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ー第6面 ルポライター山際



ー第6面 ルポライター山際



西堀がインターネットカフェ ゴーケアフォーナカジマを出た頃。フリーのルポライター山際(やまぎわ) (あつし)は部屋の中身ごと消えた男のアパートの前で、知り合いの刑事に食い下がっていた。

「どうして警視庁の白根さんが、愛知県警の管轄に出張ってきてるんですか?。教えて下さいよ。何が起こってるんです?。」

「山際。気持ちは解るがここはこらえろ。お前みたいな命知らずが一番危ない。」

白根は本気で山際を心配しているように見えた。警察官にとって記者は仕事の邪魔以外の何者でもない。数年前。イージス艦機密漏洩事件で、山際は白根と殺し合い寸前までやりあった間柄だった。その時にお互いをプロとして認め合ってはいたが、白根にとって最高の邪魔者であり、山際にとって事件の核心に最も近い取材対象であった。

「だからって引けると思いますか?。」

食い下がる山際を無視して覆面パトカーに向かおうとしながら、白根は突然クルッと振り返った。

「クライムズにエントリーしろ。その方が近道だし、死ぬ確率も小さい。」

山際は白根にぶつかりそうになりながら、ニヤリと笑った。

「ありがとうございます。白根さん。」

「なんだか分かってるのか?。」

「ガイシャのゲームですね…。命があるないってことは…アメリカが動いてるって事でしょ?。違いますか?」

「俺の口からは言えん。」

それが答えだとは言わずに白根は覆面パトに乗り込んだ。

白根の車を見送りながら、この現場の異常さを山際はチャンスと見ていた。事件自体も異常だが、現場には本来首都防衛を任務とする警視庁の刑事や外務省の役人、さらに自衛隊の情報収集分析を任務としていると噂されている幹部が出入りしていた。

山際は同じくフリー記者の下沢(しもざわ) (たく)を見つけた。彼は愛知県警の警官に食いついていたが、逃げられる所だった。黄色い規制線のテープから山際の方に歩いてきて、彼も気づいた。

「山際さん。どうでした白根さんの方は…。」

「かまかけたけど、反応はイマイチかな…。そっちは?。」

「県警は頭にきてますね。警視庁に外務省にまもなく防衛省。やりたい放題らしいですよ。」

下沢は20代前半で警察関係に詳しい。

「で…。おまわりさんと外交官と兵隊さんは中で何やってんだ?。」

「さぁね…。県警は外の警備だけで中では何もさせてもらえないようですね。中で何かやってる人物は、全員アメリカ関係ってのが共通項ですかね…。ニオウでしょ?。」

「まだだな。その程度じゃ…。臭いの元はもっと先のはずだ。」

「何から出てると考えてるんです?。」

「…まだ言えんな。コイツでガイシャのゲームにエントリーしてみる。」

山際は持っていたノートパソコンを持ち上げて見せた。

「音声入力が必要ですよ。例のゲーム。」

「あぁ。マイクが要るな。久びさに家に帰れる。」

山際は下沢に手を振って現場を離れ、路上駐車していた車に戻った。

山際はイラクで知り合った共同通信の記者から謎めいた言葉を聞いていた。

テッド マクシミリアンが死んだ後に起こる騒動は、ロシアのスパイ事件に原因があると…。それはテッド マクシミリアンが死ぬ一年前にニューヨークのカフェで聞いた話しだ。彼はそれを追っていると話していたが、その後ニュースを発した直後、こつ然と消息が途絶えた。

彼が発したニュースは、テッド マクシミリアンが会長をしていた電子投票装置の会社役員会で辞任を要求されて辞職した事に関して、大統領選で使われたフェアプレイと言う電子投票装置に不正があったのでは…と言う内容だった。

「テッド マクシミリアン。大統領選。電子投票装置。不正…まではいい。それとロシアのスパイを繋ぐキーワードは何だ?。」

ハンドルにもたれながら、山際は朝から何度も自分に問いかけている疑問を口に出してみた。答えは浮かばない。

「…マクシミリアン エレクトロニクスに、ひと当てあててみるか…。それとも白根刑事部長の言うクライムズにエントリーしてみるか…。」

山際はとりあえず。家に音声入力のマイクを取りに行く事に決めた。それは戦場で生死を切り抜けてきた判断方法だった。1人でいるより、不特定多数の中にいた方が狙われにくいし、事態の流れがつかみやすい。ただし、絶好のスクープはその流れに1人取り残された所に存在する。何人もがそこで命を断たれた。今までは躊躇してきたが…。今度ばかりは、その場所に立たなければならないかもしれない。

山際は覚悟した。



ー第7面につづく





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