幕間――あるノート
部屋に戻り、岡崎らの手荒い祝福をやり過ごしているうちに、あっという間に消灯の時間になった。
例によって僕は、タイミングを見計らってこっそりとベッドから抜け出した。
二日前、手紙の後に、あるノートを見つけていた。
中身は、恐らく織川が書いていたと思われる日記だ。日々の彼の思いや、自分を奮い立たせる名言のような記載が、恐らく思い浮かぶままに書かれている物だった。手紙ほどダイレクトに彼の思いを知れる訳ではなかったため、日々内容を少しずつ読んでいこうと計画していた。
――絶対に慢心するな。慢心した途端、その気の緩みから退化が始まっていく。ライバルに遅れをとるな。
新しいページには、まずはそう書いてあった。
確かにな。心の中で、和也の言葉に頷く。そして、その次が最後のページとなっている。僕は胸を躍らせながらページを捲った。
――●●と改めて話をした。●●がそうしたいからしているというのが答えだ。でも、僕にはやはりそうだとは思えない。改めて●●と話をしなくてはならない。
いきなり何の内容だ? 釈然としなかった。三か所、誰かの名前が書いてあろう記載が、黒く塗りつぶされている。しかもかなり強い筆圧だ。光に透かそうが、とてもその名前が読めるようには思えなかった。
これは一体……。
そしてその下には、いきなり大きな字で――。
――反射的にボールペンを握り、その文を塗りつぶしていく。ふう、まだややこしい奴が残っていたか。こんな事、されたらたまらないからな。
もう、これからこのノートを読む必要はなくなるだろう。僕が何度このノートを読み返したか。暗記できるくらい、十分頭には入っている。だからこれからは……。