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二話 転校生

前半は短いです。スペルミスがないかとっても心配。

お気に入り登録してくれたみんなありがとう。ランキングに乗ったよ。

「おはよう!・・・といっても、誰もいないんだけどな」


 誰もいないリビングに、俺の声が響く。

 俺の名前は、朝葉(あさば)竜地(りゅうじ)。十七歳の、白鷺高校二年生だ。

 家族構成は、父母妹俺の四人家族で、父親と母親は現在海外旅行と仕事という行方不明中だ。

 いつものことなので、誰も気にしない。毎回毎回、どこかに行っては行方不明になって、いつの間にかひょっこり帰ってくるからな。職業も、冒険家だぜ?現代ではありえない職業だ。

 いや、帰ってくるときに持ってくる現地では普通だけど他では貴重な物品とかを売ったりして生計立ててるから、正しくは貿易家なのか?もしくは骨董屋?違いがわからん。

 妹は、海外に留学中。一年ぐらい行って来るって言ってたな。

 そんなわけで、今現在朝葉家にいるのは俺一人。・・・寂しくなんてないんだからね!

 買い置きの食パンをトースターで焼いている時間暇だったので、なんとなくテレビを付ける。

 

「ふむ・・・今日も晴天か・・・げえ、明後日雨かよ・・・」


 もちろん、見るのは天気予報。天気予報が終わったあと、ちょうどチンッ、と食パンが焼けた。

 俺のおすすめはマヨネーズと卵を合わせたタルタルソースだな。同じ卵製品なだけあって、よく合う。

 ぼそぼそと食べながらチャンネルリレーをしていると、あるニュースが目に入った。


『謎の怪奇事件!?連続昼寝事件!?』


「いや、平和すぎるだろう」


 思わず突っ込んでしまうタイトルだが、人々の興味を引くのは成功みたいだ。俺も思わず見たくなってしまった。

 内容は、最近起きているおかしな事件のこと。

 被害者は、中学生から高校生の男女区別なく三十人で、部活帰りの暗い夜道で突如現れた黒いダッフルコートに眠らされるといったものであった。夜道なら昼寝じゃねええだろ、と思ったのは俺だけじゃないはずだ。

 ダッフルコートは、この少し暑くなった六月でもしっかり着られていて、フードも下ろされていたようで、顔も体格もわからないそうだ。犯行の手口は、手を向けられた瞬間に気を失ってしまうとのこと。

 ・・・えっ、超能力ですか?規格外は、あの仮面男だけでいいよ。

 眠らされた生徒も、特に乱暴をされたとか何かを盗まれたということもなく、被害は特にないらしい。

 捜査も、意味不明なことが多いのため、難航中、というか座礁中。

 何が目的なんだろうな・・・もしかして、生気とかだったりして。

 それなら犯人は、幽霊かそのへんか?・・・ブルッ、あんまり推測するのはやめておこう。そういうのって、考えている人に寄ってくるって言うし。

 そんなことを考えていると、もう家を出発しなくてはいけない時間になっていた。

 急いでパンを口に詰め込み、制服に着替え、家を出発した。

 

 

 

 

 

 

 




「遅刻遅刻~・・・て時間でもないんだけどな」


 道路を、少し走りながら山を目指し駆ける。

 俺の行く高校―――白鷺高校は、まとまった土地がなかったのか、山の上に建てられている。

 山といってもそんなに高くなく、せいぜい坂が少しきついくらいだ。

 体力のない生徒にとっては、不満しかない坂だが、運動部には絶好の練習場となっている。

 夕方に来ると、太陽に向かって走る熱い青春が見える。そのさきは、崖だけどな。

 ちなみに、坂は傾斜が低い分長いので、ショートカットしたい生徒や時間がない生徒は、たまにロープを使って登っていく。学校は、危険なのでもちろん認めていないが、意外とやる生徒は多い。

 てか、学校が言っても説得力が微塵もないんだがな。

 通学路を、ロープで登っていく生徒たち・・・想像以上に奇妙な光景だろうな。

 あ、後、ロープを使って登っちゃダメなら使わなければいいじゃない、とどこかの王妃のようなことを言って、ロープなしで手も使わず垂直に崖を走る奴がいたな。あれは凄かった。後で教師に捕まってたけど。

 やっと坂が見えてきた交差点で、隣から何かが飛び込んできた。


「・・・ッ!」


 ぶつかる、そう思ったときには、俺は道路を蹴っていた。

 道路を蹴り上げて、壁を蹴り、空中三回転を華麗に極め、交差点ごと飛び越えて走る。

 後ろから、なにか騒ぐような声と拍手が聞こえるが、気のせいだろうな。

 

