生まれました
――可愛らしい
――なんて綺麗なのかしら
――まるで女神のよう
なんだろう、うるさいなぁ。
大勢の人が寄ってたかって何かを褒めたたえている声。しかもそれが、なぜか真上からきこえてくるのだ。
「っ!」
目を開けて、思わず息を止めた。
私のすぐ隣に赤ちゃんが眠っていたのだ。
なにこれ天使? 天使なの?
ふくふくとした頬っぺたはうっすらピンク色。黄金色の柔らかい髪に長いまつ毛。ちっちゃな手はマシュマロみたいに白い。北欧系のとっても可愛い赤ちゃんが、そこにはいた。
今すぐ写真を撮ってポスターにして壁に貼りたい。
ナナちゃんが絶えず口にしていた「萌え」とか「尊い」とか「神」とかいう意味がやっとわかった気がする。
「あぶぅ……」
おお……、と感嘆の声をもらしたつもりだったが、何故か出たのは赤ちゃんのような泣き声。
「おや、こちらのお嬢さんは起きたのかな?」
私の声に大人達が気づくと、その内の一人の男性が私に向かって両手を広げる。
あれ、なんかこの人達大きくない?
キラキラ宝石をちりばめた制服を着たような男性に、学芸会のようなドレスを着た女性たち。
恰好はともかく、普通の人間に見えるのだけれど、なんというか、大きいのだ。
その巨大な掌が近づいてきて、恐怖にぎゅっと身体を縮こまらせる。
一体何でこんなことに?
私の身体に指の端が触れた瞬間――
「あら、起きたわ」
歓声のような喜びにみちた言葉が聞こえ、私は恐る恐る目を開けた。
ぱちっ。
先ほどの天使と目が合う。驚いたように私を見つめるビー玉のような青い瞳。
その瞬間、私の身体中に雷に打たれたような衝撃が走った。
何故だと言われても困る。
でも分かってしまったのだ。
これは、この天使のような赤ちゃんは――――私の兄だ、と。