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ー第9面 ゴーケアフォーナカジマ一宮店



ー第9面 ゴーケアフォーナカジマ一宮店


「とりあえず、チェックポイントだ。」

大友はゴーケアフォーナカジマ一宮店の前で車を停めた。

「1時間後に来てくれ。俺が出てこなければ、何かアクシデントが起こったと思ってくれ。そのまま大友君は逃げてくれ。」

そい言う西堀に、大友は不満そうだった。

「…見捨てろと言ってる訳じゃない。中島の所に戻って、俺がどうなったか探ってくれ。出来れば救出して欲しい。」

「そういう事なら。」

西堀は5点シートベルトを外して、ランサーエボリューションを降りた。

「歩けます?。」

大友は降りてきそうだった。

「急いで車を移動させないと危ない。行くんだ。」

大友は西堀を見たまま、シートに戻った。

「行けっ。」

西堀の声と同時に、車は発進して消えた。

右膝が痛む。この店は地下になっていた。歩道を右足を引きずりながら渡り、地下への階段を壁に手をつきながら降りなければならなかった。ドアを開けると、一宮店の店長が駆け寄ってきた。

「西堀さん。社長から聞いてます。」

「すぐにアクセスしたい。」

「もう立ち上げてあります。まだヘリは飛んでる最中です。」

「中島にアクセスの仕方を聞いたのか?。」

「違います。私も社長もゲームにエントリーしてまして。ゲームの中で事情を聞きました。で、君武さんが、うちのPCに西堀さんのデーターで立ち上げてもらいました。」

「オンラインゲームって、そんな事できたっけかな…。」

「聞いた事ありませんけど、やれてるのならできるんでしょ。」

「だろうな。どのブースで立ち上がってる?。」

「10番です。」

西堀は10番ブースに痛む体を沈めた。マイクを手に取る。

「君武さん。PCの場所を移動しました。1時間でまた場所を移動します。」

「ご苦労様です。あと2分で着陸します。移動中は何事もなかったですか?。」

「気味悪い程…何も。」

「実は。CIA関係の暗号通信の中に、西堀さんの名前が出始めてます。日本国内でCIAが動けるとは思いませんが…リアル能登島さんや会社を襲った連中を動かしているとしたら…そろそろ何かあるかもしれません。」

「能登島に言っとくよ。CIAの暗号なんか解いちゃ駄目だって。」

君武はジョークと受け取って笑ってみせた。

「…降りますよ。マウスで、そのバーをクリックして下さい。ゲームの中でも怪我すると動きが悪くなりますよ。」

西堀はヤレヤレと思いながらバーをクリックした。

下に首相官邸のヘリポートが見え始めていた。



君武はかがむようにと西堀に指示しながらヘリポートから官邸の中に移動した。

西堀はプレイヤーではないので、ライフゲージは無限大∞のマークがついていた。

ークソッ。ゲームの中じゃ不死身だが、外じゃ気絶しそうだー

と西堀は思った。

中に入ると廊下を挟んだ向かい側のドアから別の部屋にと、中心部に案内された。

「西堀さん。内閣総理大臣 石川 保首相です。」

石川開発部長の満面の笑顔を見て、西堀はめまいで倒れそうだった。

差し出された手にクリックして握手を交わした。

「ようこそ。我々は西堀さんの力を必要としています。まもなく能登島管理者も到着するはずです。」

首相はモデルと違ってポジティブだった。西堀はソファーに移動して座った。君武がドアのそばにいて能登島を迎える態勢をとっていた。管理者の能登島はゲームの中では最高位にあるからだ。ただクライムズの中では権限に自ら制限を設けていた。正当な理由があるとバーチャル日本政府が認めなければ管理者と言えど拒否できるようになっていた。

