ー第5面 ハイウェイスター
ー第5面 ハイウェイ スター
移動はドアを出て即首相官邸かと思いきや、外はCGの名古屋の街だった。黒塗りの公用車が停めてあり、それに乗らなければならなかった。
「なんか面倒くさいな、このゲーム。」
「プレイヤーは行き先にジャンプする事も可能ですが、西堀さんはジャンプ出来ません。プレイヤーとして登録されていませんので。」
「この車で東京まで?。」
「いえ。小牧の航空自衛隊基地から、ヘリで直接官邸に降ります。ヘリに乗ったら1時間程かかりますので、いったんゲームを抜けられて、PCの場所を移動されると良いでしょう。まあ、ヘリの乗り換え操作は本人でなくても構わないので、このまま他の方に代わっていただいても構いません。」
モニターの前の西堀は、ブースの外にカップラーメンを持って来た中島に
「だそうだ。」
と言った。
「ありえない作り込みのゲームじゃないすか。いかれてますよ。移動時間がかかるなんて。絶対俺もプレーしますよ。」
「その前に、他の場所に移動したいんだけど、何か方法はあるか?。歩くのがキツイんだ。」
「まあラーメン食べてください先輩。」
中島はテーブルの上にカップラーメンと水の入ったコップを置いた。
「ちゃんと手配しましたよ。一度会った事があると思うんだけど。鈴鹿サーキットで…。」
「鈴鹿サーキットって…まさかハイウェイスター大友じゃないだろうな…。」
「正解。やつは今岐阜でタクシードライバーやってんですよ。会った時は交通機動隊の警官でしたけどね。」
西堀はコースから外れてばかりで、芝刈りレーサーと呼ばれていた荒い運転をする中島の友達を思い出した。
「何心配してるか分かりますよ。今は芝刈りしてませんから大丈夫ですよ。」
「まあ。いざと言う時には頼りになるだろうけど…。」
西堀はラーメンを平らげた。中島に肩を貸してもらって、下に降りると、ランサーエボリューションがヘルメットをかぶったドライバーと共に待っていた。
「タクシーだよな。あれじゃないよな中島。」
ドライバーが5点シートベルトを外して、こちら側に身をのりだしてきた。
「中島。その人?西堀さん。」
と呼びかけてきた。中島も驚いた顔をしている所を見ると、これはアクシデントらしかった。
「大友。その車どうしたんだよ。」
「これか?。家で乗ってる車だよ。タクシーじゃおまえの要求は満たせないと思って。」
中島はヤバイと言う顔をしながら
「…まあこれなら、何が来たってぶっちぎれますよ。先輩。」
とフォローにかかった。
「選んでる時間はないか…。ヘリの乗り換えは頼む。中島。」
「やっときますよ。」
西堀は窮屈なナビシートに苦労して入り込んだ。
ー第6面につづく




