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理想的な死(“三方一両得”な死)

作者: 頭山怛朗

 彼は何時も“死”のことを考えていた。




 彼は寝たきりなること、自分で便所にも行けなることを恐れていた。ポックリ死”が彼の望みだった。何時までも起きて来ない夫の様子を見に来た妻が冷たくなった自分を見つける。それが、彼の望みだった……。






 彼は60歳で定年になり、その後も再雇用で5年間勤めた。


 その再雇用も、後一週間で終わりになる朝、彼の妻が何時までも起きてこない夫の様子を見にいくと既に彼は冷たくなっていた。




 彼の望みは叶えられた……。






「あの人の職場の人が手伝ってくれたので、助かったわ! 」と、彼の妻が言った。


「生命保険はどうなっている? 」と彼の義父が言った。


「後、一週間で契約期間が切れるところだったけれど、保険金は満額もらえるわ」と、妻が言った。「タッチセーフ。あの人、要領が悪くて苦労したけれど最後はよかったわ! 」


「幾らだ? 」


「五千万! 」


 義母が肩をすくめ、「いい婿さんだった」と言った。




 彼の妻と義理の両親は満足だった。






 彼は一度も年金も受け取らずに死んだ。年金は“遺族年金”と形で減額され彼の妻が受け取ることになった。


 こうして、国は年金支給額を減らすことができた。


 




 彼、彼の妻と義理の両親は満足だった。


 国にも不満はなかった。


“理想的な死”だった。





 これを「“三方一両得”の死」という……。













 ※落語の大岡政談に“三方一両損”と話しがありますが、何の関係もありません。(ww)

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