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ー第13面ジョン ミッチェル


ー第13面 ジョン ミッチェル



山際は一番大きなテントに入って行った。

大きなデスクがあり、マッキンリーの衛星写真をプリントアウトした地図にルートが書き込まれていた。その周りに無線と、気象情報を映し出しているモニターが取り囲んでいた。

そのモニターの前に居るやせた背の高い少年が振り返った。澄んだ青い目で山際を見つめると、満面の笑顔になった。(以下は英語のやりとり)

「ミスター山際。こんな所で会えるなんて!。」

ジョンは山際を抱きしめにきた。

「抱きしめるのは、どうやるんだ?。ジョン。」

「パラメーターの総合レベルが50を超えると、握手の他に選択肢が増えるんだ。…でも、ミスター山際がゲームにエントリーしてるってのは取材ですか?。」

「アツシでいいよ。」

「オーケー。アツシ。」

「実はお父さんの取材について知りたくて来たんだ。」

ジョンは暗くならなかった。

「そう。僕もだよ。パパの仕事仲間の人が、このゲームの中でパパのプレイヤーエドガーを見たと言う人が居るんだ。それで、パパの行方がわかるかと思って…。」

「このバーチャルアメリカで?。」

「うぅん。バーチャルロシアの方で。でも海外に行くには登山技術レベルが100を超えないと駄目なんだ。アツシはもう超えてるんだね。スゴイや。」

「記者ってのは、取材の為の特権を得るやり方を知ってるだけさ。でも初登頂する権利はないんだ。」

「わかるよ。そう言うの。パパもビックリするようなとこに出入りできたからね。」

「パパが行方が判らなくなった時は、どこに行った時か判るかな?。」

「ジェームス ロー博士にインタビューに行くと言ってた。歴史研究家の人だよ。アメリカが独立戦争をやってた時のロシアの機密文書を古本屋で見つけたらしいって言ってた。」

「つながってきたな。正義メモってるか?。直訳で理解できてるか?。」

「誰?。」

「今そこに居るプレイヤー正義は、自動モードになってるんだが、俺の息子だ。ゲームの外で俺達のやりとりをメモってる。」

「そう。あとでゲームに入ってきてよ。挨拶したいから。」

「もちろんだ。で?。そのロシアの機密文書ってのは?。」

「それ以上は僕にはわからない。当時のスバイ関連のものらしいって、パパの友達は言ってたけど。」

「独立戦争時代の文書か…。どう去年の大統領選と繋がるか探り出さなきゃいけないわけだ。」

ジョンは何かためらっているかのように間を置いた。

「どうしたジョン?。」

「アツシ。パパからメッセージを預かってる。」

「手紙か?。」

「そうじゃない。ジェームス博士に会いに行く時に、パパにカセットテープを渡されたんだ。このカセットテープの中に入ってる言葉を正確に言えるように記憶して、テープは燃やすようにって。もしパパが行方不明になったらアツシヤマギワに、記憶した通りしゃべれって。日本語なんだ。」

山際は手でジョンを制した。

「ジョン。いま君のPCの場所はどこだ?。」

「マイアミだよ。友達の家族がクルーザーを持ってるんだ。それに乗せてもらってるんだ。」

「今、声の聞こえる範囲に人は居る?。」

「いない。沖に船を停めて、みんなは泳いでる。」

「その友達ってのは?。」

「ダグラス上院議員の息子だよ。」

現大統領民主党に対して、ダグラスは共和党の保守派議員と山際は頭の中で復習した。

「盗聴器があるかもしれないな…。」

「今朝、専門の人が来て1ダース見つけたよ。もう無いって言ったけど、ダグラス上院議員が、あと2つ見つけたよ。」

「…携帯電話持ってるか?。」

「携帯の電磁波で盗聴器の送信を妨害するんだね?。」

「ないよりはまし程度だが、やってくれ。」

「…。…。オーケー。」

「じゃあ、記憶してるメッセージを頼む。」



「ヤマギワ。これをジョンから聞いていると言う事は、私は死んでいる可能性がある。私が追っていたものの内容は知っていると思う。ジェームス ロー博士が、独立戦争時代の本の中に挟みこまれていた、ロシアの機密文書を偶然発見した。それはロシアがある人物に対して発した任務を記したものだった。マイケル ハウゼン。当時はイギリスロンドンからアメリカに移住した男だ。彼に与えられた使命は、アメリカに移住し、独立戦争に勝つであろうアメリカで信頼を勝ち取り、孫以降の世代でアメリカ大統領となり、アメリカ政府を破壊せよと言うものだった。こんな文書がたとえ本物であっても問題などない。しかし、マイケル ハウゼンの子孫であるウェブスター ハウゼンは、現大統領の大統領選での対立候補だった。ジェームス博士はこの事実を現大統領に知らせた。そして、ウェブスター ハウゼンがこの任務を果たそうとしている事実をつかんだ。しかし、マスコミに発表するには状況証拠ばかりだった。そこで、マクシミリアン エレクトロニクスに、ウェブスターを勝たせない為の工作をしてくれるよう頼んだ。しかし会長のテッドは、たとえアメリカが潰れても選挙は公正であるべきだと主張した。これが、この騒動の発端だ。」

ジョンは息を弾ませながら言いきった。山際は体が震えるのを感じた。エドガーは殺されている可能性が高いと感じた。

「…どう?。ちゃんと文章になってた?。」

「パーフェクトだ。君のおかげで何が起こっているか知る事ができた。」

「パパの行方はわかりそう?。」

「誰に追われていたかは判った。現大統領が知っている。必ずパパがどこに居るか俺が探り出す。ダグラス上院議員に保護を求めるんだ。父親が大統領に命を狙われてると言うんだ。」

「信じてくれるかな?。」

「彼なら事実関係を確認した上で、必ず守ってくれるはずだ。」

「やってみるよ。」

「パパは必ず探しだす。俺を信用してほしい。」

「オーケー。でもバーチャルロシアには行ってみてもいい?。」

「ゲームの中なら問題ない。」

「アツシはこれからどこへ?。」

「いったんバーチャル日本に戻る。管理者とバーチャル日本政府にこの事実を伝える必要がある。」

「バーチャル日本に行けば会える?。」

「会えるようにしておく。じゃあジョン気をつけて。」

「アツシも…。」

山際はバーチャル日本に戻る手順を操作するとゲームを抜けた。どっと疲労が山際を襲った。

とてつもない事件だ。しかしジョンの父親や能登島の命がかかっている。

「…退くわけにはいかない。」

新幹線は東京駅にすべりこんでゆく所だった。



ー第14面エドガー ミッチェルにつづく




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