漏れず、騎士団に所属している。10歳から学院に通い、15歳で卒業するまで、勉学と基礎体力作りに励む貴族の男子。エミリオ様もそうだったのだが、勉学はあまりお出来にならなかった、と父から聞いている。


 それはともかく。学院を卒業して、騎士団に入り、頭角を表して2年目のエミリオ様。今年、社交界にデビューした私を待って、来年には結婚式を挙げる予定になっている。というのに、いきなり理由もなく、婚約破棄とは、どういう意味なのか。


 そこを知りたい。


 「知らないのか? 国内の流行の最先端は、“婚約破棄”なんだ」


 更なるドヤ顔。……うん、馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけど、ここまでとは思わなかった。流行の最先端が婚約破棄だから、自分達も婚約破棄をする、と?


 「それは存じ上げませんでした」


 私が素直に知らない、と言えば、胸を張って偉ぶった。


 「遅れているなぁ。ルイーザは」


 「そうですわね。エミリオ様は良くご存知でしたわね?」


 私が褒めれば、調子に乗ったエミリオ様が話し始めた。


 「うむ。遠国のフレーティア王国で、テーランス公爵という方が居てな?」


 「……はぁ」


 「それはそれは女性にモテるそうなのだが、この度、王命によってご結婚された、とか」


 ……はぁ。話が見えない。私は相槌を打つのもやめて、頷くだけにしておく。どうせ、こういう時のエミリオ様は、勝手に喋る。


 「その際、テーランス公爵の結婚を残念がる未婚の女性達が結婚式に乗り込んだ、とかで、あわやご破談になるところだったが、その妻になった方が美しいだけじゃなく、聡明で、そこまでモテるテーランス公爵と結婚出来る事を誇りに思ったらしく、許されたそうだ」


 ん? ……その話、どこかで聞いたわねぇ。しかも私が知る話とは、全く違う実状だったような……。


 「それを聞いた我が国の男達は、親同士が決めた婚約ではなく、王命による結婚なら、そういう素晴らしい女性を娶る事が出来るんじゃないか、と思う者が現れてな。そこから王命で結婚を決めてもらうために、婚約破棄をする者が現れたんだ。そして現在では、流行の最先端が婚約破棄だ」


 ……ああ、うん。馬鹿ね。エミリオ様だけじゃなく、他の男達も馬鹿だわ。


 「成る程。それで、私達も、という事でございますか」


 「そうだ」


 「承りました」


 別にエミリオ様の事を愛してるだの恋しいだのと思っていないので、あっさり承諾した。


 「ルイーザ、君も俺と婚約破棄をして辛いと思うが」


 「いいえ、全く。それよりもドゥール侯爵子息様。今、この時より、私、ルイーザ・バントレーとエミリオ・ドゥール様の婚約は破棄されたので、名を呼ぶのはお止めになって下さいませ」


 なんだか悲劇の主人公的な事を言い出したエミリオ様の言葉をぶった切って、私は笑顔で言ってのけた。


 「あ、ああ」


 「それでは、ご機嫌よう。私の方から父には話しておきますので、ドゥール侯爵子息様も、お父君にお話下さいませ」


 そこまで言うと、我がバントレー伯爵家のサロンにまだ居るエミリオ様を、同席していた執事と侍女に目線で促して追い出した。


 「あー疲れた」


 「お嬢様、はしたない」


 「あら、エド。私はソファーに座っただけよ」


 さっさと追い出して戻ってきた執事が溜息をつくので、私は眉間に皺を作る。まぁ確かに、ボスンッと音がする程、思いきり座ったから、はしたないと言えばはしたないのかもしれないけど。


 「お嬢様」


 「はいはい。淑女にあるまじき行為だったわね。でも許してよ、これくらい。私、婚約破棄されたのよ?」


 「落ち込んでるようには見えませんがね」


 エドの指摘には声を立てずに笑っておく。……何しろ、これでお守りから解放されたのだ。婚約破棄されて悲しい? とんでもない。こんな喜ばしい事なんて他に無い。エミリオ様と話す事が、苦痛の日々だったのだから。


 何しろ、話題と言えば、自分自慢か騎士団の団員か。というくらいで、とてもつまらない。話のつまらない男の相手は苦痛でしか無いのだから。これで、晴れてエミリオ様のお相手はしなくていい!


 晴れやかな気持ちで、私は自室に戻った。

他サイトで公開中の3ページを1ページにしました。長くてすみません。読みにくければ、フェードアウトして頂いて構いませんが、読むのをやめます。というご報告は無しにしてもらえますとありがたいです。

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