曼珠沙華
夏が終わり、緑に茂った葉が色を変える。
枯れた葉が地面に落ちて、それを寒風が運んで行く。
突然告げられた「サヨナラ」の言葉。
それを思いだして涙が零れた。
下を向いて歩く。心を埋める想いは諦観。
ふと視界に風に揺れる彼岸花。
それがどうしてだか手を振っている人に見えた。
別れの言葉を思いだしてまた涙が溢れた。
涙がぽたぽたと彼岸花に落ちていく。
彼岸花が悲しい思い出を吸ってくれている気がした。
そう思うと熱が湧きあがる。
唐突な別れなんて酷過ぎる!
怒りに任せて家まで駆けだす。
思えばあいつに頼りきりだった自分が悔しい。
いい機会だから私の凄さを見せてやる!
「サヨナラ」なんて言葉、気にしてなんかやるか!
向こうが勝手に「サヨナラ」を突きつけても。
私が勝手に会いに行くんだから。
次に会う時、ギャフンと言わせてやる。
駆ける私の背で、彼岸花が風に揺れていた。
それはやっぱり、手を振っているように見えた。
彼岸花の花言葉。