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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

友人たちが前世があるって言い始めたんだが、信じる訳ないだろ

作者: アルミ缶

 「俺さ、実は前世勇者だったんだ」

 「急にどうした」

 「勇者だったんだよ。本当だって、俺剣道得意じゃん?あれ、勇者のときの名残そのままで戦ってるからできんだよ」

 「嘘つけよお前。冗談はよせって」

 「信じてくれよ、頼むぜ」

 「信じるわけないだろ馬鹿が」

 友人が前世勇者だと言い出した。厨二病は中二のときに卒業してから高校入学しろ。

 確かに剣道は上手いし、剣道の推薦で大学も決まりそうだが、前世が理由で剣道上手くなってたまるか。お前に連敗してるの、俺の幼馴染だぞ。



 「今まで黙ってたんだけど、僕って前世は令嬢だったんだよね」

 「冗談は顔だけにしとけよ」

 「いくら僕の顔が良いとしても、そこまで言わなくなたっていいじゃん」

 「令嬢なら性別も逆だろうが」

 「そう、驚き。前世よりも性別の方が驚きだよ。ちょっと前まで令嬢だったのに今や一般家庭の男子高校生。落差でどうにかなっちゃいそう」

 「冗談は顔だけにしろって言っただろ。いい加減にしろ」

 「そこまで言わなくてもいいじゃん。僕の顔を見て、信じてよ」

 「見飽きたわ」

 無駄に顔の良い友人が前世が令嬢だとかほざき出した。顔だけは女顔で綺麗なのが腹立つ。いや、顔が綺麗でも厨二病は勘弁してくれ。

 この前は前世勇者が居たが、今度は令嬢か。示し合わせてやっているのだろうか。

 そういえばこの友人は無駄に礼儀作法が洗礼されていて、食べ方も人一倍綺麗だが、流石に前世は関係ないだろう。



 「くそ!俺が前世魔物だからクソ勇者に勝てないのか!?」

 「負けすぎて狂ったか、今度奢るから元気出せ」

 「いや、前世魔物なのはマジ。てか、魔物だったから動体視力いいんだよな」

 「どうしたんだよ、急に。今までそんな兆候無かっただろ」

 「そろそろ話とこかなって」

 「お前らなんで、そんな、はぁ?」

 「混乱するのはわかる。俺もそうだった。前世四足歩行だぞこっちは。二足歩行、違和感しかない、早く走れない、クソ」

 「……昔、走るときに四足歩行だったのって」

 「そうそう、早かったっしょ?」

 「早すぎてトラウマだわ、ふざけんな」

 「すんません。にしても、やっぱり前世にクソ勇者に負けたのがダメだったのか?だから俺はアイツに剣道で勝てないのか?」

 「……練習、しようぜ」

 幼馴染が前世魔物だとか言ってきた。幼馴染だから言えるが、妙に信ぴょう性がある。

 幼少期、こいつは四足歩行だった。特に見本もなく見事な四足歩行をしてくれた。二足歩行の俺より四足歩行の幼馴染の方が歩くのが早かった。あと何故か動物の気持ちを代弁してたし、動体視力も良かった。

 幼稚園の運動会。四足歩行で爆走した幼馴染は未だに夢に見るし、会場に上がる悲鳴も忘れられない。

 だとしても、前世は言い過ぎでは。

 前世勇者に前世魔物が勝てないって、なんだか、それは悲しくないか。

 やめろ、前世を前提として考えるな。

 遅すぎた厨二病なんだ、しょうがないものなんだ。



 「前世結婚した令嬢が今世同性なのって気まずくないか?」

 「どうしたんだよ、お前ら、本当に……」

 「結婚相手が同性で、しかも同じ更衣室とか複雑すぎるだろ」

 「話聞いてる?」

 「相変わらず綺麗だし、でも男で平然と彼女が居るのをみると何とも言えない気持ちになる」

 「その話を聞いてる俺が一番気まずいとは思わないわけ?」

 「俺よりもなんだかかっこいいし、どうしたらいいんだ。俺はお前のことが忘れられなくて初恋すらまだなのに」

 「あー、気の毒に」

 「前世のことを重ねすぎるのもいけないのはわかっている、だがどうしても複雑なんだ。この先、人を愛せるのだろうか」

 「愛せる愛せる。男子高校生、すぐ好きな人見つかる」

 「ありがとう、助かった」

 「そうか。よかったな。今は俺の方が複雑な心境だろうな」

 友人が恋の悩みを前世と絡めて相談してきた。相談というよりも、一方的に思いの丈をぶちまけただけのようにも思えるが。

 誰なのか頭に浮かぶのが嫌なんだよ。お前らは前世の容姿を覚えてるかもしれないが、俺は今世のお前しか知らないんだから。想像させるなよ、複雑だろうが。ちゃんと祝福はするけどよ、おめでたいし。なんだかんだお似合いだろ。

 やけに前世令嬢の友人と、前世令嬢の結婚相手の友人は距離が近いと思った。女の子から何て言われてるのか知ってるのか?中世カップルだぞ。あまりにも仕草が令嬢と令息だから。

 女の子たちが毎日ざわついてるし、前世令嬢の友人は彼女と長続きしないし。前世令嬢の友人の元カノから聞いた話、同性の友達感が強くて彼氏という雰囲気では無いらしいし。良いんじゃないかな、今世でも結ばれて。

 いけない、俺には関係ないはずだ。

 だんだん、前世の話をする友人たちに驚かなくなってきた俺が嫌だな。



 「俺、前世魔法使い。マジックのあれ、種も仕掛けもないのは本当。ほぼ魔法使ってる」

 「流石に嘘」

 「本当だよ、ほら」

 「うわっ、何も無い所から花が。今日もマジックありがとうな」

 「マジックっちゃマジックなんだけど、どちらかといえば魔法」

 「へぇ」

 「手に種握って急成長させてるだけだからね」

 「ずいぶんな腕前で」

 「君もできると思うけど」

 「やったことないし魔法なんて使えないわ」

 「そう思ってるだけだよ。いい加減思い出しな」

 「は?」

 前世魔法使いとか言う友人が俺の目を手で塞ぐと、ぱたんと意識が落ちた。



 「俺さー」

 魔法使いめ、やりやがって。平穏な今世が全て台無しだ。

 あの魔法使いが前世から一番腹の立つやつだった。城、壊されたし。

 「前世、魔王だったっぽい」

 「やーっと、やっと思い出したんすね。魔法使いさんには感謝ですわ」

 「待たせてすまん」

 友人たち、前世とか本当の話だったんだな。すまない、今まで頭ごなしに否定して。今度からもっとちゃんと話を聞くよ。

 「とりあえず、コンビニとか行っときます?」

 前世魔物俺の従者、今世幼馴染はくいっとコンビニを指さした。

 コンビニ、最高。買い食い、最高。

 「行こうぜ。今世、楽しすぎ」

 「俺たちが前世とかほっぽりだして今世楽しむ理由わかったでしょ」

 「めちゃくちゃ理解した。約二名程忘れられて無さそうだが」

 「え、誰すか」

 「前世令嬢と前世令嬢の結婚相手」

 「あー、あのふたりっすね。あのふたりなら俺、もう結婚披露宴の余興のダンスの練習してますよ。前世勇者と一緒に」

 「俺も混ぜてくれ。前世魔法使いも連れて行く」

 「いいっすね!それ!」

 「あいつは確かインドア派。ダンスする体力を付けるためにランニングに連れ回してやる」

 余興のダンスの話をしながら入ったコンビニで、新作のアイスを買う。俺と幼馴染は新作アイスの微妙な味に顔を顰めた。


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