アリスと笑い猫
最悪だ。
入学初日から寝坊するなんて笑えない。目覚まし時計と布団を恨んでやろう。...あと昨日の夜にやっていたお笑い番組も恨もう。なんでお母さんは起こしてくれないんだと、起きないのが悪いなんてひどいことを言うもんだ。
「…あれ?」
まずい。方向音痴なの忘れてた。ここどこ?…あーもう、寝坊して迷子で遅れたなんて、なんか笑えてくる。誰か道知ってるかなどうかな?うーんと、どうしよう。うーん。
「迷子?」
「そりゃあ、迷子ですけど。」
「道こっちだよ。」
「え、ありがとうございま、す?」
ふと、声のする方に目を向けると、ニコニコ、いや、にやけていると言った方が正しいのか、とりあえず、男の人が立っていた。同じ高校の制服のようだけど、もしかして同級生かな?
「初日から迷子って笑うよね。」
「あなたも迷子ですよね。」
「?俺は迷子じゃないけど。」
「いや、だってこの時間にここにいるって迷子か寝坊…」
そういうと、男の人は笑い始めた。にやけているのには変わりないけど。なんて人だろう。迷子を笑うなんて、こっちは真剣なのに。
「なんで笑うんですか。」
「だって、登校時間まだ先なのに、遅刻するみたいな言い方するんだもん。笑うしかないでしょ。」
「はい?」
「ほら、プリントあるから見なって。」
渡された紙をまじまじと見ると、登校時間は私の思っていた1時間先だった。私が確認したのに気づくなり、同級生と思われる人は、また笑った。にやけた口元がより一層にやけて白い歯が見えた。笑わないでなんて言う気力はこの時の私になんてなかった。
ただ、なんとなく気に障ったから少しだけこの人の爪先を小つついた。
あんなに急いでたのが無駄ということが分かって、私はとぼとぼと同級生の人と一緒に歩いていた。
「とりあえず、急ぐ必要はなかったってことですね。」
「そうなるかな。」
「なんで教えてくれなかったんですか。」
「言う必要がないと思ったから。」
「…本当は?」
「言わない方が面白いからでしょ。」
「…趣味悪いですね。」
そういうと、また笑った。この人の笑いのツボはどうなってるのだろうと思った。聞く気はないけれど。
「そういえば、名前聞いてなかったですね。」
「そうだっけ?」
「そうだっけ?じゃないですよ。聞いてないですから。」
「そんな知りたい?」
「知りたいから聞いてるんですけどね。」
「…それじゃあ君から言って。」
「……柊、アリスです。」
「猫島玲音、普通に下の名前でいいから。」
「じゃあ、玲音さんで。」
一瞬何か言いたげだったけど、どうしたんだろうか。
「どうかしましたか?」
「いや、多分同級生なのに、さん付けで敬語なのが凄いむず痒かったから。」
「そうですかね、小さい頃からこれなので何かすみません。」
「別に問題ないよ、ただそういうのが初めてだったから。」
なんだか気を遣わせてしまったみたいだ。ちょっと申し訳ないな、いっそのことタメ口にしようか―
「でも敬語女子って可愛いんじゃないかな?」
あ、その必要はないかな。
「まあ、どっちにしてもアリスらしくて良いと思うけど。」
そうですか、なんて少し冷めた返答だろうと思って私は普通にありがとうございます、と言ってみたりした。
そうやって中身のないような話をしているうちに、私達は目的地に着いた。
柊アリス(ひいらぎ ありす)
・空想とか、夢のある物が好きな少女。
・しっかりしていそうで、やっぱりどこか抜けている。
・方向音痴で、校内でも迷う。
・胸はそこそこ(本人曰く)
猫島玲音
・人を困らすのが好きな少年。
・だからといって、無責任ではなく、やることはきちんとやる。
・虚言ばかりじゃなく、友人(主にアリス)が困ってるなら助けるし、手伝う。それでも嘘つく時はつく。
・紫のしましまのマフラーをいつも着けている。(本人曰く、落ち着くから)