 

 

 





 

 

 やっとのこと、校門にたどり着くと、何人かの生徒が真ん中で仁王立ちしていた。

 それぞれ服装が違い、柔道着、ユニフォーム、ジャージ、制服と個性豊かな面々だ。


「やっと来たな!”遊戯帝”!さあ、早速《挑戦》を受けてもらうぞ!」


 そう、真ん中の大柄な男が叫ぶと、全員が一斉に構える。

 《挑戦》・・・それは、この学校―――白鷺高校のおかしさを際立たせる特徴の一つだ。

 この学校では、《三王制》というものがあり、それぞれ全生徒から三人優秀な生徒に二つ名を与え、頂点に構える制度だ。(二つ名は、全生徒からの応募)

 別に頂点といっても、特に学校の行事に介入できる訳もなく、ただの名誉称号となっている。

 ただ、栄えある三王に選ばれた生徒の部活は、学校側からいろいろと援助が増えると噂になっているみたいだ。

 もちろんそんなことはないと思うし、この学校で援助を貰うにはそれ相応の実績を残さなければいけないはずだ。

 多分、学校側が流したデマで、三王に選ばれるための向上心を育てるのが目的なんだろう。

 まあ、三王に選ばれるだけ実績を立てたならば、それに応じて援助は増えるかもしれないが。

 三王は、年に一回年末に選ばれるが、それ以外にも三王になるための方法は一応ある。

 それが《挑戦》だ。

 これを受けた三王はそれを断ってはならず、またその勝負で負けた場合勝者にその座を譲らなくてはならないといったものだ。

 えっ、俺はどんな実績を立てて三王に選ばれたか?

 確か、もうひとりの三王と、『どっちが先に全部活を制覇できるか勝負しようぜ!』的なことがあって、それを勝利した結果選ばれてしまった。そして付けられてしまったのは、”遊戯帝”。

 俺には何故選ばれたのかがさっぱりわからない。ただ、全部活の道場破りみたいなことをやっただけだろうに。

 そんなわけで、俺は毎回その座を狙う者から《挑戦》を受けている。

 他にも二人王はいるがそちらは難易度が桁違いなので、俺は登龍門みたいな扱いだ。是非やめてほしい。お前らのせいで、時間がもったいないんだよ。


「さあ、まずは俺からだ!柔道部副将、小野(おの)昌也(まさや)!いざ、参る!」


 先頭にいた柔道着の大男が、雄叫びをあげながら突っ込んでくる。

 構えすらしてない俺は、あっという間に袖を捕まれ一本背負い。

 叩きつけられる瞬間、脚を地面に先につけて、一本背負いの威力を利用し、逆に相手を投げ飛ばす。

 柔道部主将とやらは、そのまま木につっこみ気絶。・・・五秒で瞬殺って。


「次は俺だ!チェス部キング、(はやし)新平(しんぺい)!勝負だ!」


 次は、声はでかいが体は小さい男子。メガネをかけていて一見暗い感じがするが、声を聞けば直ぐにその印象は覆るだろう。

  

     ~勝負中~ 


 結果・・・林くんとやらはキング一つを残して終了。周りは、ポーンクイーンが囲んでいる。

 口から魂みたいなものが出ている林くんはクラスメイトに連れて行かれ、次の挑戦者が出てくる。


「次は、陸上部―――」











 今日の挑戦者の成績も、全戦全敗、少しは成長してくれよ・・・。

 こんなことを一月から続けているが、いまだいい線まで行った奴はいない。

 死屍累々な校門をくぐり抜け、教室に急ぐ。

 俺の教室は三階で、一年が四階三年が二階特別教室や職員室が一階となっている。

 教室に入り、窓際の一番うしろの席につく。

 

「オッス”遊戯帝”。今日も《挑戦》か?」


「その名で呼ぶな。毎回毎回、なんで俺のところばかり来るんだろうな・・・」


 俺の隣の茶髪ツンツン頭が話しかけてくる。

 コイツの名前は、森沢(もりさわ)(しのぶ)

