5話
私達が出発した街(ちなみにキュロスという)から王都までには街が3つある。まずはキュロスから一番近い街のデボンを目指す。その次は二つ目の街であるランドサンド、続いて三つ目の街のガーディルだ。ガーディルに着いてしまえば王都はもう目と鼻の先。歩いて3日、馬車なら1日ちょっとくらいで着いてしまう。キュロスからデボンまでの道のりが一番長いが、飛んでいくためにそうでもなさそうだ。
「ソラー、苦しくない?」
「だいじょおぶ!」
さてさて。キュロスを出発した私達はノンストップで飛行なうだ。ドラゴン姿でギリギリ雲の下の高度を飛んでいるので、白い体が幸いして下から人間に見られてもそうそうわかるまい。ちなみに万が一を考えてソラは私の腕に抱えられている。一応ドラゴンのままでいてもらっているのでうっかり落ちてもなんとかなるとは思うが、まだ子供なので咄嗟に飛ぶとかできなさそうだ。私が気を付けなくては。ただ飛んでいる分正面から受ける風が強く、息苦しかったりしないかと思っていたが大丈夫のようだ。とはいえただ抱えられているとしてもソラはまだ子供。十分疲れている可能性がある。
「ソラ、休憩しよっか」
ついでに今どのあたりか確認もしたいので、私は高度を下げて地上に魔獣がいないか確認した後ようやく地に足を下ろした。
「よいしょ、と。よしソラ、隣おいで」
「うん」
ゆっくりソラを下ろし人型になる(こうしないと地図が見にくい)。ソラに持っててもらったカバンから地図を取り出して現在地を確認だ。ちなみに人型の私とドラゴンのソラは大体同じ大きさでちょっとびびる。
「うーん、確かさっきでかい池通りすぎたよね」
地図上にはキュロスとデボンの中間に池が描かれている。間違っていなければ先ほど見た池がこれであるはず。だとすればデボンまであと半分はきったということか。時間にすれば今はお昼も過ぎて大体よくいうおやつの時間帯。キュロスを出発したのが大雑把にみて昼前。この調子で行けばギリギリ夜前には着けそう。と、なると王都までってかなり早く着けそうじゃない?キュロス・デボン間は馬車で10日前後。ここをドラゴン姿で1日。キュロスから王都までを馬車で20日だとすると、2日ちょいで王都まで着く計算になる。めちゃくちゃ早い。流石にドラゴンってとこだろうか。
「そうなるとデボンで一泊して、そのまま王都にいけるな」
ランドサンドとガーディルには寄らなくてもいい感じだ。個人的にはキュロス以外の街を一杯見てみたいとも思うが何分今の最優先事項はソラだ。帰りにじっくり見て回ってみることにしようかな。あ、そうだ忘れてた。
「はい、ソラ。おやつだよ」
「あめ!」
休憩した時にあげようと思ってキュロスで実は多目に買っといたあの飴をソラに渡せば、人型へと姿を変えたソラ。ドラゴン姿じゃ飴1個なんてあってないようなもんだもんね。賢いぞソラ。その間私はドラゴン姿に戻って辺りに目を光らせることにした。魔獣が来たら即座に魔法でギッタンギッタンだ(とはいえ攻撃らしい攻撃はできない)!でも魔法に関してはもうちょっとバリエーションあったほうがいいかもなあ。今のところ火と水と風出せるだけだし、高度な技が欲しいとかいうわけじゃないけどそれなりに使える最終技みたいなのは欲しい。そっち方面も王家の先輩ドラゴンに訊いてみよう。
「おいしかったあ」
「ん。食べ終わったね。じゃあ行こうか」
そうこうしているうちに飴を食べ終わったらしいソラが満面の笑みを溢しながらドラゴン姿へと戻る。本当はソラにお昼寝とかさせたかったけど、デボンまであとちょっとだしもうちょっとだけ我慢してね?再びソラを抱えて飛び立ち、デボンへと再出発。
―――デボンへ着く頃には腕の中でソラはすやすやと眠っていた。まじ天使。