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ー第14面エドガー ミッチェル


ー第14面エドガー ミッチェル



山際は停車する前に、正義を急がせてドアの前に立った。

窓から外を覗いていると、近づいてくる人物に山際は目を疑った。新幹線が東京駅に停車すると、その人物がドアの正面で手を広げた。ドアが開くと同時に山際は弾かれたようにホームに出た。

「どうなってるんだ…エドガー?。」

日本語でエドガー ミッチェルに叫んだ。ジョンとの会話は今さっきの事だ。

エドガーは英語でそれに答えた。

「心配かけたなアツシ。なんとか生き延びてるよ。…そっちは息子さんか?。」

「あぁ…息子の正義だ。」

190cm近い身長から長い手が差し伸べられて、正義の手を包んだ。

「アメリカ政府に誘拐されたんじゃないのか?。」

「逃げたよ。そのついでにロシア側の取材もしてきた。だが収穫はその前に取材したウェブスター ハウゼンの故郷…ミネソタだ。」

「エドガー。ここで朝までしゃべってるつもりか?。」

「あ〜そうだった。下沢 拓の館とか言うアパートメントが中野にある。今そこに隠れてるんだ。」

「下沢のマンションか…。俺もかくまってもらった事がある。」

「公安に追われたんだってな。勘違いで。」

「タクシーで行こう。駅は見張られてるぞ。」



下沢は部屋で待っていた。山際同様に資料室と化した部屋の中にエドガー 山際 正義 下沢と4人分のスペースが作ってあった。

「で?。ミネソタの話をしろよ。山際が来てからだってもったいぶるんだよ。」

下沢はハーパーの水割り3つとペプシ缶を持って来て言った。

山際は英語が解らない正義から取材ノートと鉛筆を取り上げた。

「じゃあいくぜ。スクープのハゲ鷹ども。」

エドガーの話はこんな感じだった。



電子投票の不正をしてまで勝たせるわけにはいかなかった、ウェブスター ハウゼン上院議員の故郷はミネソタにあり、祖父のマイケル ハウゼン5世は現在もそこに住んでいる。

エドガーはロシアのスパイ疑惑をマイケルにぶつける為に、ハウゼン家を尋ねた。

築100年以上と言う噂の大邸宅は、巨大な庭の中心にそびえ立って見えた。

門のインターカムのスイッチを押すと、執事と思われる男が用件を尋ねた。

「共同通信社のエドガー ミッチェルです。マイケル ハウゼンさんにお話しをうかがいたいのですが?。」

ー記者の方ですか。主のマイケルは1969年以降新聞記者にはお会いになりません。どうしてもと言うのであれば、ウェブスター様に書面で質問状をお送りください。ー

「マイケルさんはロシアにおいでになった事はありますか?。」

ーありません。当家の先祖はイングランドヨークより移住しました。代々誰ひとりロシアに行った事は有りません。お引き取り下さいー

エドガーは警備員とドーベルマンを送られる前に門を離れた。

広大な敷地に沿って道がつけられていて、エドガーは敷地を一回りしてみる事にした。

5分程車で走ると、敷地にめり込むような形で家が建っていた。ハウゼン家と比べれば小屋程度だが、エドガーの住んでいるアパートぐらいの大きさはあった。

生け垣は崩れていて庭に居る老人が見えた。

エドガーはこの老人にマイケル老の事を取材してみた。

「あ〜?。マイケルか。アイツがどんな奴かって?。一言で言やぁ…ロシアのスパイさ。」

老人はよくあるジョークのように、イタズラっぽい目をしてそれを言い放った。

「…どうしてスパイなんです?。」

「孫に大スパイ マイケル ハウゼンの武勇伝を語って聞かせてるのさ。」

「それは…この辺りでは有名な話しなんですか?。」

「い〜やぁ。俺だけが聞いている。その話しの面白いのなんのって、先祖がロシアのスパイで、その任務ってのが凄い。アメリカに移住して市民になりすまし子孫を大統領にして、アメリカを破壊するんだと。どうだ?。凄すぎて笑っちまうだろう?。」

「聞いてるっていうのは?。ここに居ると聞こえるんですか?。」

「まさか。そんなに耳は良くない。ラジオに混じって聞こえてくるんだよ。ジャズ専門局の放送に…ウェブスターが3才の頃からな。」

「つまり。ウェブスター家の中の会話がラジオで聴けるとおっしゃる?。」

「そう言う事だ。どうなってるのか知らねえがな。あの豪邸は元々ハウゼン家の物じゃない。以前は株成金が住んでた。議員を買収してたとかでCIAが張り付いてた時があった。きっとその時のマイクと発信機が生きてるんだろう…でもマイケルのスパイ物語は面白いぜ。ラジカセのテープに録音してよく聞くんだ。」

エドガーは体が震えるのを隠しながら、そっと言った。

「私にも聞かせてもらえませんか?。」

老人はニヤっと笑って言った。

「いいとも。」



「で、ラックに300本あったテープを全部CD−ROMに移したのがこれだ。」

エドガーはゼロハリバートンのトランクケース2つを、資料の山の上から持って来て、山際の前に置いた。

「つい最近のまである。このカセット持ってた爺さんは、金持ちだが、テレビも新聞も見ない。30年前から…。ラジオのジャズ専門局はニュースを流さない。だから、このスパイ物語が現実だと言う事に気づかなかった。教えなかったから…今現在も。」

「完璧な訳か。」

「あぁ。ロシア政府はもちろん、こんな任務がある事も知らなかった。ただし、モスクワに居たロシア史の教授は、この任務の当時の機密文書の写しを持っていて、ひとつのエピソードとして大学の授業で使っていた。誰も本気で、こんな任務をやり遂げようとしてる人間が居るなんて思わないからな…。このお話しテープがなければね。」

「きっとその教授も授業で使いたいんじゃないか?。」

下沢が口を挟んだ。

「で。そのお話しテープをどうするつもりなんだ?。エドガー?。」

エドガーの目が鋭くなった。

「山際。君に頼みたい。この2つのトランクケースは同じ物がそれぞれ入っている。ひとつはダグラス上院議員に。ひとつは現大統領に。俺はアメリカにもう一度入国するのは難しい。」

「わかった。ゲームにエントリーしてるか?。エドガー。」

「あぁ。だから東京駅にいたのさ。君武さんに教えてもらった。」

「ジョンがマッキンリーに居るから行ってやれ。」

「本当か?。そういう所が山際だ。気が効く。」

エドガーが両手で山際を揺さぶったので、後ろの資料が崩れてきた。下沢が止めに入った。

「やめろ。資料の中で遭難するぞ。」

4人とも崩れてきた資料から抜け出すのに30分かかった。


ー第15面ギフタワーマンションにつづく




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