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ー第19面 新島


ー第19面 新島



新島は頂上を雲の上に埋めていた。

現実には有り得ない9千mの頂を持った島は、突然噴火をやめ有毒ガスの噴出も止まり、何千度もある温度もゲーム管理システムの変更により10度前後まで強制的に温度を下げられていた。

アメリカドリームチームも椎名チームも、一千万を支払って新島の衛星写真を所持リストに入れた。登はん斜面は4方向あり、北壁を登るルート 西から稜線を登るルート 南のクーロワールルート 東の稜線ルート。その4つの中でも複数のバリエーションが検討できた。

美花は、もっとも登はん距離の短い、北壁の直登ルートを選んだ。

第1キャンプから上は、全て岩壁の登壁になるが、天候さえよければもっとも早く登って、早く下りて来られるルートだ。そのかわり落石や風が強くなれば動けなくなって遭難する可能性が高い。さらに設置したキャンプが落石で潰れる事もある。

アメリカドリームチームも北壁を選んで来たが、直登ではなく下の方の壁を迂回して、7千m付近からスラブ登壁になるルートを選んできた。スラブは一枚岩でおうとつがない。指を掛ける場所がないので、全て懸垂で登らなければならない。スピードの低下と体力の消耗が早いリスクがある。ただし迂回する事でルート全体の傾斜角度が緩くなるのでスラブ以外では有利と見ていい。

「西堀さんはこのルートをどう見ます?。」

美花はマイクを切るように合図して、西堀に言った。

「…こっちは岩壁と氷壁のみでスラブ壁がない…7千mからスラブだと酸素不足で体力の消耗が激しい。上までルート探査できるかどうかだな…。」

「それはドリームチームは折り込み済みね…そこから先はこっちのルートと重なるから…彼らは私達が探査したルートで登る事ができる。ルート探査だけして確定しなければ…彼らも登れない。彼らがアタックキャンプに居ない時を狙っていけばオーケーね。」

6千mのBCベースキャンプから6千500で第1キャンプ。7千で第2キャンプ。7千500で第3キャンプ。7千900で最終となるアタックキャンプと美花は設営していった。

ドリームチームも美花と同じ30日でアタックまで設営した。しかし40名のパーティーの内半分の20名を失っていた。現実の登山なら撤退する所だ。残りも高度障害で5名しか動けない。

美花は慎重に高度順応と荷揚げを行った。アタックから先のルートは確定していない。BCで美花はギリギリのタイミングを計った。

時間は24時間が24分で動いてゆく。1時間1分だ。

31日目に天候は悪化し始めた。アタックキャンプ付近で風速30mより下にさがらない。天候データ画面で気圧配置を確認する。低気圧が近づいてきている。雪も降りそうだ。

この低気圧が過ぎるのは食糧が尽きる60日目…しかし雪が降る前に風がやむ瞬間があると美花は読んでいた。風速が20m以下なら…美花のパラメーターなら動ける。

「西堀さん。ルートを確定します。」

「風が強くないか?。」

「アタックまでは20mです。行きます。」

美花はプレイヤー美花に5日分の食糧を持たせてBCを出発させた。

ドリームチームは反応しなかった。これまでも陽動で第1キャンプとの間を往復させていたからだ。

第1キャンプに入る振りをして、すぐに第2キャンプに出す。第3キャンプに近づいた所で落石が発生したが美花は回避した。バイクぐらいの岩が目の前を落ちていった。

そこでドリームチームが反応した。動ける5名がBCを出た。美花は第3キャンプを通り過ぎ、アタックに無事入った。それが16時。ドリームチームはアタックまで入ると日没後になる。その前のキャンプで停止するのが普通だ。

「アタックまで行く。ノト君なら…。」

その通りドリームチームは19時にアタックに入った。その代償として5名の内1名が軽い凍傷と高度障害にかかった。

美花は頂上までのルートを確定した。これで登頂可能だ。

美花はアタックで待機して32日目に入った。ドリームチームの高度障害のプレイヤーは山を下り始める。朝6時の時点で風速は30m。天候は曇りで気温は−10度。美花は気圧配置をもう一度見た。風速が20mまで下がる。

「まだ。」

美花は言った。

しかしドリームチームのひとりがアタックを出た。7時にアタックの上は30mに戻った。別のプレイヤーが出て、動けなくなったプレイヤーと合流してアタックに戻す。そのプレイヤーは高度障害になり、動けるのは3名。風速は上がり続け40mで吹き荒れた。

33日目は6時から40m。7時には20mに下がった。しかし7時に出ると日没までにアタックに戻れない。ドリームチームも動かない。

34日目は30mで空は雲で覆われ始めた。気温は−15度。35日目の6時は40mで気温は−20度のまま動かない。

36日目はアタックキャンプの食糧が尽きる。アタックしなければキャンプを下りなければならない。風速50mが吹き荒れた。

しかし10時に20mまで下がった所で、西堀が強行した。アタックキャンプまで3日分の食糧を持って上がってきた。

「西堀さん。高度障害になってる。凍傷も中度だよ。」

「多分動くとゲーム内死亡だな。でもここに居ると食糧が減るから下りるよ。」

西堀は美花の返事を待たずにプレイヤー西堀を下山させた。少し下った所で重度の高度障害になり動きが止まった。昏睡状態になり

ープレイヤー西堀はゲーム内死亡しましたー

と表示された。

西堀のモニターは強制的にゲームからログアウトさせられた。

「あとは頼むぜ美花さん。」

直接西堀は言った。司老 横山 高宮親子とハイタッチを交わして美花のモニターを見る側にまわった。

「無駄にしないよ。西堀さん。」

美花は勇気をもらった。

37日目の朝4時。

突然と風が10mとなり、5時に0mとなった。

雪が降り始めていたが、美花はアタックのコマンドをクリックした。

この瞬間世界中でプレイヤー10万人が、観戦モードの画面に向かって

「ゴー。ゴー。ゴー。」

と叫んでいた。

美花自身も…。




ー第20面 頂上直下につづく





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