エピローグ
エピローグ
「以上で報告会を終了します。本日はお忙しい中お集まり頂き、誠にありがとうございました」
司会の言葉と出席者たちの拍手で報告会が終わると、佐竹は他の出席者との挨拶とトイレを済ませ、SIJ社に戻るため外に出ると、駐車場のある辛島公園まで歩くことにした。
路面電車は帰宅ラッシュで人がいっぱいだ。
下通に入った所でふと思い出し、ポケットからスマートフォンを見ると着信履歴が二件、母親と取引先からだった。
佐竹はまず母親に電話をかけた。
「もしもし、母ちゃん? 報告会だったんだ……ああ……いやでも会社の仕事じゃないんだよ」
腕時計を見ると午後六時だった、そろそろ帰って晩飯食って風呂入り、DUOしようと思っていた。
「ちゃんと全うな仕事に就いてるよ、SIJ社を悪く言う人もいる。でもみんないい人たちだ……ああ、スラッシュ殲滅ね……でも彼らがいなかったらこの町の治安は最悪だったぜ」
佐竹は自分がその殲滅作戦に参加したことは伏せておくことにした、両親にこれ以上の心配をかけないために。
「母ちゃん、前にも言ったが俺の仕事は装備品の調達・管理部門だ大変だけど大切な仕事だ。それで信彦は? もうすぐ二八だぜそろそろまともな仕事に就かないとヤバイぜ……もう何年くらいニートしてるんだ?」
佐竹は肥満に無精髭を生やした黒縁眼鏡の弟の顔が思い浮かぶ。
「やれやれ長くニートをしてきたツケが回ってきたか……俺の会社に面接? 無茶言うな俺にそんな権限はない……あのなぁ、本人が溜めたツケは自分で払うんだよ……おかげでこっちは二〇世紀のツケを一手に押し付けられたんだ……だから介護をやめたんだよ……ああ、断然いいぜざまあみろ、定時で帰れるし給料もボーナスも待遇も馬鹿みたいにいい、仕事は大変だが……いやなこった、結婚は人生の墓場っていうのが今の時代さ」
佐竹は溜息吐きそうになった。下通でどこかで食べて行こうかと思った。
「わかってる……それじゃあ」
佐竹は電話を切って溜息吐くと取引先に電話をかけ、佐竹は普通の青年の顔から冷酷非情な策士の顔になり、ドライで冷淡な口調になって英語で話す。
「もしもし、たった今報告会は終わりました……はい、彼らのことは話してません……ええ、あの時は肝を冷やしましたよ……本来は私が匿名でスラッシュに接触、人身売買部門に神代彩を傷つけずに誘拐させ……その過程でスラッシュを殲滅して世間にSIJのプレゼンスを誇示する」
佐竹はそう、彩の誘拐を依頼を匿名でスラッシュに依頼し、誘拐された少女をSIJ社が圧倒的な戦闘能力で救出してスラッシュを殲滅するという計画だった。
「――のはずが誘拐されたのは真島翔でしたね……まぁ江藤弘樹やシオリ・ミヤサカ・カタヤイネンのいる学校に入学してくれたのは非常に都合がよかったですよ……赤い山猫団に真島と神代、ブラックビーストに江藤とカタヤイネンを紹介して代理で依頼メールを送って接触させましたからね」
佐竹もDUOをしている。彩や弘樹、シオリにもDUOを勧めてやってもらうのに少し苦労したが見事に楽しんでくれた。
「結果は四人でギルド――チームを組みましたよ……今日は四人で昼食を食べて揃って帰ったそうです……しかし、意外なデータが取れましたよ」
彩があの殲滅作戦に参加したいと言ったのは意外だったが、無事に生還してくれたのは本当に嬉しかった。
戦闘で死ぬんじゃないかと正直肝を冷やしたが。
「神代彩のデータ、今朝送ったデータです……どんなデータかですって? DUO内の戦闘で感じてる感情や体の動き、各種バイタルサイン等のデータと、この前の殲滅作戦で神代彩のデータです」
GWにはスーツやヘルメットに各種センサーが仕込まれてる。
公にされてないが、各種バイタルデータも実は密かに記録されていて、一定の権限を持つ人にだけ閲覧が許可されていた。
「作戦前にプレートキャリアとヘルメットにセンサーを仕込みました……欠けてる部分もありますがきっと参考になると思います」
佐竹もそのデータを閲覧していた、そのデータを見た時は非常に驚いたことはよく覚えてる。
DUOの戦闘技術がそのまま現実にフィードバックされていたことを。
「やはりDUOで実戦に則した戦闘訓練は可能だと言うことが証明されました……詳しい分析はそちらの専門家の仕事でしょう……はい、ありがとうございます」
佐竹は思わず笑みを浮かべた。DUOを経験し初めての実戦を経験したデータを億単位で買うという。
「それでは失礼します……」
そして佐竹はトライポッド社社長の名を呼んで電話を切ると、ポケットに戻し、雑踏の中へと消えていった。
よれよれの服装によれよれの髪、フリーターか底辺職に就いてるような青年の顔に戻って。
遅れましたがここまで読んでくださった皆様。本当にありがとうございました。
一度は投稿してみましたが一章、一章が長いため分割して手直しと投稿し直そうと思った時は、ささやかとはいえ、まさかこんなに読んでくれる方たちがいるとは思いませんでした。
感謝感激です。
続編に関してですが現在プロットは既に完成してますが、これとは別に執筆してる作品「最後の夏のエーデルワイス」がようやく折り返し地点まで書き上げたところです。
灰色の境界線とは一転して「最後」の夏休みを過ごす高校三年生の王道青春グラフィティでボリュームは二倍以上あります(汗)続編がいつ発表できるかわかりませんが、他にもアイディアが沢山ありますので頑張っていきます。
それではこれで失礼します。




