桜模様の便箋に反省文を
東京に出てすぐに書いた反省文、書いてから五年以上も経っているんですね、当時の自分の素直な気持ちであるなと思います。
これは僕による僕の為の反省文だ。
入籍しました。
24時間で消えるその一文を何度も見返した。
もう別れて何年も経っているのにそれでも心がざわつくなんて自分でも驚く
我ながら恥ずかしいばかりです
君の声が好きだった。
君のことを最初は好きじゃなかったなんて友達に言っていたけど
自己紹介で君の声を聴いた時、もう好きだったのかもしれない。
だから毎日話かけに行ったんだろうな、声が聴きたくて
そんな君から誕生日にケーキを貰った時は本当に嬉しかった。
覚えてくれていること、僕のことを考えてくれたことがこんなに嬉しいだなんて
知らなかった。
ここまで来ても好きじゃないなんて言って友達に怒られたな。
それでやっと自分の気持ちを自覚出来た駄目な僕は
駄目なりに勇気を振り絞って君を河川敷に呼び出して告白した。
今、思い返しても酷い告白だった。まともに喋れた言葉が一つも無い。
君が小さくはいと言ってから、僕は本当に幸せな日々だった。
色んな所に行った
特別なところじゃなくても君といると楽しかった
くだらないことで腹を抱えて笑った
君が僕の話を真剣に聞いてくれることも笑ってくれることも嬉しかった。
弱い僕を受け止めてくれることにどれ程、僕が助けられたか
それなのに僕という人間は本当に駄目で君を傷つけてばかり反省しかない。
別れたすぐ後は街に残る君との名残が多くて辛かったけど
もっともっと色んな所に行けば良かったなんて思う
ある時、僕は自分勝手に別れを切り出したことがあったね。
君は酷く泣いていた。
結局、忘れられなくて寂しくて復縁して欲しいと言った僕を君は受け入れてくれた。
別れる時、10年後大人になって再会しようなんて、稚拙な言葉は忘れていてて欲しい。
一年程、遠距離になったこともあった、その時
一度でいいから僕の方も来て欲しいと言っていたね、もっともだと思う。
僕が適応障害やら鬱病やらになってしまい、一日中家にいるようになった。
自分は自分が思っているよりも出来ないことを認めることが出来なくて
社会や人間関係から逃げていた。
逃避と言っていいのか、一日中ゲームをしていた僕。
洗い物も洗濯も掃除もしないで
君の部屋でゴロゴロと
仕事で疲れて帰ってきた君が、それでも頑張ってご飯を用意してくれた。
それを黙って食べる僕に君がせめていただきますは言って欲しいと言ったのを覚えている。
今でもそれを思い出して一人でもいただきますはしています。
僕と違って、戦い続けていた君は次第に疲弊していった。
僕に気を使って愚痴もこぼさないようにしていた君は本当にしんどかったと思う。
僕は次第に君の重みになった。
長く付き合って初めて軽く口論になった。今思えばあの時が最後のチャンスだったかもしれない。
あの時も、もし演劇を辞めろと言われた君と別れるなんて言って傷つけた。
君が大切にしていたラジオの活動も結局聞くことは無かった。
君が貴方は私に興味無いよねって言った時、君はもう別れることを考えていたと思う。
それなのに僕が不安定だから直ぐに別れを切り出せなかったよね。
何か月もかかってやっと君が切り出したのに僕は返事も碌に出来なかった。
最後まで迷惑をかけた。
振り返れば僕は酷い人間で別れて当然だと思う。
でもその瞬間まで振られるなんて思ってもいなかった、それ程に僕は自分のことしか見ていなかった。
プライドが高い故の卑屈だから、他人の肯定に依存する弱い人間。
君がくれる肯定に優しさに甘えて、依存していた。
そして勝手に堕落するだけでなく、君を巻き込んだ。
最後にお互いの為に別れようと言った君は正しい。
今になってやっと少しずつ分かってきた。
愚かだね。
ごめんね。
新しく彼氏が出来たと聞いた時は、本当に悔しかった。悲しかった。
だから、君が新しい彼女出来たかと聞いてきた時、出来たよなんて言ってしまった。
君が彼氏の事で悩んでいる時も大丈夫、心配ないなんて無いから自分の気持ちを
ちゃんと見てごらんなんて言った。
君は僕に聞くまでもなく問題を乗り越えたんだと思う
あっという間に君は結婚して子供を授かった
相談してくれたんだなんてことに喜んでるような
僕では出来なかったことをあなたのパートナーはちゃんと出来る人
きっと素晴らしい人
君が選んだ人なんだから
僕はここに至ってそれでも
嫉妬しているような人間
こうしてつらつらと反省を書いて良かった。
これで良かったと本当に思えたから、
勝手だけど、幸せになって欲しいと素直に思えるから。
こうして文を書ける程に僕は沢山のものを貰ってる
君の香りが好きだった
君の空気が好きだった
君の心根が好きだった
君の声が本当に好きだった
君の言葉には声には力がある
だから大丈夫
間違いなく僕は君に幸せにして貰ったから。
僕は少しずつ自分を肯定出来るようになってきた
ちゃんと働いているし
東京なんて所でも
少しずつだけど自分なりには歩いて行けるようになった
他人ともなるべく会話する。
本当に人を本当に思いやることも、もう少ししたら出来るようになるかもしれない。
自分を守る為の嘘の優しさでは無くて。
桜散り、若葉芽吹く
季節は美しくめぐっている。
葉桜の下、もう少しだけ君の思い出を抱えて生きて行きます。
謝る事ばかりだけど
最後の最後までどうしようもない身勝手極まりない僕だけど
最後の一文だけ送らせて下さい
ありがとう
只の反省文なので載せるのは迷いましたが
物語を書くなんて自分の心の臓腑を見せるみたいなもんですから
そもそも私の書くものなんて全部反省文ですから
今更、載せない事の方が恥ずかしいことのような気がして
有難い事に私は今幸せですし、素直に感謝の気持ちとして