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序章
ひょっとしたら、僕もそちら側だったかもしれないと、不意にそんな事を思った。
目の前の男と目が合った、その少し後に。
僕だって何かがほんの少し違っていたら、この男のようになっていたのかもしれない。でも、僕は彼のようにはならなかった。彼もきっと、僕のようにはならなかった。
どうして彼が向こう側で、僕がこちら側だったのか。
それが何のせいで、僕と彼を分かつ境界が何だったのか、僕にはわかりそうになかった。
どうしてそんな事を、今考えてしまったのだろう。
その答えも何もわからないまま、意識が遠のいていった――。