第5話:情報をどう取捨選択するか?
今の時代、私たちは膨大な情報に囲まれて生きている。
ニュース、SNS、動画、まとめサイト、解説系チャンネル―― ありとあらゆる媒体が、さまざまな視点や意見を私たちに投げかけてくる。
「〇〇が炎上」「△△が正義」「この考え方こそが真理だ」
だが、そのすべてに納得し、すべてを信じ、すべてに感情を揺さぶられていたら、 心は疲れ果て、判断力も鈍ってしまう。
この情報の海をどう泳ぐか? それもメタ認知的な力のひとつだ。
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情報の“発信源”を疑う力
まず大切なのは、情報が「誰によって」「どの立場から」発信されているかを意識することだ。
たとえば、ある出来事をめぐって
政治的立場が違うメディア
経済的利益を絡めた評論家
単なるアクセス数稼ぎを狙う個人
が発信しているとすれば、その情報の“色”もそれぞれ違う。
情報そのものよりも、「その情報がなぜ発信されたのか?」を読み取る力が求められる。
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情報の“構造”を読む視点
次に必要なのは、情報の“構造”を読み解く視点だ。
構造とは、
どの情報が強調され、どの情報が省かれているか
何を前提として話が進んでいるか
対象とされている“敵”や“悪役”が明確にされているか
といった、文章の背後にある「意図」や「流れ」だ。
これは、物語を読むときとまったく同じ。
物語でも、善悪が単純に描かれすぎているときは疑問を抱くはずだ。 現実の情報も同じで、一方向に流れる情報は、どこかが切り取られている可能性が高い。
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自分の“受け取り方”を疑う
そして最後に重要なのが、 自分がその情報に対して「どう感じたか」「どう判断したか」を観察すること。
これは自分にとって心地いい情報だったか?
自分の意見に近かったか?
過剰に反応してしまっていないか?
ここにも、感情のバイアスや、既にある価値観の影響が色濃く表れる。
情報の取捨選択は、実は情報そのものだけでなく、 自分自身の「受け取るフィルター」の構造を知ることによって、精度が上がっていく。
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情報の“食べ方”を身につける
情報も「食事」と同じ。
栄養になる情報(考えを深める)
ジャンクな情報(刺激的だが後味が悪い)
毒になる情報(心を歪ませる)
こうした違いを意識し、「今、自分は何を口にしようとしているか?」を自覚するだけで、 日々の思考の質は大きく変わってくる。
情報を浴びるのではなく、“咀嚼して吸収する”姿勢が大切なのだ。
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まとめ:情報は「選び方」で意味が変わる
この世界には、正しい情報もあれば、誤った情報もある。 だが、それ以上に重要なのは、「どう受け取り、どう活用するか」という自分の側の態度だ。
物語で登場人物のセリフを鵜呑みにしないように、 現実世界でも、情報をそのまま信じるのではなく、 構造・発信意図・受け取り方を俯瞰する視点を持つ。
それが、情報の海を泳ぎきる“思考の羅針盤”となる。