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説明できました

モザンリア王国には王家というものが存在しない。


厳密にいうと、王家はとうの昔に滅びたのだ。


その代わりにモザンリア王国には6つの代理王家というものが存在する。伯爵の位を持つ家の事で、一般的に『選王家(せんおうけ』と呼ばれている。その6つの選王家から最もふさわしいと思われる人物が王位に就くわけである。

最もふさわしい、といいつつも大体王位は順番に回ってくる仕組みになっていた。前王はこっちの家だったから、次は別の家から、といった具合だ。平和主義万歳。

その順番でいくと、次はフランデール伯爵家から王が誕生するはずだった。


しかし、フランデール家は謎の火災により一人娘のエメラルドを残して皆亡くなってしまったのだ。


モザンリア王国には女性に王位継承権は無い。

一時的に代理王家が5つになってしまったことで、王国に波風がたち始める。


「攻略対象の男性は5人。すべてが選王家の人間なの。だから、エメラルドと結婚した相手は次の王になる資格を手にしたことになる。逆をいえば、エメラルドは誰と結婚しても王妃になることが決まっているわけ」


だから、このゲームのタイトルは『王妃への階段』というのだ。



薔薇が咲き誇る家の中庭。木漏れ日が降り注ぐベンチに座って、私はようやく兄にこの世界の話をすることができた。


モリ―・アナベル。5才。

エメラルド・デ・フランデール。同じく5才。


瞳と同じ水色のドレスを身に纏った美少女は、可憐に頬に手をあてながらため息をつく。


「クソめんどくせぇぇぇ……」


清らかな乙女から放たれた不良言葉に驚いたのか、バサバサと羽音をだして小鳥たちが逃げていった。



「つまり、俺の親は殺された可能性が高いわけか。犯人はのうのうと生きてやがるかもしれないと」

「生きてるよ。ローゼイ伯爵。選王家の1つなの」

「犯人わかってんのかよ」

「隠しルート以外、全部クリアしたもの」


ローゼイ伯爵の息子も攻略対象の一人だが、彼のルートは困難を極める。なにせ彼の父親である伯爵がエメラルドの家族を殺した黒幕なのだ。恋が成就するのも難しいが、ストーリーとしては復讐と恋が絡まった、涙なしでは見れないルートとして大変見ごたえがある。


しかしそれも、ゲームとして見ている分ではの話だ。

すでにローゼイ伯爵が犯人だと知っていてその息子を恋愛対象としてみれるのかどうか。答えは否である。


「よし、そいつ殺そう」

「まてまてまて」


拳を握りしめて立ちあがったエメラルドのスカートを引っ張る。よし、じゃない。何もよくない。


「親のカタキだろ? その場合仕返しにぶっ殺してもいいんだよな」


どこの仁義を通すつもりですか。

大体、私はゲームで知っているから黒幕がわかるけれど、今の時点ではフランデール家を手にかけた人物は不明のままだ。たとえ、ローゼイ伯爵を殺したとしても、証拠がない以上ただの殺人者になってしまう。


「不良は頭が単純で困る……」

「なんか言ったか、モリ―ちゃん?」

「いいえ、何も言ってませんわ。エメラルド様」


おほほ、と笑った所、頬っぺたを引っ張られた。地味に痛い。


しかし、本当に気を付けなければならないのだ。

『王妃の階段』にはバッドエンドもある。その殆どがローゼイ伯爵の魔の手にかかって殺されるエンドだ。事件の真相に近づけば近づく程、殺される確率は高くなってしまう。


「一番簡単なのは、事件の事は忘れてユーリアと結婚する王道ルートね。あれなら何もしなくてもまず成功する初心者向けの……」

「ちょっと待て、何キモイこと言ってんだ。俺は結婚なんてしねぇ」


とりあえず問いかけに「はい」を連打すればいつのまにかラブラブになっている超お手軽ルートを思いだしていると、エメラルドは両手で自らの身体を抱きしめるようにして震えていた。


「えー、でも殺されるのは嫌でしょ」

「当たり前だ。られる前にる」


目が本気です。この人、本当に男と結婚するくらいなら殺す方を選びそうです。

けれど、結婚もしない、殺されもしないルートなんて、


「あ」


私は手を叩いた。

あるじゃないか、大円満ルートが。攻略対象全員お友達。ハッピーエンドのルートが。

それを提案すると、向こうも乗ってきた。みんな友達って最高。


「で、どうやればいいんだ?」

「……さあ?」

「あ、さあ? ってなんだよ」

「わからない、んだよね」


それは、ナナちゃんにやり方を聞こうと思っていた隠しルートだから。


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