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ー第18面登山許可


ー第18面登山許可



モニターの赤いバーはなかなか伸びてゆかなかった。

しかしこれが幸いしていた。この処理の間アクセスは中断されていた。在日米軍座間キャンプ内で、プレイヤー椎名美花のPCの場所を探っていたCIAは中断を余儀なくされていた。西堀は処置室に移動して右足にギブスを処置されていた。帯状の樹脂を巻いていって、お湯をかけると固まるという物だ。

「軍医さん。あの南3佐というのはどんな人物なんです?。」

「ここの司令官です。それ以上の評論はすべきでないと思いますが?。」

「わかっています。」

「ご心配は分かります。南3佐は命令に忠実な方です。防衛大学は主席で卒業されましたが…演習中に命令を遵守するあまり、部隊を全滅させる事3回。まあ、演習ですから実際の死者はないんですが…実戦部隊の指揮からは外されました。それでここの司令官に配属されたわけです。南3佐を使うには、彼を知り抜いた命令を出せる将官が必要です。その将官に使われれば、彼に勝てる部隊は世界中に存在しないでしょう。陸自はここで彼を温存しているんです。」

「つまり。南3佐を敵にまわすと、やっかいだと言うことですか。」

「敵にしない事です。敵にしたら逃げる以外に方法は有りません。南3佐はアメリカ寄りの進藤幕僚長の派閥に属しています。そこから命令が出れば、あなた方を拘束する可能性はあります。おそらくCIAがあなた方の位置を確認してないんでしょう。南3佐はあなた方の事を報告するよう命令されていれば、派閥に報告するんでしょうが、しないのが南3佐たるゆえんです。進藤幕僚長の派閥は警視庁とのやり取りを知らないポジションにいます。知っているのは南3佐だけという訳です。」

「物事が動かないと言うのは、そういうささいな事なんでしょうね…。」

「だから士気というものが軍隊には必要なんです。士気が高ければ誰かが気づく。アメリカの意図は自分達の士気を下げていますよ。大義名分が無さ過ぎる。」

「軍医さんは我々についてくれるんですか?。」

「実はアメリカ本体も割れているんです。大統領側とダグラス上院議員側と。首相官邸は様子見に入っています。でも防衛省と警視庁は大統領のやり方に、心の底から怒ってますから、本音はダグラス側ですよ。しかし勝った方につく。これが現実です。」

「わかりますよ。それは。」

西堀はやり切れない気持ちで右足のギブスを見た。



美花の前でモニターは30分動かなかった。そして赤いバーが一気に100%に達した。

出た表示はフェアでもアンフェアでもなかった。

ー判断不能ー

「コンピューターのクセして逃げるわけ?。」

美花はマイクに怒鳴った。

ーそれは誤解ですー

「どう誤解なのよ。」

ーそれはフェアでもアンフェアでもないという事ですー

「それでアクセスさせてくれないって事は、逃げるって事じゃない?。」

ー当システムはプレイヤー椎名美花に対して、全面ではなく限定的アクセスを許可しますー

「理由は?。」

ーフェアでもアンフェアでもないからですー

「じゃ、限定的アクセスをお願いするわ。」

ーどうぞ。文字でゲームの変更点を打ち込んで下さいー

美花は噴火停止と登山許可の発行を打ち込んだ。

ー変更点を了承し、変更を行いますー

「いつでも変更可能?。」

ーここにおいでになれば可能ですー

「ここ以外は駄目なの?。」

ーできませんー

「じゃあ…また来るわね。」

ーどうぞー

美花は部屋を出た。

石川総理が待っていて美花に右手を差し出した。美花は総理の右手をクリックした。



美花がバーチャル日本政府の登山許可と、海上自衛隊巡視艇による新島アクセスの許可をもらって、首相官邸を出るのと入れ変わりに山際と正義が君武を訪ねてきた。

君武に一連の話を伝えると、CIAのPCの位置をつかんだ事を知らされた。

「ペンタゴンの他に座間キャンプです。山際さんの名前で、リアル日本政府にEメールで伝えられるようにできますが?。」

「いや。直接総理に話したい。日本は日本国民の基本的人権と主権を優先すべきだ。」

「同感です。それはお任せしましょう。」

山際は東京駅近くのネットカフェを出て、地下鉄丸の内線で首相官邸に向かった。山際や一部の記者に知らされている電話番号でアポをとった。



その頃プレイヤー椎名美花は、プレイヤー西堀とゲーム中の巡視艇にいたかに乗っていた。

君武が同行している。不気味なのはアメリカドリームチームが同乗している事だった。

「あいつらもゲーム管理システムでなんとかできないんですか?。美花さん?。」

「そこまで気が回らなくて…でも、さすがね。でごわそう。」

君武がドリームチームの方を見るように促した。

「能登島管理者がいます。ただし、もう我々と会話はできません。どうやらバレたようです。」

「じゃあ…ゲーム作者を敵にまわす訳かよ。美花さんと俺で…。」

「でも、ノト君が居てもドリームチーム有利とは言えないです。やっと互角ってとこですよ。西堀さん。」

「互角ねぇ〜。」

西堀は能登島を良く見ようと画面をズームした。しかしドリームチームのプレイヤーに遮られた。



ー第19話 新島につづく





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