 茶髪に、ワックス、ピアスと、どこからどう見ても完璧なチャラ男だが、意外にも頼りになる男だ。

 まさに、見た目で侮ると痛い目を見る奴だ。


「そりゃ、お前が他の王に比べて一番やりやすいからだよ。ほかの王は、一癖どころか五癖六癖ある奴だからな。そもそも、見つからないし」


「あいつらも、俺の苦労を知るべきだ」


「それは無理な話だ」


 突如後から響く声。

 半ば確信しながら後ろを向くと、予想通りの奴がいた。


「いきなり後ろに現れるのはやめてくれ、”仮面王(ペルソナ)・・・」


 燕尾服に山高帽、白い髪に白い仮面を身につけた男。三王のひとり―――”仮面王(ペルソナ)”。

 白鷺高校では、確かに私服はOKだが、たいていの生徒は制服で来る。

 毎日服を選ぶのが面倒なのもあるが、そんな中、毎日私服で来る強者の中でも一番の際物、それが”仮面王(ペルソナ)”だ。

 なんて言ったて燕尾服だぜ?どこで手に入れたんだよ、と言いたくなるような最高品質のやつだ。

 買おうと思ったら、数十万はくだらんだろうな。


「普通に後ろのドアから入ってきたんだがな。とにかく、俺のところに挑戦者がこない限り、その話は無理だな。どうしてもと言うなら、俺のところに連れて来い」


 それだけ言って、”仮面王(ペルソナ)”は、廊下側一番前の自分の席に行ってしまった。


「それができないから、苦労してんじゃねえか・・・」


「まあ諦めろ。そういや、今日のやつ知ってるか?」


「今日のやつ?なんのことだ?」


「あれだよ、青春イベントその一、”転校生”だよ!先に見た奴によると、中々の美少女らしいぜ」


「一応期待は出来そうか?」


「この学校は、意外にレベル高いからな~・・・中身は絶望レベルだけど」


「転校生なら、その心配もないだろう。何日で染まるかが心配だが・・・」


「・・・・・・だな」


 そんなことを話して、最新のゲームのことを語っていると、担任の尾澤(三十歳将棋部顧問男)が入ってきた。


「出席確認は・・・全員いるからいいだろう。後今日はみんなにスペシャルなお知らせだ。転校生な」


「おおっ!女ですか?男ですか?美少女ですか?」


 興奮した様子で、一番前の席の鈴木(アイドルヲタクで、常にジーパンバンダナに丸メガネとフル装備)が尾澤に聞く。お前の中では、美少女は別物なのか。


「聞いて驚け・・・美少女だ!」


「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」」」」」」」」」」


 野郎どもが鼻息荒く、雄叫びを上げる。はっきり言ってキモい。


「それじゃ、入ってこい」


 そう言って、尾澤が廊下に向かって言うと、ひとりの女子生徒が入ってきた。

 紅色のツインテールに気の強そうな目、胸は・・・気にしないで、身長もそんなに高くない。

 THE、ツンデレみたいな奴だな。

 ツンデレは、黒板に自分の名前を書いていく。


篠原(しのはら) 紅美(くみ)


 ふ~ん、篠原か、まあ覚えておくか。

 黒板の字を書き終わった篠原は、クルッとこちらに回転し、頭を下げる。


「し、篠原紅美です、よ、よろしくお願いします!」


「「「「「「「ヒャッホーーーーーーーーー!!!!」」」」」」」


「ヒィッ・・・・・・」


 男子の興奮に、思わず怯える篠原。そりゃ怖いわな。大柄な男が、全力で叫んでたら。


「お前ら落ち着け~篠原の席は・・・蓮華の横だな」


「ヨッ、シャァアアァアアーーーーーー!!!」


「「「「「「「・・・・・・ちっ!」」」」」」」


 美少女の隣になった俺の前の蓮華は喜びのシャウトをあげ、なれなかった奴は舌打ちをする。

 さっきから息ぴったりだな、お前ら。

 篠原は、若干怯えながらこちらに向かって歩き、俺を見て指をさして・・・あれ?


「あ、あんたは、今日の交差点であった―――」


 ガンッ!ダンッ!


 俺は窓からためらいなく飛び降りる。

 ここは三階、落ちても死ぬ高さじゃない。

 一瞬みえた俺の椅子は、コンパスで串刺しになっていた。


『ボス、残念ながら逃しました』


『失敗は誰でもある。それより全部隊に通達。”遊戯帝”が裏切った』


『武装はどうしましょうか?』


『被服室から、ナマクラ(鉄定規)片手用短剣(タチバサミ)を用意。B部隊からD部隊は、主要箇所を占拠しろ。絶対に逃がすな。A部隊は、追撃。F部隊からE部隊は武装の確保を』


『『『『『『『YES,BOS』』』』』』』


『きゃあああああああ!!窓から落ちて・・・大丈夫なの!?』


『気にしなくていいよ紅美ちゃん。いつものことだから』


『いつも窓から飛び降りてるの!?』


 そんな声が、教室から聞こえてくる。

 俺・・・生き残れるかな?

重なる勘違いと、積み重なる憎悪!

襲いかかる、嫉妬に狂った男子!

そして、転校生は本当にツンデレなのか!?

さて、竜地の運命はいかに!?

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