能登島はどれだけの自由度を持っていて、どれだけの情報をもたらしてくれるのか?。おそらく監視されているだろう状態で、何を伝えてくれるのか。

明らかに生死がかかっていた。



「来たようです。」

君武が静かに言った。

ドアが開いてCGのプレイヤー能登島が入ってきた。

首相は立ち上がって歩み寄り両手で握手して迎えた。

「能登島管理者。お会いできて光栄です。」

プレイヤー能登島は無表情で答えた。

「私は今アメリカ政府の管理下にあります。申し訳ないが首相、私は味方でないと認識していただきたい。」

石川首相は驚いた様子もなかった。ただそれを見ている西堀にとっては笑えないコントを見せられているようだった。

「…もちろんです。概要は把握しています。で?…。アメリカ政府の要求をお聞かせください。」

「ゲームの管理システムをお渡しください。」

「逆にお聞きしたい。どうやったらゲームの管理システムをお渡しできるんです?。我々は対ハッキングプログラムそのものです。自らプログラムのコントロールを放棄する機能はありません。どうしてもと言われるなら、我々を破壊して持っていかれるしかありません。」

「アメリカ政府はトップクラスのハッカーを使って失敗しました。その方法は不可能です。」

「では?。他に方法が?。」

「バーチャル日本政府が国としての主権を放棄できる権限が、首相に与えられている。」

「それを行使してゲームの管理システムを渡せと?。おっしゃる訳ですか?。」

「アメリカ政府はそう言っている。」

「では。私の返答です。私に主権を放棄させたければ、バーチャルアメリカ政府を使って宣戦布告しバーチャル日本政府を占領する事です。幸いゲームの中なので現実の死者は出ません。まぁ、とばっちりをくったプレイヤーがゲーム内死亡になってゲームができなくなるくらいですな。」

「わかりました。そうアメリカ政府に伝えましょう。」

「能登島管理者。あなたは大丈夫なんですか?。」

「身体的な危害は加えられていません。ただ外出はできない。ここがどこかも不明だし…所で西堀栄一がどうしてるか知りたいが。」

「さぁ。ゲーム内に存在を確認できていません。」

プレイヤー能登島はチラッと西堀を見たような感じがした。ナッシングキャラクターの西堀はバーチャル日本政府関係者以外にはモニターに映らないし認識できない。能登島は関係者なのだ。おそらく能登島のモニターには西堀が何らかの形で映っていると思われた。プレイヤー能登島は明らかに西堀に向かって言った。

「そちらの方は?。」

首相はよどみなく答えた。

「私の補佐官です。富野由貴とみのよしき君です。黒の背広が良く似合っているでしょう?。」首相は、能登島のモニターに映っている西堀の姿を伝えようとしているようだった。

「そうですね。眼鏡もセンスがいい。…専門は?。」

「北米担当です。内閣のバーチャルアメリカ政府とのやり取りは彼の助言で行っています。」

「そうですか。以降は彼と交渉する訳ですか。」

「能登島管理者がそう希望されるならば。」

君武がタイミングよく入ってきた。

「では富野北米担当。北米局室に移って協議を続けましょう。」

これはアドリブの芝居であり西堀にも演技を暗に要求されていた。乗るしかない。プレイヤー能登島は立ち上がり、首相に一礼すると君武の後ろに続いた。西堀もそのあとを追った。長い廊下を歩きエレベーターに乗り、地下3階に降りた。

君武に続いて北米局室に3人は入った。

入るとプレイヤー能登島は急に仕草や表情を出し始めた。

「説明しましょう。」

君武が言った。

「…今現在、能登島管理者の音声入力ができない状態にしました。会話はキーボードを使って行われます。能登島管理者の画面上は、こちらが用意した物が流れています。能登島管理者の後ろで監視している人間には我々の会話を聞くことも見る事もできない状態です。こちらの会話や自分の文章は暗号読み取り機能の付いた眼鏡で能登島管理者は読み取っています。能登島管理者が文字キーを打つのに合わせて、別の文章が表示されるのを監視者は見ています。どうぞ自由に話していただいても安全です。」

