第3話:自分の感情を観察してみる
物語を読んだり見たりしていると、自然と湧き上がってくる感情がある。 「このキャラ、好きだな」「なんかイラっとする」「この展開、泣ける」
読者として作品に感情を持つことは、ごく自然なことだ。 だが、この感情も、メタ認知の観点からは“観察対象”となる。
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感情は、思考の窓口である
感情は思考の邪魔になるものではない。 むしろ、自分の価値観や判断の傾向を知るヒントとして、とても重要な役割を持っている。
たとえば、「怒り」を感じたとき。 それは、何かが「自分の中のルール」を破ったときに起こる。 つまり、「自分はこうあってほしい」と願っているルールが、そこには隠れている。
主人公が仲間を裏切った → 怒りを覚える
あるキャラが恋人を一方的に振った → 不快感を覚える
このとき、「なんでこんなにムカつくんだろう?」と考えることで、 「自分は友情を裏切らないことを大切にしている」 「恋人関係には対話と尊重が必要だと思っている」 というように、自分の“価値の軸”が見えてくる。
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共感と拒絶の裏側を探る
物語の中で、特定のキャラに強く共感したり、逆に嫌悪感を持つことがある。 これも重要なサインだ。
共感したキャラの特徴は?
拒絶したキャラの言動や性格は?
これらを冷静に分析してみると、自分が好ましいと感じる人物像や、避けたいと思う関係性の傾向がわかる。
つまり、物語を通じて、“理想の他者像”や“地雷ポイント”が炙り出されるのだ。
これに気づけると、現実での人間関係でも、「なぜこの人に安心するのか」「なぜこの人にモヤモヤするのか」が少しずつ明確になってくる。
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「自分はなぜそう感じたのか?」を癖にする
メタ認知の中核は、自分の内側で起きた反応に疑問を持つことだ。
なぜ感動したのか?
なぜ共感できなかったのか?
なぜイライラしたのか?
この問いかけを癖づけると、感情をただ流すのではなく、 「自分の感じ方のクセ」を理解し、調整する力が養われる。
ときには、自分が感じた怒りが「自分の未熟さ」から来ていたことに気づくかもしれない。 あるいは、拒絶していたキャラの中に「似たものを持つ自分」を発見するかもしれない。
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感情を“敵”にしない
重要なのは、感情を「排除すべきもの」と考えないことだ。
感情は、大切な情報源であり、思考のスタート地点である。 感情を否定せず、「観察対象」として扱う。
感情に流されず、
感情を無視せず、
感情を読み解く
この姿勢が、メタ認知的な読み方の深みを生む。
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まとめ:自分の“心の反応”に名前をつける
第3話では、物語を通じて湧き上がる感情に注目し、それを「自分を知る手がかり」として活用する方法を紹介した。
読んでいて何かを感じたら、それに名前をつけてみること。 「これは怒り」「これは悲しみ」「これは安心」「これは拒絶感」
そして、「なぜそう感じたのか?」を少しだけ立ち止まって考えてみる。
この習慣が、「自分という存在」の姿を、よりクリアにしてくれるだろう。




