表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/26

ー第12面マッキンリー山


ー第12面 マッキンリー山



山際はバーチャル日本政府発行のIDカードを使うだけで、ゲートを通り過ぎ、そのまま飛行機に乗ることができた。

ー移動距離をパスしますか?ー

ゲームが聞いてくる。

「パスする。」

山際はマイクで答えた。正義は移動の連動モードで自動的に山際についてくるようにしていた。新幹線の正義は、能登島のEメールを記事にまとめていた。

「…父さん。犯行グループは日本人だよ。しかも隣の住人を除いて、他の部屋に入ってたのは全員犯人だ。」

「じゃあ大家は大変だな。ひと部屋を除いて、全部の住人が家賃も払わず消えた訳だ。」

言いながらゲーム内に持っている所持品の中から、ジョン ミッチェルに関するメモを山際はクリックした。

「アラスカ マッキンリーで登山訓練中か。乗り換え検索と移動距離パスで楽勝だな。」

山際はフト画面を回してプレイヤー正義を見た。場所はケネディ空港の中だ。現実と違ってアメリカ入国者は全て、この空港で降りなければならなかった。

自動で歩いている。そのそばに別のアメリカ人プレイヤーが近づいてきた。

一瞬で正義は抱き上げられた。アメリカ人は走り始めた。山際は追いかけながら叫んだ。

「正義ゲームに戻れ。誘拐されたぞ。」

山際は能登島が、身体能力のパラメーターを最高にしておきましたと言ったのを思い出した。

山際はグングン男に追いついてゆく。格闘モードの表示が出て、方向キーテンキーエンターキーの組み合わせで出る技のリストが、画面の端に並んだ。

アメリカ人は正義を抱えたまま、人気のない場所に山際を誘い込んでいった。

男は走るのをやめて振り返った。正義の頭にリボルバーをを押し当てている。以下は英語のやりとりだ。

「ミスター山際。このままおとなしく、日本に帰れ。何を嗅ぎつけたか知らんが、やめた方がいい。」

「俺を知ってるのか?。」

「書かなくてもいい記事を書いて、掲載されない間抜け記者だ。」

「だったら自由に取材させてくれよ。掲載されないんだから?。」

「それ以上近づくな。息子の頭が吹き飛ぶぞ。」

「まあ、焦るな。誰に頼まれてゲームで遊んでる?。」

「知りたいか?。知りたいだろうが、教えるわけにはいかない。」

「あんたも、俺がどこでゲームをやってるか知りたいんじゃないか?。」

「教えてもらう必要はない。すぐにわかる。」

「ほぅ?。俺のPCの場所を追跡してるわけか?。ペンタゴンで?。ホワイトハウスで?。」

「クソッ。新幹線だと?。さすがは凄腕ジャーナリストだな。」

「こっちも、もうすぐお前のPCの場所が判るぜ。」

山際はハッタリをかました。これぐらい古典的なハッタリもないが、それだけに効果はあった。アメリカ人はフッと消えた。ゲーム内から自分のデーターを消去したらしい。どうやるのかは山際には判からなかったが…。

正義はドンと床に落ちる前に両足で着地した。

「父さん。バーチャル日本政府とリンクしてるから…多分PCの場所はわかったんじゃない?。」

正義もハッタリを効かしているのかと山際は思ったのでマイクを切った。正義も切る。

「それはハッタリか?。正義。」

「いや、リンクしてるのは本当だよ。バーチャル日本政府ならやってるはずだと思う。でも話しをするには戻らないと駄目だけど。」

「それはジョン ミッチェルに会ってからだな。…ゲームに戻るか。」

山際と正義はマイクのスイッチを入れて、ジョンのいるマッキンリー山に移動を開始した。現実のマッキンリーは単独登山が禁止されている北米の最高峰だ。冒険家の植村直己さんが消息を断った山でもある。



マッキンリー山のレンジャー事務所で、ジョンのベースキャンプはすぐに判った。

「16才の坊やだが。先物取引で4億円持ってるそうだ。それだけありゃあ、初登頂するかもしれねえな。」

レンジャーもプレイヤーで、この事務所で資金集めをしているらしい。レンジャーは備え付けの装備で山に登る事ができる。つまりそれで技術パラメーターを上げられるらしい。

「…ここだ。所持品リストに地図を移すといい。それでアクションすれば、ジョンのBCに行ける。」

「俺達の他にジョンを訪ねてきた人はいるかい?。」

「いゃ。あんたらが初めてだ。でもジョンと組むのは良いアイデアだ。俺ものせてもらいたいくらいさ。」

「のりゃあ良いさ。」

レンジャーは山際と握手して言った。

「オーケー、チームメイト。新K−0ノトジマ峰で会おう。」

「そうだな。」

山際はレンジャー事務所を出て、移動距離パスを使った。

CGだがマッキンリーは美しい山だった。そのパノラマを背景にジョン ミッチェルのベースキャンプは張られていた。

「父さん。さっきの奴がまた来るんじゃない?。」

「ハッタリが効いたんで、対策をやってるんだろう。今のうちにジョンの取材を終えるぞ。」

山際は、この騒動の発端にまさに触れようとしていた。



ー第13面ジョンミッチェルにつづく





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