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書いてても意味わかんないから読者に理解してもらえるとも思えないんですが……

鶏肉の小説です。日本っぽい形の大陸で鶏肉たちが戦争します。

 鶏肉歴19XX年――黄金大陸ジパングの南西部に突如として起こったブロイラー族は新素材PU-LAを用いた飛空容器を囲い込むことで瞬く間に勢力を拡大。其の異常なまでの人材育成速度と相まってわずか三か月の間に西ジパングを制圧、西ジパング最大の都市であるオーサカを制圧すると同時にその名をブロイラー公国と改め、ジパング全土の支配を宣言した。

 一方東ジパングを中心とした多くの氏族から構成されるジドリ連邦は当初は遠い地のことと傍観を決め込んでいたが、オーサカを占拠されたことでブロイラー族との戦争を意識し、彼らをジパング内から駆逐することを表明した。


 しかし、統率のとれた動きに加えて練度の高い兵士たちと最新鋭の飛空容器を持つブロイラー公国軍に対して、装備で劣るジドリ連邦は連邦内部での派閥争いや補給の停滞などを原因に連戦連敗。ついには鶏肉たちの聖地であるトーキョー近郊であるシュトケンへの進軍を許してしまい、ついには聖地での決戦へともつれ込んでしまった。

 事ここに至ってようやくジドリ連邦の首脳部にも危機意識がわき、新素材を用いた飛空容器の開発に着手するなど、聖地を守りきるべく行動を始めたが、その行動は遅きに失した。到底量産は間に合わず、僅かに数枚の試作型トレーとその乗り手たちに連邦の戦線は託されることになってしまった。



 そんな中で、一人の若き鶏肉(チキン)が、それまでにも多くのエリートを輩出してきたイバラギの辺境に降り立った。齢僅か二十分にしてすでに笹包みを自在に乗りこなす神童――名を、カシワ=レイといった。




   ‡      ‡     ‡      ‡




「ひゃっほおーーぅ!!」


 大空をアクロバティックな動きを取り入れながら華麗に舞う一枚の笹包み。十字に結ばれた紐の交差する位置からぷらりと輪っかの垂れた、俗に【ヨッパライノミヤゲ】型と呼ばれる非常に旧式な飛空容器にもかかわらず、最新のPU-LA素材の容器に乗ったブロイラー公国の兵士の動きと比べても遜色ないどころか、飛行自体の腕前では大きく勝ると断言できるものであった。

 もっとも戦闘になれば容器の強度の違いから有利な体勢で激突したとしてもよくて相打ちにしかならないのだろうが……


 しばらくの間気ままに空を舞っていた笹包みに向かって声を掛ける鶏肉が一人。


「おう、カシワの! 朝から精が出るなあ!」


 ずんぐりと厚切りの胸肉で、若干鮮やかさの欠けるその色からそれなりに消費期限が近い年であるように見えるが、その引き締まった肉質は彼がまだまだ食用に耐えることを毅然と示していた。


「あ、コンボさん。おはようございます。今降りるんでちょっと待っていてください」


 笹包みの中から新鮮な鶏肉特有のよく通る声で返事がされた。笹包みは最後に宙返りを披露した後徐々に高度を落とし危なげなく着陸した。

 続いて包みの紐が解かれると中から現れたのは透き通った綺麗な肉質と整ったタンパク質繊維を持った年若いササミであった。年のころは三、四十分ほどであろうかまだまだ熟成の余地があることをうかがわせる肉体は脂身の少なさを補って余りある魅力にあふれていた。


「ほれぼれするような腕前だなあ。ほんの十分前に初めて飛空容器に乗ったとは思えねえな」

「まだまだコンボさんの足元にも及びませんよ。それよりどうしたんですか? 公国の兵士がこっち側を経由する可能性を考慮して連邦の方たちと周辺の警戒に当たるという話でしたが」

「ああ、その話なんだがな……」


 緊張か恐怖か、コンボの側面を一筋の肉汁が伝い落ちた。普段に比べて肉色も若干悪い。


「トーキョー西側への兵士輸送ラインが奴らに奪われた。あと六時間もしないうちにシュトでの決戦になるらしい」

「なっ!? ではコンボさんも戦列に加わるのですか?」

「ああ、俺も老いたと言えどまだ飛べる。数と容器のスペックに頼り切った公国軍程度十把一唐揚げにして地面に叩きつけてやるさ。だがな、要件はそっちじゃねえんだ」


 本心ではまだ年若いカシワに伝えたくないのだろう、コンボは一呼吸したのちに重々しく言葉を紡いだ。


「連邦の新型容器研究所からお前に最新型の容器に乗って戦線に参加するよう要請が来ている」

「!? どういうことですか!?」

「…………」

「それについては儂が説明しましょう」


 言いづらそうにするコンボの横から風変わりなタレの匂いをまとったハツが現れた。かなり熟成が進んでしまっているように見えるが、タレの効能か腐敗の気配はない。しかしその身にまとう異様な空気は、彼がそこらの鶏肉や飛空容器乗りたちとは別種の存在であることを如実に表していた。


「なぜ俺なのですか? 俺はまだまだ空を飛ぶ腕も未熟ですし、コンボさんを始めとして俺より腕のいい人なんていくらでもいるでしょう?」

「一つには戦線への一般兵士の投入は急を要すからじゃな。いくら熟練の飛空容器乗りと言えどまったく勝手の違う新型を乗りこなすにはそれなりの訓練の時間が必要になるじゃろう。今の時点で十分戦力になる歴戦の鶏肉たちに訓練の時間を割かせるよりは伸びしろのある若い鶏肉に任せてみたほうが良い。未熟さが新たな技術への適応力につながることもあるじゃろう」


 それに、とハツはその肉をおもしろげにゆがめた。


「コンボと一緒にアンタが飛ぶところを見ておったがな、なかなか素晴らしかったぞ?」

「しかし、おれなんかが……!」

「まあまあ、その態度もこいつを見れば変わるじゃろう。これこそがこの儂テンノスケ=トーリが全力を掛けた飛空容器【闘鶏の魂(チキンハート)試作型】じゃ。まあもうすでに量産は間に合いそうにないがのう……」


 そういっていつの間にか横に置いていた物体を覆っていた布を勢いよくはがすテンノスケに断ろうとしていたカシワもつられてそちらを見てしまう。

 そこから現れたのは、ブロイラー公国が独占しているはずのPU-LA素材を大量に使って作られたことが明らかな角の丸い長方形のトレーだった。

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