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【書籍化】元貧乏エルフの錬金術調薬店(web版)  作者: 滝川 海老郎
元貧乏エルフの錬金術調薬店

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55/62

55 赤紋病が流行中だよ

 特級ポーションが効くことは証明された。

 しかしユグドラシルの葉っぱはもう手元から出すわけにはいかない。


「ボロランさん、葉っぱを」

「ああ、いいぞ」


 もちろん、メホリックのボロランさんにお願いする。

 要望はすんなり受け入れられた。

 以前、話した通りだ。


 メホリック商業ギルドの裏庭に移動した。

 そこにはメホリックのユグドラシルの木が生えている。


 黙礼し、木に祈りを(ささ)げる。


「ユグドラシルの木。伝染病対策のポーション作成のため、葉っぱをいただきます」


 葉っぱを今必要な分だけ採る。

 ポーション四十本分くらいだろうか。


「よし、さっそく作りに帰ります」

「ここで作ってもいいぞ?」

「いえ、使い慣れた道具と場所のほうが、やりやすいので」

「そうか、では護衛を付ける」

「護衛ですか?」

「そうだ」

「分かりました。よろしくお願いします」


 メホリックの護衛の人が何人か私についてくる。

 確かに今、この都市で一番重要なものを輸送している。


 私は無事に戻ってきて、ポーションの量産を急いだ。

 その任務も完了して、今いる患者さんたちにもポーションが届いたはずだ。


 そして翌日。

 今日の分の伺いを立てに、メホリックに行った。


 しかしボロランさんの発言は意外だった。


「すまない。ミレーユ嬢。これ以上、メホリックのユグドラシルの葉っぱは採取できなくなった。本当にすまない」


 あのボロランさんが、私に深く頭を下げる。

 目には涙が出そうなほど、悲しみが見える。

 彼の本意ではない、と目は訴えている。


「ワシはね。メホリックのナンバースリーなんだ」

「あぁつまり、ワンとツーが」

「そういうことだ。上からの命令だ。それも最高ランクの命令だった。メホリックのユグドラシルをホーランドの錬金術師に使わせるわけにはいかない、そうだ」

「そんな、こと」


 そんなギルドの派閥がどうとか、言っている場合ではないはずなのに。

 まだ感染は爆発まで行っていない。

 しかし患者数は右肩上がりだった。

 このままでは『パンデミック』になってしまう。


 薬も大量にいるはずなのに、材料が葉っぱがなければ、錬金術師は無力だ。


「私が聖女様だったら、自分の魔力だけで、回復できたかもしれないのに」

「そんなことを言ってはいけません。あなたはすでに聖女のそれに匹敵する仕事をしています。錬金術師として」

「でも、このままでは」

「そうですね。さらに死人が出ます」


 私とボロランさんはホーランド商業ギルドに向かった。

 救援要請と相談だった。

 メホリックの上はもはや使い物にならない。


「メイラさん、メイラさん、メイラさん」


 私は急いでメイラさんを呼び出す。


「どうした? ってこの状況では仕方ないか」

「はい」


 メイラさんは真剣な顔で、状況を聞いてくる。


「――つまり、伝染病の治療のためユグドラシルの葉っぱが今すぐ大量に必要だと」

「そうです、そういうことです。理解が早くて助かります」

「しかしユグドラシルの木自体が、その辺に生えていない」

「そうなんです」

「あとは、王宮の世界樹くらいかって、そうか『世界樹』か」

「あっ、そうですね。そうですよ、王宮の世界樹!」


 忘れていた。

 王宮の世界樹の木は、うちとメホリックの親の木で、ユグドラシルの木のご先祖様だった。

 あの木なら、ものすごく大きいから、取り放題とは言わなくても、必要な枚数は確保できるはず。


「では、王様と直談判というやつですね」

「えっ、あ、はい」

「馬車、用意しますよ」


 メイラさんボロランさん私で、王宮に馬車を飛ばす。

 普通は手紙などを先に出して日にちを調整して、予約が必要だけど、一刻を争う。

 今この瞬間にも、ポーションが必要なのだ。


 馬車は王都内を飛ばし、王宮の門前に到着した。

 王宮の門番に話をする。


「――ということでして」

「分かりました。すぐ連絡します」


 私たちは、王様と会うことができそうだった。

 さて王様はどんな人なのか。

 頑固じじいで「許さん、ユグドラシルの葉っぱを採ることはできん」と突っぱねられたらどうしよう。


 中に入れてもらい、待合室に通された。


 お茶が出てくるけど、そんなものをのんびり飲んでいる雰囲気ではない。

 ずずずっ。


「あっ、このお茶、おいしい」

「ふむ。これは?」

「これは私たちホーランドの新しく仕入れた東方の最高級紅茶ですね」


 なるほど。

 ちょっとボロランさんが渋い顔をする。ライバル意識か。

 王宮での接待用のお茶、ホーランドの勝ち。

 って今、勝ち負けを競っている場合じゃないのに。


「今は、そういうのなしでお願いします」

「ああ」

「すまん」


 ふたりとも理解はしてくれた。


 待合室に執事が入ってくる。


「お客さま。王様がお会いになるそうです」


 やった、希望は(つな)がった。

 さて、最後は頑固じじいでないことに掛かっている。


 祈るように謁見の間に移動した。



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