ー…と言う事だ。すまんな西堀。実花は高宮先生の所に?ー

「あ〜。間違いなく送り届けた。」

ーあのマンションは実は防衛省の施設が地下にあって、アメリカ政府と言えども簡単には手がだせないんだ。ー

「実花さんをどう使ってレスキューするんだ?。」

ー正攻法さ。実花は世界最強のゲーマーだ。俺のゲームしかやらないから知られてないだけでね。実花に初登頂させて、それと引き換えに俺の身柄を自由にしてもらう。簡単だろ?。ー

「なんでアメリカ政府は遺産にこだわってるんだろう?。」

ーテッド マクシミリアンが大統領選の不正の証拠をどこかに持っていて、遺産相続の際に他のリストと同時にマスコミに出そうとしているってのが、俺の聞いた説明だ。ー

「冗談よせよ。他のオンラインゲームにしろよ。」

ー簡単にブレイクできないゲームじゃないとテッドの作戦は成功しないだろ?。ちなみにテッドは大邸宅のどこかにPCを隠していて、そこから自動でCPUがプレイヤーとして入り込んでる。アメリカ政府が初登頂しそうになったら、このCPUプレイヤーで阻止するつもりなんだろう。実花には北米担当のお前に付いてもらってサポートしてもらいたい。ただしプレイヤーが実花である事は偽装しなければならない。アメリカ政府が防衛省に圧力を加える事は可能だからな。ー

「それは伝えよう。でも、なんで選挙で不正を?。」

ーその説明はない。俺にも予想がつかない。ただ探れる人物と接触できそうだ。ー

「君武さんの方でも判らないんですか?。」

「不明です。そもそも現大統領が候補の時に行った事ですから政府に記録がありません。マクシミリアンエレクトロニクスもそうした記録を作らなかったと思います。単純なプログラムの変更だった可能性がありますから。記録を残したのはテッド マクシミリアンだけだったんでしょう。その記録にはゲームの初登頂者が確定しないと手の出しようがないですね。」

プレイヤー能登島は西堀に向いた。

ー西堀。ナッシングキャラクターでゲーム内のアメリカ側プレイヤーの情報を集めてくれ。それを使って実花をサポートしてやって欲しい。ー

「わかった。そろそろゲームを抜けなきゃいけない時間だ。」

「このまま抜けて下さい。北米担当はバーチャル日本政府側に移動させました。」

「じゃあ、能登島…死ぬなよ。」

ーお前もな。ー

西堀はゲームを抜けてネットカフェのPCを切った。

「店長。悪いが行くよ。」

「えぇ。ゲームの中から見守ってます。気をつけて。むかしF1のレーサーで中嶋っていたでしょ。ピットクルーがこう言って応援したんです。ケァフォー(気をつけて)ゴー、ゴー、ゴー。(行け、行け、行け)って。それが店の名前の由来なんです。いい名前でしょ。センスは最悪だけど。」

「…店の名前は由来が全てさ。センスなんてクソっくらえさ。」

「ですよね。社長は最高です。」

西堀は店長にハイタッチして、階段に重い体を向けた。



ー第10面につづく


ー作者からお詫び


本作において単語の間違いがありました。前書きと第1面で、シミュレーションとしなければいけない所をシュミレーションとなっていました。導入部分の重要な場所で、がっかりされた読者の方も多かったと思います。さっそく訂正させて頂くと共に深くお詫びいたします。指摘をして頂いた読者さんには、ありがとうございますの一言です。こういう読者さんこそ作者にとって、かけがえのない宝だと思っています。作者としては無いように努力しますが、また有るようでしたらメッセージ欄が炎上しても構いませんので(ウメさんは困るかも?)指摘して頂けますようお願いします。この部分は一週間程度掲載させて頂き、いったん削除して連載終了後に後書きの後ろに再度掲載させて頂きます。

武上 渓





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