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氷屋の〝製氷〟生活(ショートショート)

作者: 雪玉 円記

毎日暑すぎて妄想したものです。

北海道でも暑いところは暑いのです……(溶)

2XXX年。21世紀初頭から続いた地球の温暖化は止まらず、各国の平均気温は上がり続けた。

北極の氷は溶け、南極の地面は露出し、干ばつ、作物被害、水不足、山火事などの苦しみは続いていた。

そんな中、北欧、ロシア、アラスカといった、主に北半球で雪国・北国と言われていた場所でとある超能力を持つ者たちが現れる。

それは対象の水分を操り氷結させることが出来る、クリオキネシス。

世界は彼らの出現に混乱した。ある者は歓迎し、ある者は排斥し、ある者は実験動物にするべく捕獲しようと試みる。

世界中でクリオキネシストを巡る混乱が起こる中、日本の混乱は穏やかなものであると言えた。

何故なら、日本政府はこの気候問題に対して、政府公認機関〝製氷〟を発足。日本国籍のクリオキネシストをメンバーにスカウトし、要請のあった自治体に派遣することを決定。

同時に、軍事利用させない・身柄安全の保証など、最低限の法律をすぐさま整えた。

そのおかげか、派遣された〝製氷〟メンバー――通称〝氷屋〟が各自治体で好意的に受け入れられたからか、すぐに日本でクリオキネシストは市民権を得ていった。

法制定から10年ほどたったある年、とある自治体に1人の〝氷屋〟が派遣されることになる。




***************




北海道、とある内陸の村。現在、夜の7時13分。

ガラガラ、とプールサイドの扉の開閉音がする。

黒髪の青年が顔を上げると同時に、受付に初老男性が戻ってきた。

「お客さん上がったぞー」

「……はい」

青年は返事をしながら立ち上がり、気温・室温・水温を記録している紙に目を落とす。

「7時時点で33℃……。今日はどれくらい〝出し〟ます?」

「おーん」

男性は一瞬考えるが、すぐに答えを返した。

「昨日と同じくらいでいいんじゃないか」

「分かりました」

青年は立ち上がり、男性が閉めてきたプールサイドの引き戸を開け、中に入る。

ここは前世紀に財団寄付により全国に作られた、元村営プールだ。

現在は管理指定業者が管理運営を担っている。

25メートル×6コースの一般プールと、浅い幼児用プールのみの、簡素なプールではあるが、夏の間の子供の遊び場の1つだ。

去年までは外気温が高くなりすぎて昼間は閉館を余儀なくされていた頃もあったが、今年からはそれもなくなった。

「……」

遊泳客が引き上げ、静寂のプールサイド。

こおぉ……と青年のサンダルの足下から凍気が漏れ出る。

彼は、す、と手を前に掲げた。

「……6000リットルのプール水を、1メートル四方の氷にする」

ぞばぁ、と一気に水が、プール缶から宙に持ち上がった。ビキビキと瞬間的に凍っていく。

ものの数十秒もかからずに、6トンという大量の水が1メートル立方体の氷になった。

青年は静かに腕を下げる。それに合わせて、氷もゆっくりとプールに着水していく。

全てをプールに納め終わって、青年は一息ついた。

「……次」

ペタペタと、幼児用プールの方に向かう。

こちらも同様に、約1割ほどのプール水を氷に変化させ沈めた。

受付に戻ると、男性がテレビを見て時間を潰している。最後の客はまだ出てきていないようだった。

「おう、お疲れ」

「はい」

青年は返答すると、自分が座っていたパイプ椅子に座る。

テレビの画面に目をやると、バラエティアイドルが冷製料理を紹介しているところだった。

「……パスタ、いいなァ」

ぐう、と青年の腹が鳴る。

このプールは夜7時半に閉館なので、青年は夕飯は帰宅後に食べていた。

「おう、パスタいいよなぁ」

青年の独り言に、ガッハッハと男性が追従する。

「冷製トマトツナパスタ……」

ぐう、とまた青年の腹が一鳴りした頃、更衣室から客が出てきた。

互いに会釈を返すと、青年と男性は締めの閉館作業に入る。

今日も、猛暑日の一日が終わった。

「面白い!」

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